街場の中国論

著者 :
  • ミシマ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908007

作品紹介・あらすじ

「予備知識なし」で読みはじめることができ、かつ「専門家」で
は絶対に指摘しない「本質」をついてくる、内田樹の『街場』シリーズ最新刊。
日中関係の見方がまるで変わる、「なるほど!」の10講義。

感想・レビュー・書評

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  • 中華思想をさらに明確にした華夷秩序というキーワードが鮮烈。そもそも日本の十倍の人口の多少、同じく20倍以上の少数民族種を抱える国の必然的な統治の在り方としての一党独裁先制主義と理解していたが、なるほど思想や国境とかはどうでもよく、朝貢して形だけでも子分である限り与えも奪いも干渉もしない。その中華思想が今でもガバナンスの中心にアンコンシャスであれ通底している。なるほど。
    15年ほど前なので、いろいろ事情も変わっていて、冒頭提唱された中韓日での儒教くくりの何らかの共同体なぞはどこかにすっ飛んでしまって、今ではトンデモではある。
    それでも中国を半ばシニカルにも面従腹背したり、本音と建て前を使い分けたり、派閥ごとに外交ラインを利権含みとはいえ抱えていた小渕恵三以前の自民党はいろいろ強かでうらやましくもあるな。

  • 中国三千年の歴史…中国は大国で日本はその果てにある小国。生きる方法が異なるんだな。

  • これ、記憶がないんだ。

  • http://blog.tatsuru.com/2010/11/09_0945.php内田樹氏のブログで本書を発見。http://twitter.com/#!/naokis/status/1841830375194624関連ツイート

  • 著者はグローバリズムに対抗して儒教文化圏の再興を説くが、儒教は嫌だ。教祖がある文化圏では同じ穴のむじなというか基督教よりなお悪いと思う。それならいっそカレー文化圏でいいと思うが如何?インドカレーとタイカレーとライスカレー、どっちが上かなんて誰も考えようとしないでしょ。なんてね。掟破りの一人時事放談本。

  • 数多の中国論のなかでも読み応えあり、数多の示唆を与えてくれる書。この著者の新しさはポストモダン風の嘲りと逃走ではなく、対象を「いなす」足腰の柔らかさにある。思想的一貫性やリジッドな思想などを持たないで、やり過ごす柳のような知性、一を決してとらないと言う意味ではポストモダンなのだろうが。

  • 2007年刊。内容は2005年に行われた大学院での演習を下敷きにしており、時事ネタは当時のトピック。
    発売されてすぐに購入し読んだときにも、膝を打つ思いで一気に読み終えた。

    そして今、件の領土問題の報道を徴するに、中国政府が一体何をしたいのかよくわからない。
    「それでは」とこの本を引っ張り出してきたら、これがやっぱり効果覿面。

    見事に補助線を引いてくれる。

    なかでも領土問題に際して「中華思想」「王化思想」というフィルタを通して中国政府の動向を見れば、なるほどと得心の行くことが多い。

    「だから中国って嫌なんだよね」と言う前に、この本と、この<a href="http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100930/216450/">コラム</a>を読んでみるべし。また違った世界観が手に入るだろう。

  • おもしろかった~。
    この本が出たのは2007年なので、前回の半日デモの時ですね。
    なので、多少古くなったトピックもありましたが、
    構造的な問題は今回の半日デモと変わり無いので、面白く読むことができました。

    中国の専門家でない者が、できるだけバイアスの無い立場から、双方の認識の違いを論じる、という内容ですが、内田先生は十分左に偏った見方をされているので要注意です。

    各国の対日感情をシンプルなロジックで語ろうとする時の一番のネックは台湾だと思いますが、
    この本の中でも台湾の章だけ非常に歯切れが悪く、全体の説得力を損なってしまっています。

    そんなとこを差し引いても、すごく勉強になりました。
    魯迅も読み直してみたくなったので、また近いうちに読みます。

    「人間は高みから世界を一望俯瞰していると思い込んでいるときに、もっとも深く自分自身の分泌する幻想のうちにとらえられる」
    っていう最後の言葉が良かったですね。
    結局フーコーとか幻想の話になるんですけど。
    まあそこは内田本ですから。

    相手の立場に立って考えられるように、少しはなりたいもんです。

  • 中国における 文化大革命 とは一体なんであったのか?
    現時点でも まったく解明されていない歴史的な事件でもある。

    紅衛兵が活躍していた頃は 私は学生だった。
    そのころ 紅衛兵に対しては 何かがおかしいな。
    ピントがずれているなぁ・・・と思っていた。
    そのため 毛沢東の『実践論・矛盾論』を読んだが
    なぜ紅衛兵になるのかが よくわからなかった。
    赤い 毛沢東語録も 読んだ覚えがあるが。
    心は あまり動かなかった。
    いまこうやって中国にいて文化大革命について考えているのが
    不思議に思える。

    内田樹氏の 文脈から 考えてみると
    1 毛沢東はなぜ 文化大革命を進めようとしたのか?
    → より独裁的な権力を得るために。あくまでも 党内闘争。
    内田樹氏は言う
    『一極集中していた権力や財貨や情報や文化資産を周縁に拡散させて、全土を均質化しようとした。』

    2 『造反有理』というスローガンが 中国からなぜ消えたのか?

    3 スペシャリスト(学者、知識人、文化人、テクノラート)を攻撃の対象とした。
    → 専門化が 集中を作り出す。
    毛沢東はアーナキーな政府を目指した。

    4 農民が 何でもできる万能者と見た。
    → 毛沢東の幻想だった。
    内田樹氏は言う
    『毛沢東は大衆の自覚性と潜在能力の高さに信頼をおいた』

    5 そして今紅衛兵は何をしているのか?
    → 『修正主義』と叫んでいたものが 今は中国の主流。
      そのことをどう見ているのだろうか?

    この幾つかの疑問の中で 『造反有理』という言葉がキイワードになる。
    今の 農民暴動などは 造反有理 なんだろうなぁ。
    そして その造反有理は 愛国無罪 という言葉に発展して
    反日抗議行動の底流を作り出す。
    中国は いま造反有理という言葉を復活させる時かもしれない。

  •  ・・・香港を百年領有した後に、「こんなところを百年借りていてどうもすみませんでした」と、変換当時のイギリスのブレア首相は謝ったでしょうか。・・・アヘン戦争のときかの条約を盾にイギリスは百年間、香港を租借していたわけじゃないですか。・・・それに対して「イギリス許すまじ」と言って、猛抗議したというニュースを僕は読んだことがありません。
     歴史的事実と現在の国民感情の間に一体一的な相関関係があるという前提は立たないと僕は思います。さまざまな歴史的事実がある中で、記憶すべきものとして選択されるものと、されないものがある。(p40)

     日本が最終的に欧米列強の侵略を免れたのは、日本の文化の高さによってだと思います。そのような知的リソースが中国のように中央集権的に特権的な階層にだけ集中していたのではなく、広く日本のすみずみにまでわたっていたことが、日本を救ったのではないでしょうか。(p132)

     これははっきり確認しておきましょう。僕たち日本人はそこに立ち戻ると、政治的立場を越えて、年齢性別を越えて、階級出自を越えて、国民的統合を実感できるような歴史的出来事を持っていない。(p146)

    「正論だけど、どうも無理筋のように思える」とか「まったくjおっしゃるとおりなんだけど、聴いてると鳥肌が立つ」という場合には自分の感じる違和感のほうをそれ以来優先させることにしています。
     それが文化大革命から僕が得たわずかな教訓のひとつです。(p154)

    「クーデタ」は政権内部での権力闘争のことです。「反乱」は突発的に起きてしまうので、現政体を打倒したあとに、どのような社会を構築するのかのヴィジョンを持っていません。それに対して、「革命」は政体の根本的な変換であり、かつそれを領導する原理の下絵が描かれている。(p157)

     時間によって腐食することのない知見が多々あって驚くばかりであった。そして、何より面白いしね。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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