傭兵

  • 唯学書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902225907

作品紹介・あらすじ

地球の裏側、何の縁もゆかりもない半島における国連の《警察行動》。
世界をつくり直すためでも、祖国を手に入れるためでも、勝利への渇望のためでもない、その不吉な戦争で、数多くのフランス軍将兵が空しく死んでいった。
スペイン内乱、対独抵抗運動、祖国解放という「輝かしい冒険の夢」から、ペルシアでの秘密工作、インドシナ戦争、朝鮮戦争における権力の「傭兵」としての闘かいへ……。戦争と冒険の夢に全てを賭けたフランス人大尉ピエル・リルルーの生と死を軸に、戦後の状況に幻滅し朝鮮戦争で闘かうことを志願した青年たちの友情と挫折を描く。
国境・思想・時代を越えて読者を魅了する、戦争冒険小説の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「彼らはもう死ぬことは覚悟しているのだが、これ以上疲れるのはいやなのだった」

    朝鮮戦争に派兵されたフランス兵たちの物語。戦略上なにも価値のない山を奪い合いながら対峙するフランス軍と中国軍の間で、凄惨な戦闘が繰り広げられる。
    大義名分の失われた戦争に参加するとこになったフランス兵たちが、戦略上意味のない山に命をかけることになるまでの半生を語るのが、本書のメインストーリーになっている。

    戦争の時代。朝鮮半島の山に集まったフランス兵たちの経てきた戦争は、スペイン内戦、祖国開放戦争(対独戦)、ロシア戦線(独軍捕虜としての戦い)、ヴェトナム戦線。
    反戦文学とは趣を異にする。対独戦は戦わなければならなかった戦争として、本作中で輝かしく屹立している。本書は、戦わなければならなかった戦争を戦った兵士たちが、戦争の終わった世の中に順応できず切り詰めて暮らし、やむなく「生きるために死地に赴く」悲惨な姿を描いている。

    朝鮮半島のパート、兵士達が動かざる肉に化していく姿を即物的に淡々と語る、作者の目線が恐ろしい。戦後のフランスで無為に生きる兵士たちが、地球の反対の名もない山で命を削る先に、見えた地平は。最終章は、例えれば嫌な予感が的中したときのような気持ちと、いやな予感が運良く外れたときの気持ちが、ないまぜになったようなエンディング。

    読むべきか、迷ったのであれば、読むべき本。

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著者プロフィール

小説家、ジャーナリスト。
一九二〇年パリ郊外に生まれる。一九三九年に軍役志願。休戦期の一九四一年にはトゥールーズ大学で歴史学を専攻。
一九四二年に密出国を試みるも、スペインの治安警察に逮捕され九カ月の収容所生活を送る。釈放されると北アフリカの自由フランス軍に合流し、以降は将校として地中海、フランス、ドイツを転戦した。大戦後はジャーナリストを志し、フランス各紙に寄稿していたが、朝鮮戦争勃発でフランスが派兵を決定すると即時再役を志願。一九五一年、朝鮮戦争での負傷により退役。一九六〇年刊行の『名誉と栄光のためでなく』(原題:Les Centurions)は世界的ベストセラーとなり、六六年に映画化されている。『きけ わだつみのこえ』のフランス語抄訳版をガリマール社から刊行するなど、日本との関係も深い。
二〇一一年没。享年九十歳。

「2014年 『傭兵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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