電通 洗脳広告代理店

著者 :
  • サイゾー
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904209196

感想・レビュー・書評

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  • エキセントリックなルックスから、色モノ的に見られがちな著者であるが、権力支配、メディア支配に対する高い問題意識を持った硬派な思想の持ち主である事が分かる。

    本書を読んだ事の最大の収穫は、哲学者・心理学者のミシェル・フーコーによる、バイオパワー(生一権力)という概念を知ったことだろう。フーコーの「監獄の誕生」という著書の中で、提唱された概念であり、”監視されているという暗黙のプレッシャーによって、囚人は実際には監視されていなくても監視されているかの如く振る舞う”現象である。監視されているというプレッシャーが、模範的な行動を促すということだ。本書のテーマである電通という広告代理店を通じたメディア支配の本質は、そうした業界内にある暗黙のバイオパワーによってもたらされており、誰か特定の個人や集団の意思によって直接的になされているものではないということだ。

    この概念は、戦時の日本に醸造された国民一丸となった戦争協力の空気が説明できるであろう。憲兵による監視というプレシャーで、国民の本来の意思とは裏腹に、徴兵の赤紙を受け取るとバンザイをし、それに対して賛同しなければ非国民のレッテルを貼られていた当時の空気は、正にバイオパワーであろう。更に古く遡れば、豊臣秀吉時代の五人組制度や、村八分などといった地域社会的慣習も、バイオパワーという概念で説明がつく。

    本書の中で、電通の歴史を紐解くくだりで、戦後のGHQ、CIAとの関わりが大胆な仮説を元に提示されている。
    敗戦後のGHQによる、WGIP(War Guilt Information Program)によって、敗戦は日本の指導者が誤った選択をした結果であり、米国は悪くないという価値観が日本人に植え付けられたということだ。そして、電通がこのプログラムの遂行に大きな役割を果たしたということだ。あながち、否定できる話でもないだろう。一方、書中、アメリカのメディア支配の陰謀的な話が出てくるが、このへんは少し眉唾もののような気がする。オバマ大統領が、ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズなどのアメリカの主要IT企業のTOPを食事に招待したという話が、アメリカの外交的覇権についての協力を求めたという話は飛躍しすぎであろう。上場企業であるそうした会社のTOPをそれだけの大人数を集めて、国家の利権について協力を求め、それを全員が快諾するなどという発想はかなりの暴論だ。経済学的な、企業と個人のインセンティブを考えると機能するとは考えにくい。こうした話も混ざるから、本書や著者が胡散臭く感じるのであろう。

    一方、本書の主題である電通が、監査役に、元大臣、公正取引委員会、銀行役員をそれぞれ迎え入れているという指摘がある。政治、行政、金融の分野からの人脈を確保し、うまく通ずるというしたたかな戦略である。この程度の事は、実際どの大手企業もやっていることであろう。

    電通のメディア支配構造は多かれ少なかれあると思われるが、冒頭に指摘されている通り、何らかの意思があるものではなく、バイオパワーによって暗黙の元に存在する掴みどころない空気のようなものなのであろう。著者が巻末で提唱しているように、電通の分割、メディアの代理と広告主の代理を禁止するなどという政治、立法的な解決策が、こうした状況を変えるであろうが、実現は著者も指摘しているように簡単ではないだろう。

  • エキセントリックなルックスから、色モノ的に見られがちな著者であるが、権力支配、メディア支配に対する高い問題意識を持った硬派な思想の持ち主である事が分かる。

    本書を読んだ事の最大の収穫は、哲学者・心理学者のミシェル・フーコーによる、バイオパワー(生一権力)という概念を知ったことだろう。フーコーの「監獄の誕生」という著書の中で、提唱された概念であり、”監視されているという暗黙のプレッシャーによって、囚人は実際には監視されていなくても監視されているかの如く振る舞う”現象である。監視されているというプレッシャーが、模範的な行動を促すということだ。本書のテーマである、電通という広告代理店を通じたメディア支配の本質は、そうした業界内にある暗黙のバイオパワーによってもたらされており、誰か特定の個人や集団の意思によって直接的になされているものではないということだ。

    この概念は、戦時の日本に醸造された国民一眼となった戦争協力の空気が説明できるであろう。憲兵による監視というプレシャーで、国民の本来の意思とは裏腹に、徴兵の赤紙を受け取るとバンザイをし、それに対して賛同しなければ非国民のレッテルを貼られていた当時の空気は、正にバイオパワーであろう。更に古く遡れば、豊臣秀吉時代の五人組制度や、村八分などといった地域社会的慣習も、バイオパワーという概念で説明がつく。

    本書の中で、電通の歴史を紐解くくだりで、戦後のGHQ、CIAとの関わりが大胆な仮説を元に提示されている。
    敗戦後のGHQによる、WGIP(War Guilt Information Program)によって、敗戦は日本の指導者が誤った選択をした結果であり、米国は悪くないという価値観が日本人に植え付けられたということだ。そして、電通がこのプログラムの遂行に大きな役割を果たしたということだ。あながち、否定できる話でもないだろう。一方、書中、アメリカのメディア支配の陰謀的な話が出てくるが、このへんは少し眉唾もののような気がする。オバマ大統領が、ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズなどのアメリカの主要IT企業のTOPを食事に招待したという話が、アメリカの外交的覇権についての協力を求めたという話は飛躍しすぎであろう。上場企業であるそうした会社のTOPをそれだけの大人数を集めて、国家の利権について協力を求め、それを全員が快諾するなどという発想は、かなりの暴論だ。経済学的な、企業と個人のインセンティブを考えると機能するとは考えにくい。こうした話も混ざるから、本書や著者が胡散臭く感じるのであろう。

    一方、本書の主役である電通であるが、監査役に、元大臣、公正取引委員会、銀行役員をそれぞれ迎え入れているという指摘がある。政治、行政、金融の分野からの人脈を確保し、うまく通ずるというしたたかな戦略である。この程度の事は、実際どの大手企業もやっていることであろう。

    電通のメディア支配構造は多かれ少なかれあると思われるが、冒頭に指摘されている通り、何らかの意思があるものではなく、バイオパワーによって暗黙の元に存在する掴みどころない空気のようなものなのであろう。著者が巻末で提唱しているように、電通の分割、メディアの代理と広告主の代理を禁止するなどという政治、立法的な解決策が、こうした状況を変えるであろうが、実現は著者も指摘しているように簡単ではないだろう。

  • 著者の本は何冊か読んでいるが、脳科学者やプログラマーとしての洗脳に関してが専門であり、電脳の洗脳効果についての記述はよいと思う。しかし、電通の歴史的な検証は、やはり門外漢で社会部などの方がいいかなと思った。

    例えば、~と思うとかの表現が多用しされていたり、新聞記事などから(深読みしてしまうと)陰謀論的な記述で、GHQなどの関係を邪推した上で、最後の判断は読者に任せるというのはどうかなと思った。

    ただ読み物としては、電通の広告業界(特にテレビ業界)での影響がきわめて大きいこと、多くの圧力をかけられること、歴史的に時の権力者や韓国との関係などは知っておいて損はないことだった。

  • ■書名

    書名:電通 洗脳広告代理店
    著者:苫米地英人

    ■概要

    東日本大震災の報道によって露になった、広告主(スポンサー企業)
    とメディア、そして広告代理店の癒着構造。この構造を作り上げ、
    独占的に支配する巨大広告代理店・電通のメディア洗脳戦略を暴き出す。
    (From amazon)

    ■感想

    まあ、よくここまで言ったものだというのが第一感想ですね。
    この人、今後2-3年の間にメディアから消えるだろうね。間違いなく。
    この世から消されなければいいけど。
    既に色々な本屋、流通に電通から規制がかかっているようで、どん
    どんこの本を置かなくなってきているようです。
    (それとも売れているのかな?amazonにも圧力がかかっているみた
    いだしよく分からないですが。)

    最近のテレビのくだらなさにうんざりしてほとんどみておらず、か
    つ、テレビの内容を全く信じていない私にとっては、ほぼ全てに賛
    成できる内容でした。

    なんで、みんなテレビで言っている事を真実と思って信じる事が
    出来るのか、理解できません。
    「テレビで言ってたよ」というのを聞くと、だから何?と絶対に
    思ってしまう。

    ただ、この本を取り違えていけないのは、電通を解体しろとは言って
    いるが、実際には電通を解体することに長期的な意味はなく、日本
    のメディアの仕組みを変えるべきだといっています。
    (仕組みが変わらず、第2の電通が出てきたら何も変わりませんから。)

    また、変える方法として、個人個人が出来る事も提唱しています。
    私も個人個人で出来る事はその通りだと思います。

    日本人は、自分の頭で考えなさすぎで、メディアを信じすぎです。

    個人個人が、情報を吟味して、疑問を持ち、自分で答えを出す事が
    出来るようにならないといけないと思います。

    勿論、この本自体も100%の正しい事を言っているわけではないと
    思いますが、こういう考え方、出来事もあるという事は理解しておく
    べきだと思います。

    まあ、インターネットが出てきてからのテレビの報道のひどさは、
    この本の正当性を示していると思いますけどね。

    インターネットで話題になっていてもテレビ、新聞で一切報道され
    ないことは多々あるが、逆は無いですからね。
    それだけで、テレビに報道の圧力が電通からかかっているのは明らか
    でしょう。

    まあ、今後はインターネットも牛耳られていくのでしょうが・・・

    最後に、この著者は電通をかばっている部分もありますが、実際に
    甘い蜜を吸っている今のクズじじいどもをかばう必要は皆無でしょう。
    (創設当時の電通をかばうのは少し分かります。)


    あ、この本は、近いうちに絶版になると思います。

    ■気になった点

    ・「東京電力は、様々なメディアの大スポンサーだから」 
     こう考えれば、東電の記者会見で罵倒を浴びせていたのは、
     フリーの記者だけという説明がつく。

    ・テレビの内容はスポンサーを都合のいいようにいつでも書き換え
     ることが出来る。

    ・どの主張にも、何かしらの意図がその裏に隠されていることに
     気がつかなければならない。

    ・どれが洗脳番組か分からない以上、全てのものが洗脳番組だと
     疑ってかかる必要がある。

    ・「無難にこなしている」というのは「何もしていない」のと大差
     はない。

    ・電通に都合が悪いことは、事実であっても、話の展開上不可欠な
     内容であっても放送することができないのだ。

    ・電通にやましいことがないのなら、視聴率算出のためのデータを
     透明にして出すことが出来るはずである。

    ・なぜ、軍や産業界から予算がついたのか。もちろん軍であれば「
     国防に役立ちそうだから」産業界であれば「ビジネスになりそう
     だから」である。

     つまり、多くの人が考えている「最先端テクノロジー」とは、
     「国防的においしいテクノロジーであり、今後ビジネスになり
     そうな技術」なのである。

     アメリカにとって、国防になりそうなもの、ビジネスになりそう
     なものこそが最先端技術となるのである。

    ・相手の主張に対して瞬時に反論を5つ考えることが出来れば、コン
     テンツを疑う事がある程度出来るようになったと判断できる。

    ・まずは疑ってかかること。それがメディアの支配から逃れる第一歩
     である。

    ・権力というのは、一般市民の権利を抑え込む事で得るものである。

    ・法律とは、国家権力が一般市民の権利を制限するものである。
     国民が国家権力を制限するものが憲法なのである。

    ・監視されているなら監視できないくらい数を増やそう。

  • 広告だけに収入を頼ると、お金を出す人に逆らえないという構造が危ないと感じた。

  • メディアと広告代理店との関係が書かれ、その構造上の問題点が指摘されている。状況証拠や歴史的事実に基づく考察などで論理展開がなされており、真実味を帯びていた。タブーと言われる電通批判を著した苫米地氏や出版社であるサイゾーの度量の大きさが分かる本。

  • 普段、気にしなかった点が一気に疑問に感じてくる。「電波に税金がかからない」「独禁法に引っかからない」「電通と国とGHQの繋がり」。そういえば、森永製菓社長の娘である安倍総理夫人は大学卒業後、電通に入社してる。このあたりも闇の事情がプンプンしますが。
    もちろん信じるか信じないかはあなた次第です。

  • ユダヤ陰謀論では、よくソ連が人民支配の実験であったかのように言われているが、もしかしたらそれは、日本で今、まさにそこへ向かっているように思えてならない、そんな印象を抱く恐ろしい内容の本です。

  •  洗脳広告代理店 電通 !と大上段に構えていますが、本書前半ではテレビが洗脳装置としての威力が絶大である事実とそれを利用しようと(してきた)勢力について、メディアが中立では無い事とそうなる理由、戦後GHQがWGIPを推進する上で電通が大いに利用されている(推測ベースで、電通がアメリカに利用される企業に至るまでの経緯を、いくつかの事実を基に想像力逞しく推理していく過程は説得力はあります。しかし推測の域を出ません。)と考えられる話、等が紹介・記述されています。

     一方、本書後半になると、電通が広告代理店としては独占企業状態にある事実の提示と、この状況がいかに異常で危険かを切々と訴え、どうあるべきがよいか、個々人として出来る事、またどのように対策をたてていけばいいか等、著者の見解・提案が開陳されています。提案の主だったところを掻い摘んで言うと、電通の寡占状態の解消に向けての提案は「独占禁止法」「放送法」を根拠に違法性を訴える事、また「比較広告」を勧めています。「比較広告」とは同業の異なる2社の商品の優劣を提示して、わが社のほうが優れているという点を主張する手法の商品広告のことを言いますが、これは一社の広告代理店が2社の広告を請け負った時に「劣」扱いされる側が出てくる事態になる(すなわち広告代理店の独占状態が難しくなる広告手法)からです。

     個々人の「洗脳広告」に対する防御策としては、基本的には「鵜呑みにするな」、「メディアからの情報は批判的に接し、反論を自分の頭で考えながら接する」、「論理的に」・「根拠を求めて」・最後は自分の頭で考える。に尽きると思います。また、ツイッターでの有名人のつぶやきは、中にはステマに該当するものも含まれている可能性が否定できない、基本的に著名人のつぶやきは全部疑え!というのが著者の主張です。

     本書には電通やメディアに関する何か特別新しい情報が記載されているわけではありませんが、マスコミの偏向報道が話題になることが多い昨今、マスコミの情報の性質、広告代理店が何をやっていて、どういう位置づけにある存在なのか? あたりを整理して理解するには最適だと思います。

    ps 本書83Pに、森田実氏が「電通に干された」為にテレビ出演しなくなった旨が記述されているのですが、その理由が以下です。
    http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03008.HTML

  • 患者様からお借りした本。彼女はTV もネットも見ず、マイペースで地に足がついてる。電通さんはそんな人が一番苦手なんだろうな。

著者プロフィール

認知科学者(計算言語学・認知心理学・機能脳科学・離散数理科学・分析哲学)。
カーネギーメロン大学博士( Ph.D)、同 CyLab フェロー、ジョージメイソン大学C4I&サイバー研究所研究教授、公益社団法人日本ジャーナリスト協会代表理事、日本外交政策学会会長、コグニティブリサーチラボ株式会社CEO 兼基礎研究所長。マサチューセッツ大学を経て上智大学外国語学部英語学科卒業後、三菱地所へ入社、財務担当者としてロックフェラーセンター買収等を経験、三菱地所在籍のままフルブライト全額給付特待生としてイェール大学大学院計算機科学博士課程に留学、人工知能の父と呼ばれるロジャー・シャンクに学ぶ。同認知科学研究所、同人工知能研究所を経て、コンピュータ科学と人工知能の世界最高峰カーネギーメロン大学大学院博士課程に転入。計算機科学部機械翻訳研究所(現 Language Technologies Institute)等に在籍し、人工知能、自然言語処理、ニューラルネットワーク等を研究、全米で4人目、日本人として初の計算言語学の博士号を取得。帰国後、徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、同ピッツバーグ研究所取締役、通商産業省情報処理振興審議会専門委員、早稲田大学研究院客員教授などを歴任。また、晩年のルー・タイスの右腕として活動、ルー・タイスの指示により米国認知科学の研究成果を盛り込んだ最新の能力開発プログラム「 TPIE」、「 PX2」、「 TICE」コーチングなどの開発を担当。その後、全世界での普及にルー・タイスと共に活動。現在もルー・タイスの遺言によりコーチング普及及び後継者として全世界で活動中。一般財団法人サヴォイア王家諸騎士団日本代表、聖マウリツィオ・ラザロ騎士団大十字騎士。近年では、サヴォイア王家によるジュニアナイト養成コーチングプログラムも開発。日本でも完全無償のボランティアプログラムとして「PX2」と並行して普及活動中。

「2023年 『新・夢が勝手にかなう手帳 2023年度版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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