仏教と脳科学: うつ病治療・セロトニンから呼吸法・坐禅、瞑想・解脱まで

  • サンガ
3.75
  • (3)
  • (10)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 103
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904507537

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • スリランカ初期仏教長老のスマナサーラ師と脳生理学者の有田氏による対談。日本では北方仏教の伝統宗派が非常に力を持っているし、またスマナサーラ師自体もかなり他宗教に対してラディカルな発言をしているので、決して日本で広く受け入れられている宗教者とは言えないけれども、それでも100冊以上の本を著し、そのうち『怒らないこと』は数十万部を売り上げている。一方脳生理学者の有田氏は「セロトニン道場」を開くくらいにセロトニン物質の重要性を説く、まあ「セロトニン信奉者」である。
    有田氏は、瞑想は脳神経のセロトニン物質を増やし、心のバランスを保つとしと主張し、スマナサーラ長老も瞑想の効用を説くので比較的和やかに対談が進む。
    ところが後半になって有田氏が、快に作用するドーパニン神経と、不安・不快に作用するノルアドレナリン神経と、二つをコントロールするセロトニン神経の3要素を組み合わせによって心の状態が決められるという「心の三原色」を提案し、しかもそれが仏教の「三毒」である「貪・瞋・痴」に比せられると説くから、話は全くかみ合わなくなる。そもそも仏教が諸悪の根源と説く三毒のバランスによって心が形成されるなんて理論を、仏教徒が受け入れられるはずがない。だいたいドーパミンの快と、「貪」の貪欲を混同するなんて問題外だし、人生は苦であるという命題を持つ仏教に、ドーパミンだのノルアドレナリンだのの効用を説いたって仕方がない。というわけでスマナサーラ師はかたくなにこの説を否定するが、有田氏はムキになって食い下がって「セロトニン、セロトニン」と念仏のように連呼するから、一体どっちが宗教者なのか分からなくなる。
    有田氏のように化学変化によって感情が発生することが仮に事実だとしても、人間のあらゆる感情は、心のあらゆる作用によって化学物質の分泌を促すのである。その点を身落とすと、脳科学は「脳至上主義」に陥り、宗教はおろか、心理学や文学とも折り合いが付かなくなる。

  • テーラワーダ仏教と脳科学の第一人者の第一人者同士の対談ということで、興味深い。どちらの著者の作品も読んだことがあるので、対談の内容も比較的わかりやすかった。
    ただし、スマナサーラ長老もあとがきで述べているように、多少話が噛み合っていないと感じる部分もあった。

  • 私は科学の話が好きだ。
    もちろん、科学の非力さ・いたらなさも踏まえたうえで、科学の話は興味深い。

    セロトニン・アドレナリン・ノルアドレナリンについては、いろいろなところでよく聞く。
    あるいは、幻覚についても、一般的に起こりうる脳の現象として、認識されている。
    仏教の瞑想のなかで、それらはもちろん作用しているのだけれど、いわゆる「解脱」の段階はさらに奥が深そうだ、と感じた。

    仏教は科学的だ、と思う。
    日本の仏教でなく、原始仏教は。
    心の安寧について、より多くのことが科学的にもわかれば、仏教について深く知らない人たちの生きづらさも、より緩和されるのではないか。
    たとえ科学に限界があったとしても、それを求めていくのが人間なのだろうな、と思う。

    生きとし生けるものが、皆、幸せでありますように。
    それは、科学が望む世界でもあるのだろうな。


    【memo】
    P109 他者の心が自分の心と一致して、それによって共感で震えだすと、この前頭前野が動き出します。

    泣く行動をやめたり、コントロールしようとしたりすると、その後、苦しみが残る。

    セロトニンが重要!

    P202 仏教は、厳密に客観的でなくてはダメ。
    個人的な体験を論理的にとらえる、それが仏教。

    「快」の存在という部分でもめている感じがした。

  •  スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)の長老と脳生理学者が、仏教の瞑想と脳科学の接点を探った対談集。

     著者の一人、有田は坐禅を脳科学的に分析する研究をつづけてきた人(その研究をうつ病治療などに役立てているらしい)。そうした蓄積をふまえ、スマナサーラに脳科学から見た瞑想についての疑問を、さまざまな角度から問うている。

     部分的にはたいへん面白い本。たとえば、釈尊が悟りを得るために行なった瞑想の中身を、有田が科学の目から解説しようとしたくだりなどは目からウロコである。

     だが、宗教的瞑想にはやはり科学では説明しきれない領域があるようで、話が噛み合っていない部分も多い。
     また、全6章のうちの第4章「現代人の問題」は、瞑想とも脳科学とも関係ないたんなるお説教(それも、“ケータイやゲームに夢中になるのはよくない”みたいな陳腐なお説教)になってしまっている。この章はいらなかった気がする。

     以下、付箋を打った箇所をメモがわりに引用しておく。

    《スマナサーラ 先生がおっしゃっているセロトニン神経の働きは、仏教ではたった一語で説明できます。それは「サマーディ(禅定、統一)」という心理学的なある一つの状況です。それを司っているのです。肉体はどのあたりを感じているのか、機械的に見ればまだありますけれど。
     もう一つ、〈智慧〉があります。それはこれからの研究で、智慧は脳のどの部分のどういう機能かを発見するかもしれませんし、しないかもしれません。》

    《有田 お釈迦さまが六年の間修行して、苦やストレスを徹底的に観察し、そして山を下りて、坐禅を組んで瞑想を始めたころのことです。
     お釈迦さまのところへマーラ(悪魔)の娘たちがやってきて、誘います。それが、ぼくの解釈では〈快〉です。ドーパミン神経の誘いなのです。
     お釈迦さまは六年の歳月をかけ、ストレス実験をやっていました。ストレスの神経のテストをして、徹底的に見極めたのです。でも、いくらストレス実験をしても、満足のいく結果が得られなかった。
     彼は山を下りて、セロトニン神経を活性化する行を始めました。そこにドーパミン神経の誘惑が襲いかかってきたのです。そういうふうに、ぼくには見えます。》

    《スマナサーラ 脳は幻覚工場なので、結論を急ぐと、瞑想体験は単純な幻覚で終わってしまうのです。(中略)幻覚を現実だと思ってしまうと、真理を発見するどころか、原始時代に逆行してしまいます。》

    《スマナサーラ われわれは花が散るのを見て、「ああ、無常だなあ」などと言ったりしますが、それは本物の無常ではありません。私に言わせると、花を見た瞬間でも無常でしたし、それから散っている過程でも無常でした。それに気づかず、咲いている花と散っている花を比較して無常というのは、本来の無常ではないのです。本物の無常は、比較的でも対照的でもありません。無常は無常なのです。いつでも無常です。常にある真理なのです。》

  • 心の三原色については洗練された。悟りとはすべてを受け流すことです。ということは無気力とはネガティブな気力が満ちた状態でしょう。ということでうつって積極的。

  • スマナサーラの迎合しない感が信頼でき、有田の誠実さが素晴らしい。

  • セロトニン、アドレナリン、ノルアドレナリンと禅の関係が興味深い。

  • 2人の話が噛み合っていないところもあったが、仏教ってなんだろう?ということと、脳の仕組みが分かりやすく話されていて、面白かった。

  • 言葉ってすごいな、
    意味があって音(響き)があるのは大事だな、と思った

    “思考は言語によって構成されている”

    世界って不思議
    究極は言葉を超えたところにあるんだけどw

  • 仏教は科学で理解しやすくなる

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

アルボムッレ・スマナサーラ
Alubomulle Sumanasara

テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月、スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は(宗)日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝道と瞑想指導に従事している。朝日カルチャーセンター(東京)講師を務めるほか、NHK Eテレ「こころの時代」「スイッチインタビュー」などにも出演。著書に『サンユッタニカーヤ 女神との対話 第一巻』『スッタニパータ「犀の経典」を読む』『ダンマパダ法話全集 第八巻』『ヴィパッサナー瞑想 図解実践─自分を変える気づきの瞑想法【決定版】』(以上、サンガ新社)、『怒らないこと』(だいわ文庫)、『心は病気』(KAWADE夢新書)、『ブッダが教える心の仕組み』(誠文堂新光社)、『ブッダの教え一日一話』(PHP文庫)、『70歳から楽になる』(角川新書)、『Freedom from Anger』(米国WisdomPublications)など多数。

「2023年 『無常の見方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アルボムッレ・スマナサーラの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小池 龍之介
アルボムッレ・ス...
アルボムッレ ス...
アルボムッレ・ス...
アルボムッレ ス...
小池 龍之介
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×