ひとつの町のかたち

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制作 : 永井 敦子 
  • 書肆心水 (2004年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902854015

ひとつの町のかたちの感想・レビュー・書評

  • ひとつの町のかたち
    グラックの「ひとつの町のかたち」を読み始め。
    グラックが中学・高校(だいたいその時期)時代、ナントの市街地にある学校の寮にいた時のことを記録したもの。この寮が厳格で日曜日に保護者と共にでなければ外出ができないというもの。そこでこの時期のグラックはその周りに広がるナントの町を想像していた…その記録。
    日に二回、通学生の波とともに、ときにはくぐもり、ときには賑やかなナントのざわめきが、上げ潮のように私たちのところまでやってきた。
    (p18)
    作者は成人してから後、もう一度ナントに住むことになるが、その時はこれほどまでに町の印象が頭の中にかたちつくられることはなかったという。またグラックはもう一作ひとつの町についての記録・スケッチを書いているのだけれど、それ(ローマ)は解説によると否定的な意見が目立つという。

    アンジェとナント
    なんだか地図帳や路線図を穴の開くほど見ていた人には懐かしい感じがする「ひとつの町のかたち」第2章。グラックの生家はナントとアンジェのちょうど中間、アンジェが県庁所在地の県側で家のつながりもアンジェの方が強かった…のに関わらず、子供の頃のグラックはアンジェは×で、ナントは○。理由の一つは人口規模がナントの方が大きい、もう一つは路面電車の規模で、フランスの都市で第一の理由で×になった都市も、第二の理由で○になることもあったけど、アンジェはその「敗者復活戦」にも残らなかったという。
    ということで、話題はナントに移る…
    生きたというよりも夢見ていた七年間のその過去は、片目でしか眠っていない。軟禁状態のような生活のなかでとげられずじまいだったことは、私の人生の舞台裏で、地下茎のように地下での歩みを続けている。地下茎は所々で腐植土を破って、不意に若い芽を突き出す。
    (p34)
    幼年期、青年期の反復がらみの行ったこと聞いたことが、何らかのきっかけで浮上してくる。
    (2016 07/20)

    都市の周縁
    「ひとつの町のかたち」は第4章の途中まで。ナントでの木曜日の運動としての外出の影響で、今でもグラックは都市が果てるところに興味があるという。それだけだと個人的好みですが、それが彼の文学に大きく関わっていると言っているから…どうかな。
    (2016 07/25)

    書物と植物の根
    「ひとつの町のかたち」第4章読み終え。19世紀のパリ、20世紀前半のナント始め地方都市では郊外出ずとも町中で草むらに横になってくつろぐことができたという。そう言われるとこの現代の街からの視点では町中ではかなり無理ありそう。
    書物には植物と同じように根がある。そして植物の根と同じように書物の根にも、優雅さや華やぎはないことが多い。
    (p86)
    現時点のナント、グラックが青年だった頃のナント。それからさまざまな書物。これらがそれぞれ想像力という引力で引き合ったり影響しあったりする。
    町を歩く、それぞれ町の外縁の目的地まで袋小路への往復となるが、それらの目的地同士が割りと近いこともあることは忘れ去られる。それらはちょうど「失われた時を求めて」の「…のほう」という表現が如実に示している。
    (2016 07/26)

    ナントのパサージュと美術館
    ナントの旧中心街案内の第5章。まずはこの文章から。
    今でも高級住宅街には含まれるが、やもめや隠居暮らしのための場所。施錠された小さな庭から壁ごしに落ちてくる枯葉を舞い散らす風も、トタン屋根を叩く雨も、ここではよそより大きな音をたてる。
    (p98)
    こんなふうなイメージ喚起の文。
    さてナントの名所、ポムレ・パサージュとドブレ美術館は個人の寄贈。後者のドブレは海運業者。ナントが主な旗降り役だった奴隷貿易も行っていた(少なくとも先祖が)かも。
    (2016 ... 続きを読む

  • 自分の育った町が好きで、歩くのが好きだ。本書はナントの町で寄宿舎生活を送ったグラックの回想記。懐古に耽った文章ではなく、とても瑞々しい。註釈が頁毎にあって 散歩の道草みたいで 楽しい。グラックは 本の形態で 町という時空空間を提供してくれている。ちょっと癖のある歩き方をする友達に案内されて ゆっくり歩きながら話を聞く、そして その日が一生忘れない記憶に、自分の核になっていく、そんな感じだった。1951年『シルトの岸辺』ゴンクール賞授与を 文壇の商業主義への反発から拒否したグラック。かっこいい。

    目次 : 1.十一歳 / ナントの高等学校での寄宿舎生活。奪われた自由が刺激した町への思い 2.「本当の町」へ / 「本当の町」の私の規準、人口十万と路面電車 3.日々の空間 / 行政と軍隊と教会が支配する高等学校の周辺。植物園と美術館 4.郊外の散策 / 寄宿生の集団散歩。町の中心から放射状に東西南北の郊外や緑地帯へ 5.繁華街 / 町の顔をなす十八世紀以降の街並。劇場とその周辺が発する磁力 6.名所ぎらい / 歴史的建築では町はわからない。周囲の土地に依存せず自律した町 7.川辺と港 / 町のロワール川ぞいの各地域と港の周辺。北側のエルドル川流域 8.社会と階級 / 高等学校にみた、中流階級が支配する保守的穏健社会のしるし 9.地理と歴史 / 地平線のような予兆に満ちた町、ナント 10.町と心 / 都市の遠心力と凝集力。感受性が選択する町の断片、暗号の鍵

  •  フランスの作家ジュリアン・グラックがクレマンソー高等学校時代の10代の思い出を振り返るとともに、回想とそれまでの知見から高等学校があった町ナントについて分析している。
     おそらくこの作家のだいご味はその文章にあり、そのエッセンスの全てを日本語で表わすのは難しい。だがそのエッセンスとなる著者の抑揚のある調子を素晴らしい表現力で表わしていると思う。
     文章を読むうちに、読者はまるで町を旅しているように、まるで著作の中の「私」と同様に記憶の探索をしているような感覚に襲われる。 

  • 飛ばし読み厳禁・・・わけわからなくなります

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