フィンランド・森の精霊と旅をする - Tree People (トゥリー・ピープル) -
- プロダクション・エイシア (2009年5月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903971018
感想・レビュー・書評
-
「フィンランド」タグで見つけたこの本。
熊と抱き合う女性の表紙が印象深い。(彼の国には、熊と結婚する人間の女性の神話があるそうだ)
フィンランドといえば、森と湖の国。最近では、知名度も上がったようで、日本から一番近いEUの国、という肩書もできた。
日本でも「ご神木」と呼び、敬う対象の樹がある。
フィンランドにも似たような風習が息づいているそうだ。
異文化との交わりのさなかに、数は減ったそうだが、
各家庭に「守護の木」、個々人に「分身の木」があった時代もあるという。
その家で人が亡くなると、庭に生えている守護の木(おもに松)の表皮を削り、故人のイニシャルと没年月日を刻みこむ風習。
年月を経て、松脂が徐々に傷を埋めるように削られた表皮を覆いはじめ、刻まれた日付とイニシャルがいつの日か飲みこまれる様は、自然へ還っていく象徴のようで、厳かな気持ちになった。
話は変わるけれど、この本に添付されていた読者カードで、フィンランドで最も人気のあるアカペラグループ、Rajatonのことを知った。
動画サイトで観てみたが、ああ、確かに森のひっそりとした雰囲気に良く映える歌声。
この本を読みながら聴いていると、緑の中に吸い込まれて浄化されるようだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
20140623読了。
自然に対する畏怖と敬意を存分に感じられる本。
巨木を見ると神を感じるが、それと近い感覚の分身の木。
思い出の木に生没年を刻み、そして、ゆっくりとその木に覆い尽くされていく『キルシッコ』の風習。
デザインの国、高福祉の国として有名なフィンランドだが、自然とともに生きることが一番底にあった。 -
人間と樹の関係を、例えば「持続可能性」という観点から、捉えなおすことももちろん重要ではあるのだけれど、
もっと大きな意味での「記憶」であったりとか、文化的な物語から、
人間の中に畏怖であるとか、羨望であるとかいうものを呼び起こせたのなら、
世界は大きく変わっていくのだろうなぁ。
今の社会を成立させているのは、
勿論欲望の肥大、安楽さの希求ではあるのだけれど、
その皮をもう一枚剥がして見えるのは、
自然への畏怖の欠如であり、
それはつまるところ人間の「生」の軽視なのだろう。
○
かつて人びとの信仰を集めた樹木が、
まだここ、私たちの森の中に生きています。
古代には、「寺院」とされていた場所です。
神殿は、大理石ではない、黄金でもない、ただ、裸の空の下でふるえる木々。
そこでは、自然の神秘のささやきをいまも感じることができるのです。
森は、はかりしれないほど豊かで多彩な物語に満ちています。
○
精霊たちの暮らす森は、人の属さない領域です。
森の精霊たちのとりなしがあってはじめて、人は森の許しを受け、森と接することができます。森の恵みを得るために、人は境界を渡って森へわけいります。敬意をもって、森を傷つけないように細心の注意を払いながら。
○
父さんは50歳の若さで亡くなった。春の種まきの季節に、父さんとふたりでカルシッコの木の横を通りかかったとき、大きな枝が折れて別の根の付け根にぶら下がっているのを見てどんなに驚いたことだろう。どう説明していいのかわからない光景だった。風はまったくなかったし、折れた枝はいたって生き生きとしていた。その年の8月、父さんは突然亡くなった。動物はあらゆる種類のことを敏感に察知することができる。いったい木はどうなのだろう。
○
死後 人生の記憶をとどめるため 名前と生きた時間が刻まれる松の木 人びとの思い出は やがて木々の生命力の中に包まれていく
○
当時、森の重要性についてはたえずさまざまなメディアが強調していましたが、どれも経済的な効果や、エコロジカルな視点ばかりでした。森の文化的、精神的な側面は、議論からいつも抜け落ちていました。
○
私たちのプロジェクトがきっかけになって、木と人とのスピリチュアルな関係、その歴史や神話が、学校の教材として扱われるようになりました。
○ -
分身の木。そして、いずれまた木に取り込まれるカルシッコ。ゆつくり眺めながら読むのがオススメ。
-
森と湖の国フィンランドで〝もっとも美しい本〟賞に選ばれた本です。
2人の女性写真家が、15年の歳月をかけて、フィンランド各地の森を訪ねて、森と人との関係を幻想的な写真におさめました。古くから語り継がれてきた神話や詩も、人と自然の関わりを美しく物語っています。
自然を敬い畏れる心が、文明や経済の名のもとに失われていくのは、遠い祖先から受け継がれてきたはずの文化や精神を否定するようで、とても悲しいことですネ。 -
知ってるようで知らない北欧、フィンランドのこと。美しい写真を堪能しながら学びました。パラパラ眺めてるだけで楽しい一冊。
-
『カルシッコ』というしきたりが印象的だった。時が経つにつれて刻まれた文字は樹皮に覆い隠される。
-
ゆっくり読み途中。
フィンランドの「美しい本」に選ばれた写真集の和訳本。
随分再編集されているようだが、おかげでぐっと手軽に・・・。
森を通して、フィンランドの人々の自然との関係が
わかるような本。
写真がきれい。