戦争は女の顔をしていない

  • 195人登録
  • 4.15評価
    • (20)
    • (11)
    • (7)
    • (2)
    • (1)
  • 17レビュー
制作 : 三浦 みどり 
  • 群像社 (2008年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903619101

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島 由紀夫
ウンベルト エー...
トレヴァー・ノー...
三浦 しをん
ミシェル ウエル...
J・モーティマー...
又吉 直樹
ウラジーミル ナ...
シーナ・アイエン...
J.L. ボルヘ...
有効な右矢印 無効な右矢印

戦争は女の顔をしていないの感想・レビュー・書評

  • 第二次大戦時、ソ連では100万を超える女性たちが従軍した。それに加えて、パルチザン部隊や非合法の抵抗運動に参加した女性もいた。看護師や医師のほかにも、戦闘員として戦ったものも少なくなかった。その多くは、戦地では男性と変わらぬ任務に就き、同じように傷を負った。それもこれも「祖国のため」「大義のため」だった。けれど、戦後は「男ばかりの戦地で何をしていたのか」と侮辱の目に晒され、あるいは結婚することを諦め、あるいは勲章をしまい込み、あるいは従軍経験をひた隠しにして生きていた。

    男性が証言した戦争の記録は少なくない。しかし、女性の、しかも戦争従事者としての証言は非常に珍しいのではないか。多くの女性が従軍したというソ連の特殊な事情もあるだろうが、著者、アレクシエーヴィチの丹念で粘り強い聞き取りがなければ、こうした証言が日の目を見ることはなかっただろう。
    本作を最初に構想した1978年、アレクシエーヴィチは30歳代だった。証言者らは著者の母や祖母の年代になる。彼女らは、娘に、孫に語るように、戦争のナマの姿を語る。
    それは戦略や兵站の話ではない。生身の人間が戦闘に参加するとはどういうことか、肌感覚の話である。
    戦争は女の顔をしていない。女もまた、戦争に行くことを想定して育てられてきてはいなかった。そのためかどうか、彼女らは、日常のふとした小さな出来事に目を留めるかのように、繊細なまなざしで、戦場の過酷な現実を記憶する。
    血で固まり、手が切れるほど硬くごわついた衣服。
    死にゆく前に決まって天井を見つめる重傷者。
    泥だらけで死んでしまった仲間の娘たち。
    殺さなければ殺される白兵戦のすさまじさ。
    飢饉に見舞われ、満足に食べるものもない地でのパルチザン活動。
    1つ1つ、1人1人の証言が重い。
    歴史の教科書には残らないような、些細な部分。誰も聞かなかった細部。証言者が最も隠したかった、同時に最も語りたかったエピソード。
    そうしたそっと触らなければ痛みを伴うところに、アレクシエーヴィチは迫っていくのだ。
    それは人間の「人間らしさ」を形作る部分なのかもしれない。

    ある女性は、ある村で、無残にいたぶられた多くのパルチザンの遺体を目撃する。死体が転がる傍らで、馬が草を喰む。
    「生き物の見ている前で何という恐ろしいことをしたんだろう」

    平時ならばありえない風景は怖ろしいまでの絶望を誘う。それはまさに地獄なのだ。
    戦闘員は完全な被害者とは言えない。だが同時に、彼らは完全な加害者とも言えなかったのではないか。

    戦争は終わった。スターリンの時代も過去だ。
    もう何を語ってもよいはずだ。
    けれど、恐怖は残る。彼女たちは沈黙し、あるいは名字を伏せるように請う。自分のためというよりも、子どもたちに害が及ばぬように。

    おそらくはもう、これらの証言者たちの多くはこの世にはいない。
    けれど、著者がすくい上げたこれらの証言は残る。
    彼女たちが、娘のために、孫のために、いや、もしかしたら、戦争に出かける前の自分自身に伝えたかったであろう、切実な慟哭がずしりと残る。

  • 独ソ戦でソ連側として参加した女性たちの経験に触れられる本。たまに自分の経験のような感覚に陥る瞬間が。

  • 「У войны не женское лицо」の翻訳(2008/07/26発行)。

    第2次世界大戦の独ソ戦に従軍したソ連の女性のインタビュー集。
    当時、ソ連の女性がどのような気持ちでソ連軍に従軍し、戦地で何を見、感じたのかが良く判ります。
    グロテスクな内容ではありませんが、個人的には心に重くのし掛かる衝撃的な内容でした。

  • 読んでいる途中で何度も本を閉じる。怖くて。怖さって色々な種類があるって思った。涙も同じ。悲しみだけじゃない涙もあるってこと。この本はもうすぐ岩波現代文庫になる。みんなが読まないといけない本だと思う。綺麗な小説ばかり読んでいたら駄目だ。世界は涙や死者や血の上に出来ている。

  • 途中で読むのをやめてしまった。
    ノーベル文学賞受賞後に近くの図書館に配架されていたので借りた。「戦場にいた時はまだ若かった。背が伸びたくらい。」など印象的な言い回しはあるものの、基本的には従軍兵士の証言集なので、あまり起伏がない。そういうものであるということでしかないんだが、自分には合わなかった。

  •  
    ── アレクシエーヴィチ/三浦 みどり・訳《戦争は女の顔をしていない 200807‥ 群像社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4903619109
     
    ── アレクシエーヴィチ/松本 妙子・訳《死に魅入られた人びと 200506‥ 群像社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4905821290
     
    ── アレクシエーヴィチ/三浦 みどり・訳
    《ボタン穴から見た戦争 ~ 白ロシアの子供たちの証言 200011‥ 群像社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4905821797
     
     ◇
     
    ♀Alexandrovna Alexievich, Svyatlana Alyaksandrawna Alyeksiyevich
    19480531 Ukraine /20151008 ノーベル文学賞
     
    …… ベラルーシ大学でジャーナリズムを専攻し、卒業後はジャーナリ
    ストとして活動。聞き書きを通して、大事件や社会問題を描く。
     処女作『戦争は女の顔をしていない(1984)』では、第二次世界大戦
    に従軍した女性や関係者を取材。第2作『ボタン穴から見た戦争』では、
    第二次世界大戦のドイツ軍侵攻当時に子供だった人々の体験談を集めた。
    (Wikipedia)
     
    http://anago.2ch.net/test/read.cgi/femnewsplus/1445673967/
     ノーベル文学賞作家に増刷を断られた中小出版社、健気な声明(全文)
    The Huffington Post | 執筆者:安藤 健二 投稿日: 20151022 13:11 JST
    http://www.huffingtonpost.jp/2015/10/21/gunzosha_n_8353632.html
     
    …… ロシア文学の翻訳書で知られる横浜市の中小出版社「群像社」の
    公式サイトのお知らせに同情や称賛の声が集まっている。
     
     同社は、2015年のノーベル文学賞を受賞したベラルーシ人の女性作家、
    スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの著書のうち、
    「ボタン穴から見た戦争」「死に魅入られた人びと」「戦争は女の顔
    をしていない」の3冊を出版していた。
    10月8日のノーベル賞受賞を受けて、群像社では「戦争は女の顔をして
    いない」を1000部重版することを決めて、10月21日に取次搬入する予定
    だった。
     
     しかし、アレクシエーヴィチさんの著作権を管理する代理人から「あ
    なたの会社の権利が消えているため、増刷は認められない」と通知が届
    いたという。
     
     通販サイトAmazonでは品切れとなり10月22日現在、中古品が定価の7
    倍の約14000円で出品されている。
     
     群像社は1980年に設立されたが、2010年以降は代表取締役の島田 進
    矢さんが一人で経営していた。
     電話回線も一つしかなく、ノーベル賞受賞以降は注文が殺到して、電
    話とファックスは常時ふさがっている状態だったという。
     
     島田さんは、アレクシエーヴィチさんの本について「今後、あらたに
    版権を取得した出版社から刊行されることになると思います。
     
     小社の本をお届けできなかったみなさまには、ぜひ新しい装いの本で
    アレクシエーヴィチの作品をお読みいただければ、最初に刊行した出版
    社としても喜ばしいことです」とコメントを出した。
     
     群像社が発表した声明文は、以下の... 続きを読む

  • ノーベル賞受賞で知って読んでみた。これは文学史に残り読み継ぐべき本であり、彼女がノーベル賞を受賞した意義を実感する。
    若い(30代)作家による、第二次大戦で戦争に行った女性たちへのインタビュー集。作家が彼女たちに向ける眼差し、彼女たちが過去の自分を振り返る意識、戦時中と戦後に彼女たちに向けられた世間の目、戦争と女性を巡る複数の視線が非常に興味深い。
    最前線で戦った人、医師看護婦、パルチザン、洗濯係、通信係など、立場は様々だが、皆リアルに戦争に接している。この本が優れてユニークなのは、まずは女性同志の会話の中から「女の顔をしていない戦争」が生々しくたちあがってくること、さらに「人間は戦争の大きさを越えている。そういうエピソードこそ記憶に残る。」という作家の意図がこめられているところだ。
    インタビュイーと雑談しお茶を飲み心を開きながら聞いた話は膨大だったろうが、本書の一人ひとりのエピソードは短い。語られたのは凄惨な死や血であり、女ならではの思い出や経験であり、忘れられない/戦争中は消え去っていた花や鳥の声の美しさである。或いはありえないほど恐ろしく凄まじく、或いはささやかな人間の営みを感じるが、どれも非常にエモーショナルで、胸が詰まり、何度も立ち止りつつ読んだ。最前線に立った女性という存在自体が珍しいのではないか?当時のソ連では、20歳以下の少女たちが、国を守りドイツを倒すのだという純粋な愛国心を持って志願し、事務方や作業員はいやだ、戦いたいと主張した、その事実も刺さる。

  • 首都大学東京推薦図書

  • なんともすごいルポルタージュっていうんでしょうか。
    これを読むと、本当のことは何も知らされてない感が一杯になります。
    日本の戦争はどうだったんだろうか?と改めて、

  • 第二次世界大戦 ソ連では、たくさんの女性(10代~)が戦場に出ていた事を知りました。
    自ら進んで、親の反対を押し切ってまで。
    戦勝は、その人たちにとってよかった事もあれば、悪いこともあった。
    独軍に捕虜にされたり、西側を見た人たちは、ソ連の強制収容所にいったり、裏切り者扱いされたりする。
    以前は、この本も許されなかったのに、ここまでまとめた作者はすごい。

  • 女性の狙撃兵とか戦闘機乗りとかがいたのはなにかで読んでたけど、ハイティーンの女の子たちが志願して前線に行っていたとは知らなかったし驚いた。男でもそうだろうけど、多感な時期をそんなところでそんなことをして過ごしていたら、そりゃあその後日常生活に戻るのは苦労するだろうなあと想像に難くないし、実際戦後彼女たちがかつての同僚である男性のみならず、戦場にはいなかった女性たちからも蔑視されていたは、なんともやるせない。

  • 「なにかが起きた。でも私たちはそのことを考える方法も、よく似たできごとも、体験ももたない。私たちの視力も聴力もそれについていけない。私たちの語彙ですら役に立たない。」
    『チェルノブイリの祈り』の序でこのように書いた著者が、インタビューという方法でことばに残そうとした、女性兵士という体験。

    OPACへ⇒https://www.opac.lib.tmu.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB02171905&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 「ヴ」の音、いわゆるウ濁抜きで訳したという『チェルノブイリの祈り』ではスベトラーナ・アレクシエービッチだった名が、こちらはウ濁名になっている。

    この本は、アレクシエーヴィチ自身がもっとも大切に感じている本だという。
    訳者あとがきによると、ソ連では第二次大戦で百万人を超える女性が従軍し、その女性たちは他国のように看護婦や軍医というだけでなく、実際に人を殺す兵員でもあった。だが、戦争が終わって、従軍した女性たちは、「男の中で何をしてきたやら」と侮辱されもし、自らの戦争経験を隠さなければならなかった。

    女たちの戦争は知られないままになっていた。アレクシエーヴィチは、その女たちのものがたり、戦争の物語を書こうとした。1978年から女性たちを訪ねはじめ、20年以上をかけて話を聞いてまわっている。

    執筆日誌の「はじめてのメモ」には、回顧についてこう書かれている。
    ▼回顧とは、おきたことを、そしてあとかたもなく消えた現実を冷静に語り直すということではなく、時間を戻して、過去を新たに産み直すこと。語る人たちは、同時に創造し、自分の人生を「書いて」いる。「書き加え」たり「書き直し」たりもする。そこを注意しなければならない。(p.15)

    祖国への愛に燃え、自分たちも何か貢献したいと徴兵司令部へ乗り込んで従軍を希望し、前線へと向かった女性たち。私たちだって役に立ちたい、役に立てるというその思いの強さは、日本にもあったのだろうと思う。

    人を殺した経験も語られる。「敵と言ったって人間だわ」と一瞬ひらめいて、でも引き金を引いたという女性。初めてのときは怖かった、私と関係のない人を殺したんだ!この人のことを全く何も知らないのに殺しちゃった、と泣いてしまったけれど、しばらくしてそういう気持ちはなくなったと語る女性。

    軍曹(高射砲指揮官)だった女性はこう語る。
    ▼…私たちは18歳から20歳で前線に出て行って、家に戻ったときは20歳から24歳。初めは喜び、そのあとは恐ろしいことになった。軍隊以外の社会で何ができるっていうの? 平和な日常への不安……同級生たちは大学を終えていた。私たちの時間はどこへ消えてしまったんだろう? 何の技術もないし、何の専門もない。知っているのは戦争だけ、できるのは戦争だけ。(pp.148-149)

    二等兵(土木工事担当)だった女性はこう語る。
    ▼…戦争では橋が真っ先に壊されます。…いつも思ったものです。これをまた新たに建造するのにどれだけの年月がかかるだろう、と。戦争は人が持っている時間を潰してしまいます、貴重な時間を。父はどの橋の建設にも何年もかかっていたのを私は憶えていました。何日も夜遅くまで図面とにらめっこして、休みも返上でした。戦争で何よりもったいなかったのは時間です…父が費やした時間… (p.213)

    戦場でさまざまな役割を担った女性たちが、それぞれの経験した出来事をとおして「戦争」を語る。

    ソ連は、大祖国戦争(1941-1945、ドイツ側では東部戦線とよばれる)でヒットラーのナチスドイツと戦い、勝利のために4年間で2千万人の犠牲を払った。そんなことも、私は知らなかったなと思った。

    (9/9了)

  • 嘗て大祖国戦争に従軍した女性将兵達へのインタビュー集。1人1人の証言は短めですが、どれも重く心に突き刺さるような話ばかりです。どの証言も断片的なものなので、大祖国戦争の背景や経過を予め頭に入れておくと良いかもしれません。

  • 日野図書館で借りた。

    重かった…

    ロシアとドイツの話だからまだ冷静に読めたが
    日本と朝鮮・中国・東南アジアの話だったら
    しんどすぎて読めなかったかも…

    この著者の他の本も読みたい

全17件中 1 - 17件を表示

戦争は女の顔をしていないを本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

戦争は女の顔をしていないを本棚に「読み終わった」で登録しているひと

戦争は女の顔をしていないを本棚に「積読」で登録しているひと

戦争は女の顔をしていないの作品紹介

封印されてきたソ連の従軍女性たちの声を聞けば、現代史のなかにひそむ悪魔の顔が見えてくる。衝撃のインタビュー集。

ツイートする