ザ・万字固め

著者 :
  • ミシマ社
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感想 : 148
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908410

感想・レビュー・書評

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  • 会いたかった万城目さん。久しぶりの出版はエッセイだった。
    小説も面白いのだが、エッセイもまたジワジワ来る面白さだ。
    私はこの人の「こだわり方」がとても好きである。言葉や事象に対する飽くなき好奇心というか、気にする仕方、追求の仕方を読んでいるのが楽しくてしかたない。
    どうも現在は「とっぴんぱらりの風太郎」という小説を書いておられるようで、早くもその作品に対する期待が高まっている。うう、早く読みたいぞ。
    しかし、不安もある。本作のラストで恐ろしい事態がまきおこっているようなのだ。影が逃げてしまった万城目氏の運命やいかに! どうか無事に影を取り戻し、一刻も早く「とっぴんぱらりの風太郎」を仕上げてほしいと願うばかりだ。
    ミシマ社の装丁は温かくて大変すばらしい。なんかもう全体にくすくす笑いが止まらない感じである。

  • ひょうたんを育てたり、戦国大名でサッカーチームを組んだりする面白エッセイ。印象深かったのは間違いなく、東京電力の株主総会に出席した話だ。

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    2010年12月に東京電力の株、5000株を980万円で購入した万城目さん。その後はぬくぬくと配当金をもらい続ける予定だったが、2011年3月にあの大きな地震と津波によって東京電力の原発は事故を起こした。
    東京電力の株価は連日ストップ安を記録、3月末に万城目さんが株を売りに出すと、734万円の損失が確定した。

    防波堤を作るべき金を配当金に回していた会社と株主たち、彼らに加わった強欲な自分に罰を喰らったのだ、と思う万城目さんのもとに東京電力から株主総会の通知が届く。

    興味本位で参加した万城目さんは6時間に及んだ総会で、東京電力の勝俣会長の頭脳と胆力に驚嘆する。ひとりで議事をコントロールし、受けた質問は担当役員に振り分ける。左右に座る社長、副社長に相談することもなく、会場の悪意すべてを受け続けた勝俣会長を、万城目さんは「妖怪」と表現した。そして、妖怪が率いる東京電力は自らが育てた原子力という「怪物」と戦わなければならない、と万城目さんは続けた。

    ---------------------------------------

    20011年3月11日以降、地震と津波で被害に遭われた方々や、原発事故のために避難している方々の話などを何度も目にしてきた。テレビやネットのニュース、本や新聞、多くのメディアで様々な情報が流されてきた。
    しかし、東京電力の株主(だった)ひと目線の話は、今回初めて読んだ。なるほど、当時こんなことが起こっていたのか、と大変興味深かった。

    あのとりかえしのつかない大事故からもうすぐ10年が経つ。いまだに故郷に帰れない人もいる。原発作業員として少ない賃金で働くひとたちの問題も続いている。
    「怪物」である原子力はまた稼働し始めている。
    電力という恩恵を受けながら、東京電力を批判することが正しいのかどうかわからない。実際に働いている方々はとても頑張ってくれているはずで、とても頭が上がらない。
    でも、やはり自分としては、とんでもない大事故を起こした原子力発電をまた稼働させることに、賛同するのは難しい。
    完全にコントロールできる、もしくは事故が起きた際にも安全にリカバリーできる、という保証の上で稼働させるべきなんじゃないかな。また同じことが起きたら、また同じようにたくさんのひとたちを苦しませてしまうわけだし。

  •  この本は「偉大なるしゅららぼん」「プリンセス・トヨトミ」「鹿男あをによし」「鴨川ホルモー」で知られる万城目学さんのエッセイ。

     台湾で「偉大なるしゅららぼん」の翻訳版が出版されたときの、台湾でのサイン会の話とか、少年時代の「遠投げ(とおなげ)」の話とか、どの話も面白かったですが、なんといっても、東京電力の株主総会。万城目さん電力株なんてやっていたのかよという軽い驚きと、人の不幸は蜜の味的な、いやあ万城目さん大変だったねえと言いつつ口の端が上がってしまうダークな笑い(笑)
     あのニュースにもなった株主総会の様子を、淡々と書かれていながらすごく面白い。万城目さんらしい文章です。

     万城目さんの小説を読んでいれば、あっあれね、とすぐに思い出して面白いし、読んでない方にも笑えるポイントがたくさんあります。

  • 万城目学のエッセイ。作家はやはり日頃から想像力豊かで、いろんな角度から現在と過去、未来をを見ているんだなと感じる一冊。

    特に最後の影についての想像は、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を思い出しつつ、最後の終わり方もユーモアたっぷりで面白い。

    また、台湾のサイン会の感想も興味深い。わんちぇんむぅがやってくると読んで中国語かなと思ったけど、やっぱり台湾での万城目学愛はすごい。

  • 気楽に読めるなかに時折、おおっと唸るストーリーが登場して、プロってすごいなぁと思わせてくれる本。でも基本的に気楽。

  • 旅について綴ったエッセイがいい。小説が翻訳されて招かれた台湾での出会い、若かりし時に見たギリシャのエーゲ海の青、島を離れる船の甲板で見た無言の会話。旅の醍醐味が文章に散りばめられていて、また旅に出たくなる。

  • 私は万城目さんの言葉選びが大好きなのだと思い知らされる一冊。
    いやー。楽しい!

  • エッセイ集第3弾。今回は第1弾より笑わせていただきました。著作の設定通りけったいな人です(笑。「東京電力株主総会リポート」は実に興味深かったです。第2弾も読まないと。

  • 普段全くエッセイを読まないがタイトルと最初のオクトパスにやられた。またイラストが味があって良い。万城目さんの作品は鹿男しか読んでいないので他の作品も読みたいと思った。

  • 戦国武将でサッカーチームを妄想したり、台湾に出かけたり、東電の株主総会に出席したりといろいろ忙しそうです。早く新しい忍者の話が読みたい!!

著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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