猫の町 (群像社ライブラリー)

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制作 : 津和田 美佳 
  • 群像社 (2009年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903619170

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猫の町 (群像社ライブラリー)の感想・レビュー・書評

  • 猫のいる町、猫のある街、日本で言えば漁港をイメージして猫とカモメという取り合わせが良く似合っている。 時間の遅いバスで街に到着して街は既に寝静まっていて妙に街灯だけが街を照らしている。 そんな街に降り立って知り合いもなく、家からは遠く離れ、猫だけが迎えてくれる。 そんな情景から始まって少し旅情を誘う出だしで始まった。 最後は良く解らなかった。

  • たしかに作者はかなりの猫好きのようだ。
    冒頭、海沿いの町に着いた主人公は、2匹の猫が自分の前を歩いていくのを見て、まるで歓迎のために先導されているような感覚になる。「おとぎ話の一場面みたいで、私は猫の国に足を踏み入れたような気分になった・・」

    次々と猫に広がる感染症と、パニックになる人間。なるほど多くの読者はこの作品を、近未来的なSF小説と読むかもしれない。でも、他人と同じ読み方が嫌いな“ひねくれ読者”の私は、そう単純には読まない。

    「ここは静か過ぎだよ…まるで空気の替わりに、透き通った液体があるみたいじゃないか。」
    この作品が書かれた1970年代は、共産主義の理想をひた走り経済的にも成長するソビエト連邦がその体制の維持のために“見えない何か”で社会を封じていたのは今では周知の事実。都会の洗練された知識人である主人公が、気候がよくて自然豊かなこの町に来て次第に幻想に追い回され、悪夢にうなされる場面は、当時のソ連知識人が、社会主義国家を覆っていった“黒雲”に苦悩する姿そのもの。

    また作者がかつて実際に黒海沿岸の町を訪れたとき「まるで人間と猫の間に契約があって、夜は猫が支配し、日中は人が支配している町みたい」と感じ、猫社会と人間社会が1つの町を共有する、という着想に至ったというが、“猫と人間の共存”といった寓話的に読むだけでなく、民族や宗教の並存の暗喩とも読むべきだろう。
    平和な日本では簡単に想像できないが、ウイルスに感染した猫が人間に狩られ姿を消すというのは、民族や宗教の対立により、今も世界のどこかで“浄化”という言葉で行われている愚かな行為のメタファーなのではと思う。

    ソ連の作家は、社会の抑圧から自己表現を勝ち取るため裏側の意味を隠し、読者はそれらを謎解きのように探し当てるところに面白さがあると思うが、訳者は「猫好き」だからこの本を訳し始めたというように、翻訳は最近の日本の女性向け小説のような軽いタッチになっている。
    それは幅広い読者層の獲得の一方で、本来のロシア小説の味わいを損なっているようにも思える。ボルシチはボルシチのままでおいしいのであって、和風に味付けされれば、もうボルシチではない。
    (2010/3/30)

  • ロシアに触れたくなって。
    ロシア作家の本だったので読みました。

    印象ひとことでいうなら…これは白昼夢?
    可愛い猫たちが流行り病の原因の汚名をきせられ排除されてゆく哀愁ものだと思って読み始めたら、どうも違う。最初から人々は猫をそんなに可愛がってない。人と猫の関係は希薄。むしろ最初から猫たちはやや不気味。というか作者が、町の様子をほとんど描写しないので、うだるような暑さの海辺の町には主人公に関ってくる数人の町人と何百匹もの猫しかいないような気がしてくる。まるでゴーストタウン。

    ある夏。
    とある映画撮影の手伝いに海辺の町にやってきた主人公は、同じ用事で町へきていたシナリオライターの男と知り合い、一緒に家を借りて暮らし始める。町には港町の常でたくさんの猫がいる。町の入り口には猫の石像が建てられている。ライターは愛嬌に溢れた好青年で町人たちに彼を紹介し、都会の友人たちを家へ招く。友人たちは狂乱して去り、奇妙な話をするバーの女主人と恋仲になり、頭のおかしい教師が猫の銅像を爆弾で吹っ飛ばそうとし、いよいよ猫が不気味になってきたところで新種のインフルエンザが勃発。軍が町を隔離し、町人たちは溢れかえる猫たちをウイルスの媒介者として自主的に処分し始める。

    最初から最後まで現実味の無い霧がかったような調子で物語が進んでいきます。全編において主人公の心情は書かれているのだけど、どうも現実を見ていないので、彼が実際何を考えているのかよくわからない。こういうもやっとした雰囲気は息苦しくて苦手。霧が晴れないのでインフルエンザ収束らへんで力尽きました。

  • ソビエト時代に書かれた小説で黒海に面したクリミア半島沿いのある軍事都市、いわゆる閉鎖都市が舞台になっている。そこは町の外れに猫好きな町の住人たちによって造られた猫のスフィンクスがあり、夜になるとどこからともなく猫たちが出て来て町をうろついていた。ある夜、人間が猫に襲われ、猫インフルエンザのウイルスが見つかると、町は検疫のため封鎖され、感染を恐れた町の住人は猫殺しにはしりはじめる。インフルエンザに怯える現代社会の予言的な要素も兼ね備え、ソビエトという遠い世界の裏庭の夏の海沿いの小さな町で繰り広げられる人たちの情景が自由奔放で、やはりロシア人だと感じさせる登場人物たちにも好感が持てる作品。

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