- Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903690612
作品紹介・あらすじ
わずか6個の点の組み合わせで日本語の仮名はもちろん、数字、アルファベット、さらには音符まで表せる点字。ルイ・ブライユ生誕200年を記念し、"点字力"の広さと深さを万人に伝える入門書。点で創る新たな宇宙、点が拓く多様な生き方。
感想・レビュー・書評
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点字をご存知だろうか。
視覚障害者用の「文字」で、平面に形成された突出部で文字や数字を表現し、指で読み取るものである。
一般には、フランス人ルイ・ブライユ(1809-1852)が考案した6点式点字(ブライユ点字)を指す。縦2列、横3段の6点で、文字や数字を示す。各位置で点があるかないかで64通りのパターンがある。
数字の場合は数符と呼ばれる符号を前置することで以下が数字であると示すなど、わかりやすく工夫されている。
その他、句読点やかっこ、音符にも対応する。
フランス人が考案者なので、最初はもちろんアルファベットに当てはめる形で作り出されたが、各国で取り入れられるにあたり、その国の言語・文字に対応するものも生まれている。日本でも、五十音を点字にあてはめることで日本語対応の点字が作り出されている。
本書は、ブライユ生誕200年を記念して、2009年11月に国立民族学博物館で開催された国際シンポジウムをまとめたもの。
点字をさまざまな視点から考えようというものである。
第一部 ルイ・ブライユ
第二部 点字が視覚障害者にもたらしたもの
第三部 点字教育の現場
第四部 多文化共生社会の中の点字
第五部 だれもが楽しめる点字
の五部構成になっている。
ブライユは自身も視覚障害者だった。非常に学習意欲の高い人で、周囲の理解にも恵まれ、幼少時から頭角を現した。フランスの田舎出身だったが、長じてパリの盲学校に進み、点字を考案し、自ら教師となった。盲学校の寄宿舎の衛生環境があまりよくなかったためか、結核に罹って比較的若くして亡くなった。
触覚を利用する文字の開発はブライユ以前にも試みられていた。軍事利用のためである。暗闇でも通信可能にしようという目的である。発想としてはなかなか斬新で、それまでは視覚(読む・書く)か聴覚(話す・聞く)で利用されていた言語を、触って伝達しようというわけである。文字自体を浮き上がらせる、あるいは点にしてももっと多い数の点で文字を表すという形はあったが、ブライユは非常に合理的に整理して、6点式の点字を編み出した。
点字の利用は視覚障害者に多くのものをもたらしたが、しかし、実は6点式のものを指先で判別するには地道な訓練が必要である。大人になってからは習得しにくいこともあり、現在では、視覚障害者のうち、点字を読み取れるのは10%という概算もある。
読み上げソフトや点訳ソフトなどの技術も進んできており、過渡期ではあるのかもしれない。
とはいえ、点字の本を指で読み取る形だと自分のペースで読むことができ、また、習得していればメモを取るのにも活用できるため、点字自体が直ちに廃れるというものではなさそうだ。
その他、点字をアートとして活用したり、図表を点字で表したりという試みもなされていて、なかなか興味深い。
触って読み取るという形式には、意外に奥深い可能性があるようにも思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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2009年11月22~23日に国立民族学博物館において開催された国際シンポジウム「点字力の可能性-21世紀の新たなルイ・ブライユ像を求めて」の成果報告書、ということで、いろいろな話が読めて、面白かったです。