- Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904292624
作品紹介・あらすじ
二つの街を行き来する百物語、遂に出口へ。その先で何を見たの?50写真!一話完結50小説!
感想・レビュー・書評
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九十八太郎「寝ずの番」は、舞城らしいスピード感満載のお話で、読んで脳内で想像する間もなく手が頁を繰ってしまうから、何度読み返したことか!
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個人的には『入口』のほうが好みだったけど、ラストの百太郎『ワタシシ死』には自分の一番ダメなところを見透かされたようで心臓抉られしばし呆然。舞城さん、あなたは読者を透視できるのですか?というか、舞城さん、あなた男性じゃなくて、おかあさんなの?
血まみれのヒーローが霊的な存在に立ち向かう『入口』とくらべて、『出口』は「軽いノリで霊的な存在にセッションをしかけると、とんでもない目に遭うよ」っていう寓話めいたお話が多かったかな。印象に残ったのは、六十一太郎『カラスの神』、六十三太郎『車内放置ワゴン』、六十五太郎『うろうろ息子』など。九十三太郎『花火の帰り道』は正統派の怪談でかなり怖くてこういうのほんと好き。 -
100作品も舞城王太郎を味わえるというなんとも贅沢な短編集だった。
意味がわかると怖い話的なひねりはない。ホラー小説ではあまり見かけないような一風変わった落とし所のお話も多いが、どれも素直な語り口になっている。
100作品も読むとだんだん舞城王太郎のホラー小説観が見えてくるような気もして、「あなたはあなたなのか?私は私なのか?」といった人間の同一性をテーマにした作品がとても多い。さらに、「ソレはあなたではなかったけれど、それでもあなたとの関係が不可逆に変化してしまう」という話が多い。また、「私は"私"ではなかったけれど感情は偽れない」といった話も多い。それはつまり、「人間と非人間の境界線は"想い"の前には揺らいでしまう」といったテーマとしてまとめることも出来るはずだ。そういった観点から見るとホラーという舞台であっても、いつもの舞城とブレない一貫した関心が潜んでいるようにも思われる。
ホラーとしてもしっかり怖いが、そういった作家性の強さもあり後半はどうしても似通った話が多くなってくる。したがって、「沢山のお話を通して、舞城のことをもっと知りたい!」という舞城のファン向けの短編集の側面もややあるかなと思う。 -
武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000247810
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幽霊や不可解な出来事は寓話的に読めるけど、人の悪意が加わった怪談は怖い。
次の瞬間、目の前の人が違う人格になっていたりするのかもね。 -
913
学生選書 -
百物語。50日間毎日連載しただと?
このクオリティの短編を???
やはり、この作家はキチガイだ。 -
『入口』は手元にあるが、『出口』は図書館で借りたので先に読了。
やっぱり、私は舞城王太郎が描く世界が好きだと胸を張る。
本当に短いお話が50話。どれもこれも短い話に広がりがあり、
悲しみも怖さも愛もじわーっと心の深いところに
染みわたっていく感じが良い。
私にとって、これは手元に常においておくべき本だな。と。
ただのホラー短編集では無いなと。
愛する人を守るとか、家族を守るとか、こんな言葉にすると陳腐だけど
舞城王太郎の世界の底辺、根っこではないのかしら。
まあ、まだ2冊しか読んでいないけれど。 -
軽妙な語り口と不条理具合、人が怖い系は少なめの「入口」を引き継ぎながら、入り口よりはやや明るい話が多かった印象。「友達案山子」が好み。
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出口を先に読んだのだが読み終わる頃に体調を崩した。きつい。
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上巻下巻通じて、不条理な絶望が蔓延している。
一太郎(一話目)と百太郎(百話目)の繋がりは、
一見、円環を為すようでいて、その実、どこにも着地しない。
せめて恐怖にも理由があれば読者は安心できるのに、
そう簡単に解放してはくれない。
世界は閉じず野放図に広がっていく。
しかしそれはたとえば、九十太郎『友達案山子』や九十一太郎『迷子の守護者』において
(いつもの舞城よりは少し控えめに)
歌い上げられる人間存在の美しさも同様で、
つまり不条理さにも、美しさにも終わりはなく、
人は生きている限り、それに付き合うしかないということなのかもしれない。
出口の先にはすぐに別の入り口がある。
そしてそれでいいと、
きっとそういうことなのだろうと思う。
百もの恐怖小説の短々編が続くのに、
妙に静かな読後感が漂うような不思議な作品。 -
『負けないで、だ。
負けないで。頑張って。
私がついているから、泣かないで。頑張って。』
『私の彼が死んだのだ、今。それを知らせる私の声を聴いて欲しい。彼がどんなに美しい男の子だったか、私には教える方法がないけれど、この声の大きさが私の愛だ。』
『私は私の母乳に意識と気持ちと全身全霊を込める。私という暗い気持ちを抱えた、駄目なところも嫌なところもある人間の、その全ての邪な部分が白い母乳を黒く染めますように。そしてその乳を吸う無垢な赤ん坊がぶち壊れて、他人の乳を奪うクソ母親に報いがありすよう。
母親の愛情と同じようにわ恨みだって乳を伝うはずだ。』
『俺は阿呆だが、阿呆さのおかげで救われることもある。』
『人は優しく、困難には救いがあり、綺麗な女の人たちは親切で、世界は温かい。』 -
五十一太郎、五十九太郎、六十一太郎、六十七太郎、七十太郎、七十三太郎、七十四太郎、八十二太郎が面白い。宮部氏のお勧めとかぶったり、ずれていたり。それもまた面白い。
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面白い。
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舞城版百物語、その下巻。面白かった。優しさも憎しみもないまぜの感情が描かれていて、そういういろんな感情の境界のなさみたいなものを、分けてとらえるんじゃなくて、境界のないままの姿で受け容れるような描写が好きだ。その部分もそうだし、あまり意識していなかったけれど、同時期に発売された「淵の王」と明らかにテーマ的な連関を意識して書かれているようなエピソードもあった。あと○○○○○も。それも読まないとだ。
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超短編の怪奇小説100話の後半50話。海外の小説のお化け、例えばキングの小説のものなんかだと、人とは異なるモノ、という印象がぬぐえないが、本書のお化けたちは、私たちの身近にいるもの、人が姿を変えたもの、ひょっとして身近でも起こりうるようなことといった既視感を感じた。淡々とした作品、ぞっとする作品から、ホッとして終わるものから救いのないものまで。多様で飽きずに読めた。ただ一つ、私の読解力がおそらく足りないのだろう、九十九太郎だけ落ちが読み解けなかった。誰かほかのレビュアーの方、ネタバレでもよいので教えてください。気になって気になって(w)
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入口より好みかも。「保留中の電話」で思わず涙腺緩んでしまいました。また母は強い系の話が多い印象が強かったです。最後の話で壊されますが。入口に比べほっこりや笑える話が多い気がします。「寝ずの番」のスピード感にははらはら。ひとりで書かれているとは思えない多彩さ、すごい一冊です。怪談系にありがちな、後味の悪さがないというのもまた好み。
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調布
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読めば世界が変わる本。そこにある陰が、線が、向こうが、みんなみんな意味を帯びて見えてくる。