ハウジング・プア

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著者 : 稲葉剛
  • 山吹書店 (2009年10月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903295244

ハウジング・プアの感想・レビュー・書評

  • 本書(稲葉剛『ハウジング・プア―住まいの貧困と向きあう』人文社会科学書流通センター、2009年)は、住まいの貧困問題を説明し、解決策を提言する書籍である。格差社会化した日本ではホームレスやネットカフェ難民、ゼロゼロ物件詐欺、追い出し屋など住まいに関係する様々な問題が発生している。
    「昨今では、貧困にかかわる社会問題が数多く存在する。住宅分野に限っても、ハウジングプア(失業などで収入と共に住まいを失う人)やネットカフェ難民(定住地を失いネットカフェで寝泊まりする人)などの問題がメディアを賑わせている。」(「「追い出し屋」~数日の家賃滞納で住みかを失う恐怖」日経BPネット2009年5月22日)
    別々の問題として位置付けられがちな諸問題を住まいの貧困(ハウジング・プアHousing Poor)という統一的な視点で理解する点が本書の大きな特徴になっている。(林田力)

  • 「標準的ライフコースを歩む人たちを優遇する傾向」が戦後の住宅政策に一貫してあるという指摘を引用し、著者もこの標準コース前提の施策から多種多様なライフコースを歩む人に対する「安心して暮らせる住まい」の保障へと転換を著者は求めています。

    このように住宅セーフティネットを張ることを「わがまま」と捉える人も(某都知事のように)いますが、標準コースから外れる=セーフティネットを外されるというのは、そのライフコースを歩むよう強要し自由を奪っているともいえないかと考えさせられました。

  • 「ハウジングプア」初めて受けた言葉であった。
    自分がいかに報道による一部しか見ていなかったか、居住権という
    身近でありながら当たり前のように見過ごし、無意識で無関心で
    いたかということに、深く反省した。
    『貧困ゆえに居住権が侵害されやすい環境で起居せざるをえない状態』
    1屋根がない状態 2屋根はあるが家がない状態
    3家はあるが居住権が侵害されやすい状態
    不動産の実態、法律の隙間、生活保護を取り巻く行政や貧困ビジネスの現状

    守られているようで実は守られてない社会だと思い知らされる。
    『誰もが安心して暮らせる住まい』を考えていきたい

    私の今はどういう生活だろう。居住権は?
    路上生活になっていないのはなぜだろう?

  • この本が出た頃から、図書館に入るかなと様子を見ていたが、どうも入らないようなのでリクエストしたら、ヨソの図書館から相貸できた。買わんのか~

    稲葉さんは「住まいの貧困(ハウジングプア)」という概念をつくり、これまでバラバラに報道され、論じられ、行政でもバラバラに対策が考えられていた問題(ホームレス、ネットカフェ難民、派遣切り、個室ビデオ店放火、無届老人ホームの火災…)は、「貧困ゆえに居住権が侵害されやすい環境で起居せざるを得ない状態」(p.14)という点で同じ問題なのだと示そうとした。

    それまでにも「もやい」では「広い意味でのホームレス状態」という言葉は使ってきたそうだが、日本でいま使われている「ホームレス」は、屋根のない状態、野宿や路上生活を指す狭い意味で定着してしまっていて、なかなか「広い意味」は伝わらなかったという。

    この本では「ハウジングプア」はどういう状態か(屋根がない状態だけでなく、屋根があっても家がない状態、家があっても居住権が侵害されやすい状態を含む)、こうした「ハウジングプア」状態に陥る人が増えているのはなぜか、それに対して行政はどのよう施策をこれまでとってきたか、そして今後「ハウジングプア」をなくしていくために、どのようなことができるかを書いている

    稲葉さんは、もっと安く暮らせるようにならないと、と考えている。「暮らしを営む上での最低限必要なこと(ベーシック・ニーズ)」をなるべく低コストで手に入れられるようにしていくことが、もっとも現実的ではないかと書く。具体的には「月10万あれば安心して暮らせる社会にする」(p.210)こと。

    私自身、長々と学生だった頃に、家賃2万5千円のアパートを借りて、月10万ほどで暮らしていた(私は授業料免除をほぼすべて受けられたので、生活費を稼ぐ以上にアルバイトをせずにすんだおかげもある)。東京では、なかなかそういう物件はないらしいが、私は、家賃が2万台なら、よほどの大病でもしないかぎり、ぼちぼち稼いでなんとか暮らせるという実感はずっとある。私が借りていたのは、築何年か分からないくらい古い木造アパートだったが、震度4の阪神大震災にも耐えたし、トイレは部屋にあり、共同の風呂があった。大家さんはいい人で「学生さんなら」と保証金は3分の1にまけてくれて、家賃も2千円さげてくれた。初期費用の安さは大きなポイントである。

    この本には、稲葉さんの文章に合間に「ハウジングプア体験」として、年輩の人の話や、20代、30代の若者の話など、5つの文章がおさめられている。

    中でも、大阪の空襲で家族と住まいを失った「小島信二」さんの話は、父と同い年の人なんやと思うと胸がつまった。小島さんは、名前が二つある。戦災孤児どうしで身を寄せ合って暮らしていた頃に、服がいれかわったらしく、「小島信二」は、その服の持ち主の名なのだ。

    1990年代には、小島さん世代の路上生活者はたくさんいた、その中には小島さんのように戦災で家族を失った人も少なくなかったと稲葉さんは記している。小島さんは父だったかもしれないと思うし、涙を流しながら中国残留孤児の報道を見ていた母を思い出す。

    稲葉さんは、学校などで講演する機会があるときに「なぜあの人たちはホームレスになったのですか?」という質問をよく受けるそうだ。そういうとき、稲葉さんはこう問い返すことにしているという。

    「なぜあなたは路上生活になっていないのですか?」

    次の『We』165号では、稲葉さんのインタビューを掲載する。

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