湯浅泰雄全集 第13巻 日本哲学・思想史 4

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  • ビイング・ネット・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (577ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904117026

作品紹介・あらすじ

「和辻哲郎の視角」から「和辻哲郎 近代日本哲学の運命」の執筆に至る8年間は、湯浅泰雄が日本思想史、ユング心理学、身体論の三つにわたる学際的研究を行い、湯浅哲学の基礎を固めた時期にあたる。本書に集められた和辻論はその研究成果である。

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  • 『和辻哲郎―近代日本哲学の運命』(ミネルヴァ書房、ちくま学芸文庫)のほか、和辻にかんする論考等8編を収録しています。

    『和辻哲郎―近代日本哲学の運命』は、日本を代表する倫理学者として知られる和辻哲郎の生涯と思想を包括的に論じた本です。著者は、和辻の思想の特徴と限界をきわめて冷静な眼で見きわめ、その思想を日本近代思想史の内に明確に位置づけています。

    著者は、非西洋国家が近代化に向けて国民意識を統合するにさいして、民族の文化的伝統に訴える手段をとる例が多く見られると述べています。そうした政治的現実のなかでは、自国の文化の価値と特殊性を強調する「文化的ナショナリズム」は、「政治的ナショナリズム」に利用されることになります。そして著者は、和辻が個人的には極端な国粋主義に嫌悪を表明していたにもかかわらず、彼の「文化ナショナリズム」の立場も「政治的ナショナリズム」へと取り込まれてしまったことを明らかにします。

    また著者は、非西洋国家の知識人の多くが、自国文化とヨーロッパ文化を対比するという思考パターンを示していることに触れています。彼らの学問的教養の多くは西洋文化であり、その精神的態度は欧米志向が強いと著者はいいます。日本が近代化していく過程にもこうした傾向は見られ、和辻も『風土』において他のアジア諸国の文化にほとんど注意を払っておらず、「ヨーロッパ対日本」という狭い図式の中で議論を展開していました。

    ただし著者は、こうした理由をあげて和辻を断罪しているのではありません。近代日本国家が形成されつつある時代に生きた和辻という人物の思想の変遷を、ある近代日本の知性がたどった軌跡としてえがいています。

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著者プロフィール

925年福岡生まれ。東京大学文学部、経済学部卒。東京大学文学部助手を経て、山梨大学教授、大阪大学教授、筑波大学教授、桜美林大学教授を歴任。79年度インドネシア大学客員教授、87年、北京日本学センター客員教授。91年人体科学会を創設。主な著書に『近代日本の哲学と実在思想』『日本人の宗教意識』『ユングとキリスト教』『身体論』など多数。

「2013年 『湯浅泰雄全集 補巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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