街場の戦争論 (シリーズ 22世紀を生きる)

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著者 : 内田樹
  • ミシマ社 (2014年10月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908571

街場の戦争論 (シリーズ 22世紀を生きる)の感想・レビュー・書評

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  • 僕とミシマ社との付き合いは2008年の「謎の会社、世界を変える。~エニグモの挑戦」に遡る。当時の勤務先が表参道だったため、よく青山ブックセンターや山陽堂書店に通っていた。そこでよく平積みになっていたのがミシマ社というよくわからない出版社の本だった。今では書店の必須アイテムになった手書きPOPの走りだったかもしれない。

    次いで新潮新書「日本辺境論」で内田氏の著作に出会い、読み進むうちに気がついたら合気道多田塾に入門するほどに傾倒してしまった。(ミシマ社代表の三島邦弘さんも多田塾生なのでおふたりとも僕の兄弟子というわけ)

    そんなわけでミシマ社から出る内田先生の本はちょっと襟を正して読むのだけれど、これはいつもとちょっと雰囲気が違った。ミシマ社と内田先生に底通しているのは、真面目ななかにもどこか(いやかなり)楽観的なところがあって、世の中の問題を真っ向から見据えて取り上げながらも最後はなにか希望を抱かせてくれる、そんな空気ではないかと思う。しかし、現在の第二次安倍政権が向かっている先にはかなりきな臭く、悲惨なものを見ているようで、すこし筆致が重いように感じる。

    日本が60年間忌避してきた「戦争」というものを、わざわざたぐり寄せようとしている人間が、少なからずいるという事実。彼らはもちろん自分自身が戦場に行って危険にさらされることも、自国が戦場になって自分や家族が殺されることも想定していないだろう。「自衛隊員のいくらかは死ぬかも知れないが、その損失を補ってあまりある利益、国益があれば良いだろう」と考えているはずだ。あるいは「戦争ができる能力を高めるだけで、まさか戦争にはならないだろう。万一そうなったら、自分と家族は安全な国に逃げることはできるだろう」か。

    そうした人間が政治や経済を動かしている現状。そしてそんな政治家を選んでしまう(あるいは投票すらしない)国民。

    そこへの諦観が、本書では少しずつ強まっているような気がする。

    東日本大震災と原発事故。

    あれほどの災害と事故があってなお、そこから何も学ぼうとしない日本人に、やや絶望的な気分になってしまうのは僕だけではないと思うけれど。

    微力だけれど、ひとりひとりの意識が変わっていくことがただひとつの方法だと思う。そのために理想を掲げること。文芸や芸術にできることはそれしかないのかもしれない。

  • 内田先生の本を普段は手に取られない方はタイトルで敬遠するかも…とちょっと思っていましたがこれは今こそ読まれるべき本だと感じましたね。
    出版からちょうど一年ほど経つのですが、今の日本の現実は(残念ながら)内田先生のおっしゃる通りになってきています。出版当時出なく1年後の今読んでよかったととても思います。

    何だかよくわからなかった「戦争へ向かいたがる空気になっていく」理由や過程、そういう人たちが目指しているものが良くわかりました。次の日の新聞の記事を読む目が前の日と変わっているのを感じました。
    本書を読んでいる最中、目からうろこが落ちっぱなしの気持ちでした。良い悪いではなく「全く違う文脈の中で眺める」「みんながいつも同じ枠組みで賛否を論じていることを、別の視座から見る」ということはものすごく重要なことだと思いました。
    自分と違う視点や考え方であっても否定や反論をせず、ちょっと止まって考えてみるのも必要なことだなと考えました。

    内田先生のおっしゃるように「想像力を広く使う」のを忘れずに社会を見てゆかなければと思いました。
    これからも内田先生の刺激ある言葉を受け止めて続けて行きたいですね。

  • 今の政治に疑問を少しでも疑念を抱いている人は読んでいて本当に損はない本だと思います。

    戦後70年のアメリカとの関わり、大きな大きな見えざる力が働いていること、そして人類の歩んできた民主主義の歴史に逆行するような改憲の動き。
    根本に流れているのは経済成長を最優先させる政治・スタイル。国民も踊らされていないで、意を持って行動をしよう。
    私は内田さんの考えにはすごく同感できることが多い。

  • いつもながら、著者の本を読むと、自分で考えることの大切さを教えてくれる。この本も例外ではない。
    あとがきにある「まったく違う文脈でながめる」ことを実践してくれるからだろう。
    平日は朝から晩まで企業に勤め、大新聞を毎日読んでいる私の様な人は、まさに読むべき一冊。

  • 「現代の窒息感を解放する、全国民必読の快著。」

    ミシマ社のPR
    http://mishimasha.com/books/machiba5.html

  • 戦争論だから仕方ないけど、ひたすら戦争の話。危機的状況に対応できる人の話は「たしかにそういう人いるなあ」と共感。

  • これは2014年の内田樹の本である。
    ここで彼がいってるのは、ここ何年かのみんなの理由のわからない焦り、や不安といったものは、いまが戦争と戦争のあいだの期間だから、ではないだろうか、というものだった。
    もちろん、第二次世界大戦と第三次世界大戦でございますよ。
    そう、私もそう思う。
    二年たって2016年にアメリカはトランプを大統領に選んだ……。
    オーストリアはかろうじて極右政権になるのを免れたが危機一髪だった……。
    48対51なんて、おせじにも差があったとは言えない。
    これでしばらくは保つだろうが、いつまでもたせられるか……。
    来年にはフランスとドイツの選挙があるのだ。
    とりあえず北欧とイギリスがひっくり返ることはないだろうが、フランスが極右になったらドイツはもう、もちこたえられなくなるだろう。
    いくらナチスに対する反省を引きずっていたとしても……。

    もちろん彼はこの本の終わりのところで、10年後に、そんなことはなかったよ、世界は平和を保ってる、内田さんの思い過ごしだったね、と笑って言えるようになっているといい、といっている。
    私もそう思う。

    でも、2017年を迎える前に、もう一度この本を読んでおいたほうがいい、とも思うのだ。

    というわけで、これも司書は読んどけ本である。

    いくさが始まればどっちの陣営も一番ひどい目に遭うのは子どもに決まっているのだから……。

    2017/02/13 更新

  • 3

  • メディアが語ろうとしない、いまの日本の現状を赤裸々に語っている。第四章「働くこと、学ぶこと」、第五章「インテリジェンスとは」は、示唆に富む内容。
    多くの人に読んでもらいたい一冊。

  •  どうか、これから先を生きる未来の日本人が、苦しく、自国を受け入れられず、更なる未来を思い描けず、辛い思いをしながら、生きることのないように、

    私たちはもっと、先のことを考えて、(それは未来の「自分」ではなく、もっと大きな流れのこと)生きねばならぬのです、

    と、言われた気がした。



    最近ネットのニュースで、「世界の全寮制の学校の学費ランキング」というものがやっていた。高い順にランク付けがされているのだが、そこの出身者も載っていて、

    「あぁ、なんだ。お金持ちのコミュニティは、こういうところで作られて、こんな風に壁が作られていくのだ。」ということをまざまざと思い知った気がした。

    何を今更、というような感想かもしれないが、
    「意外にこの人も」という人がすごくお金持ちの全寮制出身だったりして、世の中のコネの強さを思い知ったというか、今表舞台に立っている人は、その人の実力のみで立っているわけではないんだ、という現実を突きつけられた気がした。


    それと同時に、「日本にはこういうシステム、ないな。」と思った。いや、もちろん似たものはあるよ。お金持ちやコネがものをいう学校は。ただ、規模が違うというか、世界に比較したら猿真似に過ぎないというか、日本人で本当に今あるコネなり財力活かしたかったら、外国の全寮制行くよね、みたいな。たとえそこで行けたとしても、「代々お金持ち」とかじゃない、成金扱いというか、新参者感否めないよね、みたいな。


    まぁ勝手にそんなことを思ったわけですが、

    それと同時に、「なんだ、世界って思ったほど変わってないんだ。リベラルを、私は語るべきじゃないんだ。」と、脳天勝ち割られたような衝撃を受けた気がする。


    いや、分かるのよ、気づくの遅すぎるって。

    「私が、文化的なことに理解を務めようとしても、それは結局猿真似に過ぎない。」
    「猿が人間の真似しようとしてるに過ぎない。」
    「お前は地球が裏返っても、『リアル』にはなれない。」

     

     じゃあ、どう生きるのか。


     やはり、手の届く範囲のものを、手に届く範囲で、慈しむことしかできないのだろう。


     自分から、価値の転換を求めて、あれやこれや画策し、行動するのは、どうも身の丈に合わない。

     私は、この本でいう「強い現実」に、自分の足場を固めていたい。

     でもそれと同時に、自由でありたい。


     わたしはそのわがままな意思を貫こうと、今までもがき苦しんできました。いや、今でももがいています。


     どうやら、強い現実に身を置いていたければ、「自由」であることは諦めなさいよ。


     そう言われているみたいで。


     できそうな気がするんですが、集団の価値はそれを認めないというか。「俺が、私が諦めたもん、あんたは両方手に入れようったって、そうはさせない。」という圧力に引っ張られるようです。


     だから、しばし日本を離れる選択をしたのですが。

     やはりわたしはわがままなのかもしれませんね。

     ここまで自由を求める人間んであるとなると、

     わたしは余程、(日本にとって)変な人間であるはずです。でもそれが悪いだなんて、つゆほども思いません。

     自由であることって、なんなのでしょうね。

     責任を負わないことでしょうか。

     それだけでは、ない気がします。

     自分が大切にしている価値を、守れる、ということではないかと思います。

     でも、その価値が、「自分」であればあるほど、「集団の価値」から離れれば離れるほど、「我が強い」「面倒くさい」人間となり、孤立する。

     「それ、当然でしょ?」?

     本当に?

     
     随分と、わたしは西洋化された思想の持主らしいが、(本人はそう思ってませんが)
     この時代において、日本人もまた、全然考え方が西洋化してないんですよね。きっと。

     どちらでもいいんです。そんなこと。


     自分と、自分の周りを、慈しむことができるように、
     自分じゃなくて、もっと大きな流れを見据えて生きることができるように、生きていきます。


     私は、自分が嫌だと思うことを、しないで生きます。
     それと同時に、人のために、生きていきます。


     矛盾してますか。できると思うのです。

     でもそれが、とても難しい気がするのです。
     

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街場の戦争論 (シリーズ 22世紀を生きる)の作品紹介

日本はなぜ、「戦争のできる国」に
なろうとしているのか?

安倍政権の政策、完全予測!

全国民の不安を緩和する、「想像力の使い方」。

シリーズ22世紀を生きる第四弾!!

改憲、特定秘密保護法、集団的自衛権、グローバリズム、就職活動……。
「みんながいつも同じ枠組みで賛否を論じていること」を、別の視座から見ると、
まったく別の景色が見えてくる!
現代の窒息感を解放する、全国民必読の快著。

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