- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784902553871
作品紹介・あらすじ
世界で話題沸騰中!スマグリ徹底解説、未来の姿が見えてくる。
感想・レビュー・書評
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著者の横山さんは東京大学大学院教授で、2003年頃から次世代送電網・スマートグリッドの研究を重ねてきた人物です。
本書は題名からも分かるように、その横山さんが「スマートグリッド」を一般読者向けに解説している新書です。
スマートグリッドと聞いて、何となく身構えてしまう方も居られるかも知れませんが、本書には数式などは一切出てきませんし、また、所々に図が挟まれているので読みやすい本ではないでしょうか。
勿論、この分野における基本知識があれば理解が早いとは思いますが、基本的に
・電気は需要と供給を常に合わせないといけない。それに失敗すると、供給過剰、もしくは供給不足のどちらでも停電が起こる。
・発電量の予想が付きにくいソーラーパネルや風力発電など、再生エネルギーによる発電が大規模に取り入れられると、電力の需給の一致が難しくなる。この問題を解決するための切り札として「スマートグリッド」に期待が寄せられている。
の2点を抑えていると理解しやすいのではないかと思います。
さて、内容の方を簡単に紹介すると、
「スマートグリッド」と言う言葉一つとっても、世界共通のきちんとした定義が存在していない状態で、世界各国がそれぞれの事情に合わせた設備投資、開発に取り組んでいる状況や、
(上記しましたが)再生エネルギーによる発電を大規模に導入するのであれば、電力の需給を一致させ停電を防ぐために、スマートグリッドが必要となる事。
そして、開発が進んでいるスマートメーター、送電網の監視・制御技術、スマートストレージ、デマンドレスポンス、スマートアセットマネジメントなど、スマートグリッドの要素技術の紹介も載っていました。
紹介された技術の中で、特に、電力が過剰に供給された時に電気料金を安く、逆に不足している時には高くする、あるいは、例えば電力不足時には一般家庭の冷蔵庫のスイッチを30秒間だけ切るなどの電力需要を調整をしたりするデマンドレスポンスが、一般消費者には、スマートグリッドと従来送電網との違いが一番実感できる所ではないでしょうか。
他、欧米各国、中国、韓国、日本におけるスマートグリッド開発状況の解説が載っており、それぞれの国が自国の事情に合わせて開発を進めていっている事がよく理解できる内容となっていました。
スマートグリッドが導入された社会では、個々の世帯における(個々の家電の使用状況も含めた)電力の消費実態が詳細に把握出来ることになり、それによりグーグルが個人の生活スタイルに合わせた新たな広告業を展開するのではないかとの噂があるそうです。
本書にも書かれていましたが、スマートグリッドの普及には、技術開発とその導入だけでなく、電力使用状況と言う個人情報の取扱い方の社会的なコンセンサスが必要との事。
従来、電気使用において気をつけなければいけない点は、(現在、原発事故の影響で節電が呼びかけられていますが)大体の場合、電気料金が高くなることを防ぐと言う事だけでした。
しかし、個々の電気機器の使用状況までも含めた電気の使用状況。
将来、スマートグリッドの便利さと引き換えに、この様な個人情報が他人に知られると言う点についても考える必要性が出てくるのでしょうね・・・
一般人も色々と考えることが多くなりそうです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2011年2月
スマートグリッドの著名な研究者,横山先生の本.
・スマートグリッドの変遷,歴史を解説.
(スマートグリッドとは何か?目的は?なぜスタートした?どのように進化してきたか?など)
・地域毎に異なるスマートグリッドの特色を解説.
(欧州・米国・日本・中国・韓国のニーズとスマートグリッド.どのように異なるか?など)
・電力分野からの観点に加え,情報通信分野からの解説.
(IBMの池田氏との対談.ビジネスとしてのスマートグリッドとその持続性の議論.) -
スマートグリッドの技術とビジネスについてわかりやすくまとめられている。スマートグリッドへの注目度は格段と高まっているけれど、その実情を知る上で適切な解説書です。地に足についた取り組みを主張する電気事業サイドの視点だけでなく、情報通信サイドの視点にも触れられており、その点でも役に立つ。
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スマートグリッドを技術者視点で見てる。
部分的には事務系が知っておくべきところもあり。
もう2,3回読んでおきたい。 -
250ページの薄い新書本だが、中身は濃い。震災後、急に存在感が高まってきたスマートグリッドの全貌を掴むことができた。震災による津波の被害により、原子力発電所が何基も使えなくなり、さらに新たな建設にもブレーキがかかっている。これに対して、太陽光発電を大規模に増設すればエネルギー不足を補えるので問題ない、といった安易な意見が横行している(ように思う)。私自身、問題はエネルギーの不足にあり、コストはかかるにせよ太陽光発電を大量導入すれば問題解決可能だと思っていたのだが、この本を読んで認識を改めさせられた。電気の問題点は貯めることが難しい、ということだ。したがって、基本的にジャストインタイムで必要な時に必要な量を発電しなければならない。従来は一日の需要変動を考慮しつつ、20分程度先の必要電力量を予測ながら、火力発電、水力発電、原子力発電、揚水発電などの発電方式を組み合わせて、ジャストインタイムで電気を供給することができていたという。しかし、ここに太陽光発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」が加わると厄介なことになる。これらは、天気などによって電力がランダムに変化するため、これが十分に調整されずに、電力系統に流れ込んでくると、電源の周波数が変動して機器が故障したり火花により火事の原因になったりする。さらに、GW時の昼間など余剰電力が生じた場合、これをうまく消費することができないと、周波数が上昇するため、安全装置が作動して設備が切り離されるため大規模停電の原因になったりする。何年か前に、起こった欧州の大停電は風力発電の電力系統が絡んで、この設備の切り離しが原因で起こったということだ。以上のように、太陽光発電を導入する際の問題は、このような不安定な再生可能エネルギーを従来の電力系統に連係させていくことの困難性にあるということをこの本を読んで知った次第である。スマートグリッドは、このような「再生可能エネルギー」を本格的な電源として利用するために研究されている新たな電力系統である。この本では、日本だけではなく、米国、欧州の取り組みについても詳しく説明されている。この本により、大まかな全貌を掴むことができたので、今後はもう少し詳しい専門書にあたっていきたいと思う。
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かなり基本的なところから書いてあって、入門書としては最適。読み進めていくと、問題点・注意点をただ羅列している箇所などが出てきて悪い意味で学者っぽい印象もあるけれど、巻末の日本IBMの事業開発部長との対談が興味深くて、その印象も払拭されている。
残念なのは、本書の中で引用している図表が小さすぎること。せっかくいい図表が引用されているのに、見づらいことこの上ない。 -
他にスマートグリッドについて解説している本が意外に少なく、貴重な本だと思う。内容も文系素人にも理解できる内容だった。(新版が出版されているため、こちらは絶版のようだがKindle版で買える)
電気をためる(蓄電)は技術的に難しい。電気の消費量に発電量を一致させなければ周波数が変わってしまい、電化製品や機械が壊れやすくなる。そのため、周波数が大きく変動するとその発電所は系統から切り離される。すると停電が起きる…
グリーンエネルギーは発電量を調整できないため、大量に導入されると調整し切れない。(グリーンエネルギーが発電していても需要が少ない場合、火力発電を弱めるが、オフにしても足りないことがある)そのため、導入が進まない。
これを解決するのがスマートグリッド。 -
Fri, 10 Dec 2010
いいとおもいます.
最近の事情が,ホントよくまとまっているとおもいます.
2009年から2010年にかけて,
スマートグリッドの事情は大分変わった.
特に,各国におけるスマートグリッドの解釈はほぼ決まっただろう.
それが,日本にとっていいことかどうかは疑問だが・・・.
電力インフラ事情は,国によって大きく異なる.
その上で,各国の研究者に求められる研究も変わってくる.
インフラ分野ならではのことだが,その意味でも,
研究現場の人間でも,一冊持っておくと便利かも.
でも,一年たてば古びる情報かも知れないが -
国際標準化されていないと日本で使用されている製品が海外で使えない。
スマグリが注目されるようになった理由はオバマ大統領のエネルギー政策から