生きるために人は夢を見る。

  • A-Works
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902256215

感想・レビュー・書評

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  • 『ボクサーはリングに上がる瞬間が美しい。まるで神様に近づいているように見える』

    『ラストチャンスという言葉はやめてください。チャンスにラストはない。チャンスはやり続ける限りずっとあるんだから』


    夢を失いかけた片腕のカメラマンが12年の歳月をかけて撮り続けた、当時殆ど無名だったボクサーたちの写真集です♪


    23歳でバイク事故により右腕を失い幾度の手術、激痛に耐えリハビリの日々。

    未来が見えない不安と絶望の3年を経て、どん底から這い上がるために林さんはもう一度カメラを手にします。

    恐怖や痛みと戦いながら夢を追い続けるボクサーに自分自身を重ね、
    自分が生きるためにボクサーの写真を撮り始めた林さん。

    左腕でカメラを持ちケーブルを口にくわえ、
    歯を使ってシャッターを切る独自のスタイルで
    激痛をこらえ林さんが撮り続けた莫大な数の写真。

    そこには夢を追い続ける姿、
    不安、恐怖、怯え、優しさ、家族への想い、団欒、
    夢を重ねボクサーたちを支え続ける人たち、
    そして恐怖を封じ込めリングへ歩き出す写真など
    ボクサーたちの中に人間が生きる姿を克明に描いています。


    実は僕も公務員を辞めた後、23歳の時に三度目の正直でプロテストに受かったポンコツボクサーです。
    プロになった後も何度となく辞めようと思ったし、
    怪我や減量で苦しむたびに
    「何やってんやろう」って逃げ出したくなったけど、
    リングは魔物で、
    何故か必ずあのスポットライトの下にまた帰りたくなるのです(笑)

    寺山修司の言葉
    「ボクシングが人生の比喩なのではない。人生がボクシングの比喩なのだ」
    には本当に共感同感です。

    愛する家族のため、自分が倒した対戦相手のため、己の夢を掴むため、鋼のように身体を鍛え、
    敗戦によってプライドはズタズタにされ、
    それでも愛する人たちに支えられて、
    ボクサーはみな、また絶望から歩き出します。

    「ボクシングなんてスポーツじゃない。だって野蛮じゃないか」っていまだに言われたりするけど、
    本当はどんなボクサーも
    相手を倒すためではなく、
    辛い練習を積んで
    過去の自分に打ち克つためにリングに上がるのです。


    『悩んだ時はやる時なんです。迷ったらやるしかないじゃないですか。答えが見つかるまで』

    ボクサーたち、そして林さんの言葉や生きざまが、
    あと一歩を踏み出せないでいる沢山の人たちの
    追い風になることを願ってやみません。

    • 佐藤史緒さん
      円軌道の外さん、こんにちは!

      >本当はどんなボクサーも
      >相手を倒すためではなく、
      >辛い練習を積んで
      >過去の自分に打ち克つた...
      円軌道の外さん、こんにちは!

      >本当はどんなボクサーも
      >相手を倒すためではなく、
      >辛い練習を積んで
      >過去の自分に打ち克つためにリングに上がるのです。

      これって凄く大事なことですね!
      ボクサーだけでなく多分どんな人にとっても。
      人生そのものがある意味ではリングなんだ。

      元気の出るレビューをありがとうございました!
      2015/06/13
    • 円軌道の外さん

      佐藤史緒さん、お久しぶりです!
      雨の季節になりましまがお変わりないですか?
      僕は子供のように元気です(笑)
      (雨は嫌いではないので...

      佐藤史緒さん、お久しぶりです!
      雨の季節になりましまがお変わりないですか?
      僕は子供のように元気です(笑)
      (雨は嫌いではないので)

      嬉しいコメントありがとうございます!
      人生そのものがリングって
      まさに言い得て妙ですね。

      いまだにボクシングをやっていると言うと
      いい顔されないし(笑)偏見持ってる人が多いので、
      自分に打ち克つためにリングに上がるって意味も
      感覚的に分かってくれる人ってすごく少ないんです。
      だから余計に嬉しかったです(笑)

      僕は自らも選手ですが、後楽園ホールへ
      新人の試合を見に行ったりもします。
      一度生で見れば分かりますが、
      どんな選手も2ヶ月も3ヶ月もかけてツラい練習に耐え、体と心を作ってくるので、
      リングに登る顔は真剣そのものだし、
      どんな無名選手もスポットライトを浴びたリングの上では
      本当に美しく、神々しく見えるんです。

      リングの上では誰もズルはできないし、
      生まれながらに持った二本の拳だけでお互いのプライドを奪い合います。
      そこには国も人種も地位も育った環境も容姿も出目も
      まったく関係なく、
      己の拳だけがすべてなんです。

      そこにロマンを感じるのです。

      またテレビでボクシング中継があるときは
      そういった視点で見てもらえたら、
      また印象が違ってくるかと思います(^^)










      2015/06/19
  • 【生きるために人は夢を見る。】ボクシングを介して、つながっている人たち

    「写真って、撮影した人の魂が入るよね」。

    友達が言ったのか、私自身が言ったことだったかは忘れてしまいましたが、写真を見ていて、本当にそう感じることがあります。

    「魂」というと少し大げさかもしれませんが、「いいな」と思う写真には、撮影した人の気持ちが写っていると思います。

    「生きるために人は夢を見る」(写真:林健次、文:林健次、伊藤史織、発行:A-Works)は、ボクサーとその周囲にいる家族、友人、関係者たちを捉えた写真と言葉の本です。

    ボクシングというと、男っぽい、熱い、激しいというイメージが沸きますが、この本を読んで感じたのは、人の温かさ。
    ボクシングを1つのスポーツを介して、つながっている人と人の姿が見えます。
    互いに寄せ合う思いが見えます。

    私が好きなのは、「ターニングポイント」として収められている話。
    同じ世界を見ていても、これまでと違った世界に見え始めるような、視界をぐぐっと開かれるような、人と人の素敵な出会い、ふれあいがあります。

    気持ちの「気」が入った写真と文章。
    対象に真剣に向き合い、感じたことを飾らずに表現すると、こういう作品になるのかもしれません。

  • 10月にサンラボ勉強会でご紹介した写真家 林建次さんの著作です。
    林さんは、23歳のときにバイク事故で片腕の機能を失いながらも、口にシャッターをくわえてプロボクサーを撮り続けてこられました☆

    林さんがどのような想いからボクサーを撮るようになったのか、
    本の中でボクシングに人生をかけた想いが生々しく書かれています。

    何か生きる目的を失いそうな時にもう一度読み返したい一冊です☆

  • 被写体の息遣いがそのまま聞こえてきそうな、林さんの「リアルな」写真に引き込まれた。

    写真を撮るために必要なことは「取材力」だと、写真と、ボクサーたちの言葉、それから林さんが見聞きしたエピソードにふれて痛感した。
    右腕が動かないのにスゴイ、なんて言いたくない。どんな現状であれ、立ち向かうカメラマンに、ボクサーに、その周りのすべての人たちの本気の強さに背筋が伸びる。

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