うしろめたさの人類学

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著者 : 松村圭一郎
  • ミシマ社 (2017年9月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908984

うしろめたさの人類学の感想・レビュー・書評

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  • 2017.12.20 読了
    冒頭の病を持つ方や、繰り返しでてくる物乞いの描写にどきっとした。
    「知識」として、そういった方がいることはわかっていても、同じように生活していることからは目を背けてきたし、社会構造として見えないようにされてきた。
    普段は見ないようにしてきたせいで、突然目の前に現れると、どういった行動をすべきなのか、自分はどう対応したいのか、わからなくなるときがある。
    それが私の中のうしろめたさで、つながりを構築できる手掛かりなのかなと思った。
    劇的な救いにはならなくても、そのつながりによって生きていけることもあるんだと知った。

  • ”世の中どこかおかしい。なんだか窮屈だ。そう感じる人は多いと思う。でも、どうしたらなにかが変わるのか、どこから手をつけたらいいのか、さっぱりわからない”
    ーーー本書 P.8 はじめに より引用
    冒頭の書き出しから、ぐっと引き込まれる。
    松村氏自身のエチオピア滞在記を交えて考察を進めており、あたかも自分が現場にいるかのような臨場感を味わえます。
    *
    本書のキーワードである、”うしろめたさ”とは何か。
    バレンタインは、”気持ち”のこもったものだから、お返しをする。一方で、マック店員のスマイルは、感情のない社交辞令だから、無言・無表情で対応する。
    何かしらの線引きをして、何事もgive&take、交換経済で考える日本の価値観。
    一方で、エチオピア人は、物乞いに喜んで物をあげる。彼らの経済は、贈与のしくみで回っている。
    ”うしろめたさ”とは、そうした線引きに囚われて、行動しない己への感情をさす。
    松村氏は、”うしろめたさ”をキーワードに、日本での人間関係の捉え方や社会にはどんな線引きが存在するのか、その枠を越えてつながりを取り戻すにはどうしたらいいのか?を考察しています。
    *
    内容はやや専門的ではあるものの、臨場感あふれる文章で、時々引っかかるところもあり、面白い本。
    日々モヤモヤを抱えて生きる人、何かおかしいと思いながらも、何を変えたらいいのかわからない人にオススメの1冊です。

  • 世の中どこかおかしい。息苦しい。生きづらい。
    そんなふうに感じる人は多いのに、でも、それを変えられずに、国家や市場といった巨大なシステムを前に立ち尽くしている。

    社会の格差を是正したり、公平さを回復したりすることは国の仕事だとされている。
    個人や企業は市場で稼ぎ、国は税金をとって再分配を行なう。世の中はそうして回っているのだと。
    だから自分には直接関係ない、何もできない、と考えてしまう。

    知らず知らずに色々な理由をつけて不均衡を正当化していないか?
    ぼくらの中にわきあがる「うしろめたさ」の感情をエネルギーにしたい。
    ぼくらの中には、公平さへの欲求が眠っている。

    最貧国・エチオピアと日本を行き来する文化人類学者の著者の手によって、目を開かれる。
    市場(商品交換)、社会(贈与)、国家(再分配)の境界は、ぼくらひとりひとりの手で引き直せる。きっと。

    説明に「バレンタインデーのチョコレート」がたくさん登場したけれど、いまの時期なら「クリスマスプレゼント」だろうな。

    A very Merry Xmas
    And a happy New Year
    Let’s hope it’s a good one
    Without any fear...

  • 請求記号:389/Mat
    資料ID:50088707
    配架場所:図書館1階東館 め・く~る

  • 経済社会の常識が身に沁み付いていて、腑に落ちないモヤモヤに苛まれることがよくある。
    それを解きほぐして、この「ズレ」に光をあてる構築人類学。別世界のフィールドワークが私自身の感覚にまで踏み込んで来て嬉しい。
    「世界」は「社会」を越えた向こう側にあるのではなく、私の生活そのもの。自然と引かれたように見える境界線の中で安全に暮らしていては、何も動かせない。越境せよと迫られる。

  • 著者とはほぼ同年代。構築人類学者である著者は、自身の大学時代からのフィールドワークであるエチオピアでの経験から、経済(贈与・交換)、感情、関係性、国家、市場と丹念に議論を構築していく。多様性が謳われる現代で、一方で各々が否が応でも向き合うことになる「生まれながらならの不平等」に対して、人は本能的に公平さというバランスを取り戻すことを求める。その原動力になる感情こそが「うしろめたさ」である。

    いじめに対する無関心(を装うこと)、大震災を前にした同情と(自分が当事者にならなかったことに対する)安堵、我々はうしろめたさを隠して日常をやり過ごしているだけかもしれない。これは、私自身の個人的な経験としても感じることである。
     自分は、幸運にも資格を得て仕事を得ている。それはしかし、自分でなくてもできる仕事ではないか。いったい、仕事における自分のアイデンティティとは何なんだろうか?みんな青臭い悩みの中で、そこそこに仕事を覚え、安定し、悩みそのものを忘れていく。

     常に悩み続けること、そして自分の得た財産を贈与していくこと、そういう輪を広げて行きたくなるポジティブな1冊であった。

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うしろめたさの人類学の作品紹介

市場、国家、社会…
断絶した世界が、「つながり」を取り戻す。

その可能性を、「構築人類学」という新たな学問手法で追求。
強固な制度のなかにスキマをつくる力は、「うしろめたさ」にある!
「批判」ではなく「再構築」をすることで、新たな時代の可能性が生まれる。

京都大学総長・山極壽一氏推薦!


世の中どこかおかしい。なんだか窮屈だ。そう感じる人は多いと思う。でも、どうしたらなにかが変わるのか、どこから手をつけたらいいのか、さっぱりわからない。国家とか、市場とか、巨大なシステムを前に、ただ立ちつくすしかないのか。(略)この本では、ぼくらの生きる世界がどうやって成り立っているのか、その見取り図を描きながら、その「もやもや」に向き合ってみようと思う。
――「はじめに」より

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