定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

  • 書籍工房早山
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904701089

感想・レビュー・書評

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  • 21世紀はグローバリズムが進み、国という枠組みが希薄になる時代だと思っていたが、ここ数年、国益がやたらと語られるようになり、国家回帰の方向性も強まってきた。ナショナルなものは意外としぶとい。本書は80年代に書かれたその分野の古典的著作だが、得心するところが多かった。

    さて、本書の議論の多くはヨーロッパから広まった帝国主義的なものが植民地にどのようにナショナルなものを作り出すかに集中している。南米と東南アジアの事例が豊富で、それから初期のアメリカも分析されている。

    それらの事例からは帝国主義が単に支配者としての本国人、被支配者としての現地人という単純な二分法ではなく、現地生まれの本国人(クレオールと呼ばれる2世、3世)というどっちつかずの社会階層を生み、それが本国が植民地に持ち込んだ言語や社会制度を所有することで国家が生まれてくる。

    国家は一つの概念でまとめられるほど単純ではなく、王政から公共性が発展し国民国家へと看板を書き換えたヨーロッパ、帝国主義的な展開によってそうならざるを得なかった旧植民地地域(本書が主に扱っているのはここ)、ヨーロッパに遅れ独自の形で王政を近代化と合致させた国(例えばロシア、日本、それから括弧つきで中国など)と、その在り方も歴史的経緯によってかなりの違いがある。そこらへんを押さえると現在の世界情勢の諸問題をもたらしている歴史的背景がみえてくるように感じる。

    本書は「国家」のために命を捧げるネイション・ロマンティシズム(これは私がいま作った言葉)が近代の歴史を大きく動かしてきた事例も挙げているが、資本がネイションの枠を超えて広がり、急速に富を占有しているという現実下では、多くの国で民衆は権利を主張する対象として国家を捉えているように思う。例えば愛国心という言葉は現在どれだけの実体性を持っているのだろうか。とはいえもはや資本の自己増殖は国家も止められないところに来ており、蓄積された矛盾はやがて破裂するだろうし、そこで国家という概念もまた変容せざるを得なくなろう。

    国家の近代化を促したのは出版資本主義だったが、SNS、フィンテックやクラウド・コンピューティングは社会や国家をどこに導いていくのだろうか。

  • ナショナリズムについて書かれた本。ナショナリズムに関して考察したいのなら、この本は必ず読むべきと感じた。生まれてから漠然と慣れ親しんでいた日本人の共同体、国民性、愛国心というものに対して、初めて現象として認識し、疑念を抱くことができた。なぜ我々は会ったことのない他人について想像することができるのか。またこの我々という代名詞自体が共同体を想像しているという視点がとても印象深かった。

  • こんな有名なのに今まで読んでませんでしたっていう本
    評判どおりの完成度だがレトリックがエグいし世界史の前提知識なしで読むのは相当つらそう

  • ナショナリズムの本質を歴史的・理論的に探究する論考として1983年ベネディクト・アンダーソンによって上梓された。1987年彼の教え子によって最初に日本語に翻訳され、2006年時点では30カ国27言語に訳され、ナショナリズム論の名著として社会科学系の研究者に広く読まれ、大学ゼミなどの課題書としても使われている。表題の書は1997年に一部加筆修正されて出版されたもの。
    著者は第二次大戦後東南アジアの社会主義国間の紛争に直面し、マルクス主義理論にとっても「やっかいな変則であり続け、無視されることのほうが多かった」ナショナリズムの問題にフォーカスし、人類学・社会学・歴史学・政治学等々幅広い学識を駆使して分析・思考し独特の立論を試みたものである。著者はイングランドで生まれイートン校、ケンブリッジ大を経て渡米、コーネル大学でインドネシアなど東南アジア研究を長く続けた、その分野の権威である。生涯を学問研究にかけた筆者の文章は経験・知識や発想の豊さに満ちて読み手に緊張を強いる。生い立ちやキャリアがなせるイギリスの引喩や凝った文体で専門語や脚注も多く、読者向きの文章に慣れた身にはついていくのが大変であった。繰り返しなぞりながらも終章になると朧げに浮かび上がってくるナショナリズム像に何とも言えない達成感に満たされる。今まで無意識に使っていた「ナショナリズム」という言葉が恐ろしく新鮮な概念として再現され、従来の表面的な理解が次元の違う新しいものに変わっていく快感である。
    読解不足と雑駁な浅慮を省みず、あえて纏めてみると以下のようか。
    想像の共同体 Imaged community とは
    近代の印刷技術、言語、教育によって形成される。
    地図・人口調査・博物館・歌謡などで範囲が策定され、新聞などで同時性を確認し共同性が意識される。聖書の絶対性(宗教)・王権の絶対性(政治)・時間的宿命性(哲学)の旧社会が印刷・出版技術や資本主義の発達によって、人間は従来の制約(限界)を超えて「考える」ようになり、想像の共同性=ナショナリズムが発現する。

  • 本書の目的は、ナショナリズムの実態と理論との乖離に対して、ナショナリズムの理論(どのような意味なのか?どのような歴史的背景があるか?)を提供することである。その背景には、中国とベトナム、カンボジアという社会主義体制の国同士の戦争がある。
    本書では、国民という存在が人々の間でイメージされ、心に想像された共同体であるという。僕らは、大勢の日本人と会うことも聞くこともないが、心の中に日本人を想像することができる。

  • 2013 11/6パワー・ブラウジング。Amazonで購入。
    図書・図書館史の授業用に読んだ本。
    以下、授業時のメモ。

    ===
    ・従来・・・ラテン語(他にはアラビア語、中国語など)からなる「聖なる想像の共同体」  ・それが俗語等による国民国家的、想像の共同体になっていく要因・・・出版資本主義
     ・16世紀の出版・・・資本主義的企業
      ・「書籍商はなによりもまず生産物を売りさばいて利益をおさめようとし、そのため、この時代のできるだけ多くの人々の好みにあった著作を求めた」
      ・ラテン語を話せるのは二言語を使えるエリートだけ・・・その市場が飽和すれば、当然俗語出版に行く
       ・ラテン語の地位の変化・・・人文主義
       ・宗教改革・・・俗語出版を利用
       ・絶対君主による俗語の行政中央集権化手段への採用
      ・俗語はもともと多様・・・口語俗語レベルでは、ちょっと離れたところ同士では会話は理解できない/テレビができる前の津軽弁VS薩摩弁とか想像してもらえれば
       ・そんなごく小規模な範囲での出版じゃ儲からない・・・ある程度、共通している範囲内で組み立てなおした「出版語」にまとまっていく
      ・「多様なフランス口語、英口語、スペイン口語を話す者は、会話においては、おたがい理解するのが困難だったり、ときには不可能であったりするのだが、かれらは、印刷と紙によって相互了解できるようになった」(p.84)
      ・「この過程で、かれらは、かれらのこの特定の言語の場には、数十万、いや数百万もの人々がいること、そしてまた、これらの数十万、数百万の人々だけがこの場に所属するのだということをしだいに意識するようになっていった」(同)
       ・この「読書同胞」の存在・・・国民的なものと想像される共同体の胚である

     ・言語の固定・・・写本作成においては、意識的/無意識的に写字生は時代の状況にあわせて手を加えてしまう
      ・その結果、たとえば12世紀と15世紀ではフランス語は全然異なってしまっている/理解し難い
      ・印刷によって一度刷られたテキストは固定されるようになる/書き言葉の変化の速度は決定的に鈍化
      ・その結果・・・「古さ」のイメージが生まれる=「伝統的」的なイメージができる

     ・ブルジョアジー階級・・・「本質的に想像を基礎として連帯を達成した最初の階級」
      ・文字を読める+同じ文字を共有する他のブルジョアジーに、会ったことがないどころか存在すら知らなくても共鳴できる
       ⇔・それまでの婚姻や友情を基板とする貴族階級等とは異なる存在
        ・ただし言語によって範囲は規定される
      ・「人は誰とでも寝ることができるけれども、ある人々の言葉しか読むことはできない」(p.132)

     ・ネアンの引用:「ナショナリズムを唱導する新しい中産階級インテリゲンチアは、大衆を歴史に招じ入れなければならなかった。そしてその招待状はかれらの理解する言語で書かれねばならなかった。」(p.135)
      ・ある言語の話者がその言語による国家創設がふさわしいと考えるのであれば、その言語の話者はすべてその国家の範囲に入れることを認める必要があり、そうなると農奴制のようなものは捨てざるを得なくなる・・・人民主義的性格
      
     ・王朝国家/帝国(国内に複数の出版俗語話者が存在する国家)はどの出版俗語を選ぶかで苦慮することに・・・
      ・ある語を選べば過度に肩入れしたとみなされ他の言語話者に攻撃される/譲歩すると採用した言語の話者に攻撃される
      ・オーストリア・ハンガリー帝国/オスマン帝国

     ・p.157・・・日本の場合の事例紹介あり。後の回で使えるか?

     ・p.216・・・ナショナリズムというものが知られてから後には、出版俗語を異にする人々による国民国家も成立しえている。例えばスイス。ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語話者が入り乱れている
      ・これはかなり遅れてきた波

     ・最終層・・・Open Society Foundationが出てきている。授業とは別件であとで読み返す

     ・基本的に自分が書いてた筋とまあ大筋で相違ないことは確かなようである・・・王朝国家はそれで統一性を保とうとするし、それが倒れれば民主的に進められる、と
      ・音声メディアがない時代にはますます大事・・・文字を読めること/想像できること
      ・そのためには・・・教育が必要である
       ・公教育を補う存在としての公共図書館、国あるいは自治体が予算を支出し、人々の社会教育を担う機関としての図書館は、ゆえに近代以降の産物である

  • 【主題・問題意識】p22
    ナショナリティ、ナショナリズムとった人造物は、個々別々の歴史的書力が複雑に「交叉」するなかで、18世紀末にいたっておのずと蒸留されて創り出され、しかし、ひとたび創り出されると、「モジュール」となって、多かれ少なかれ自覚的に、きわめて多様な社会的土壌に移植できるようになり、こうして、これまたきわめて多様な、政治的、イデオロギー的パターンと合体し、またこれに合体されていったのだと。そしてまた、この文化的人造物が、これほどまでにも深い愛着(アタッチメント)を人々に引き起こしてきたのはなぜか、これが以下においてわたしの論じたいと思うことである。

    【国民の定義】p24
    国民とはイメージとして心に描かれた想像の政治共同体であるーそしてそれは、本来的に限定され、かつ主権的なもの[最高の意思決定主体]として想像されると。

    【国民それ自体は、常に、はるかなる過去よりおぼろげな姿を現し、そしてもっと重要なことに、無限の未来へと漂流していく。偶然を宿命に転じること、これがナショナリズムの魔術である】p34
    ドブレ「しかり、わたしがフランス人に生まれたのはまったくの偶然である。されどフランスは不滅である」

    【ナショナリズムは先行する大規模な文化システムと比較して理解されなければならない】p35
    Cf. 宗教共同体と王国

    【18世紀ヨーロッパにはじめて開花した二つの想像の様式】p50
    小説と新聞
    ⇒国民という想像の共同体の性質を「表示」する技術的手段を提供した。
    →虚構は静かに、また絶えず、現実に滲み出し、近代国民の品質証明、匿名の共同体へのあのすばらしい確信を創り出しているのである。p62

    【近代共同体の特徴】p76
    水平・世俗的、時間・横断的

    ルターは名の通った最初のベストセラー作家となった。p79

    【プロテスタンティズムと資本主義の親和性】 p79-80
    プロテスタンティズムと出版資本主義の連合は、廉価普及版の開拓により、ふつうラテン語をほとんど知らなかった商人、女性をふくめ、大規模な新しい読者公衆を急速に創出し、かれらを政治宗教目的に動員した。

    【新しい想像の国民共同体を積極的に促進したもの】p82
    生産システムと生産関係(資本主義)、コミュニケーション技術(印刷・出版)、そして人間の言語的多様性という宿命性のあいだの、なかば偶然の、しかし、爆発的な相互作用であった。
    人間の言語的多様性の宿命性、ここに資本主義と印刷技術が収斂することにより、新しい形の想像の共同体の可能性が創出された。
    これが基本的形態において、近代国民登場の舞台を準備した。p86

    ネアン「明瞭に近代的な意味でのナショナリズムの到来は、下級階級の政治的洗礼と結びついていた。... たとえときに、民主主義に敵対的になることがあったにせよ、国民主義運動は、その見解においてきまって人民主権的(ポピュリスト)であり、下級階級を政治生活に導入しようと試みた。最も典型的な場合には、それは、中産階級と知識人のおちつきのない指導の下に、民衆の階級的エネルギーを新国家支持へと動員し誘導するという形態をとった」p92-93

    【クレオール】p104
    かれらは、武器、病気、キリスト教、ヨーロッパ文化に対し、本国人とまったく同じ関係をもっていた。別の言い方をすれば、かれらは、原理的に、自己の権利を主張しうる政治的、文化的、軍事的手段をもっていた。かれらは植民地の共同体を構成し、同時に上流階級でもあった。かれらは経済的に支配され搾取さるべき存在出会ったが、同時に帝国の安定に不可欠の存在でもあった。こうしてみると、クレオール有力者と封建貴族の地位がよく似たものであったことが見てとれよう。

    アメリカ合衆国においてすら、ナショナリズムの情緒的絆はかなり伸縮自在であり、西部のフロンティアの急速な拡大と南北経済の矛盾によって、独立宣言から一世紀もあとになって分離戦争が起こったほどであった。p110

    【クレオール国家がいかに国民意識を培ったか】p111
    経済的利害も自由主義も啓蒙主義も、それ自体としては、旧体制の強奪から守るべき想像の共同体の種類または形態を創造することはできなかったし、創造しなかった。
    ⇒アメリカ大陸の「クレオール・ナショナリズム」と「新しいナショナリズム」は峻別されるべき

    世界史的観点からすれば、ブルジョワジーは、本質的に想像を基礎として連帯を達成した最初の階級であった。p132

    人は誰とでも寝ることができるけれども、ある人々の言葉しか読むことは出来ないのである。p132

    【ex. フランス革命】p136
    それを行った人々とその犠牲者となった人々の経験した圧倒的でつかまえどころのない事件の連鎖は、ひとつの「こと」となり、フランス革命というそれ自体の名称を得た。数限りない水滴によって形状定まらぬ巨石が丸石となるように、経験は数百万の印刷された言葉によって、印刷ページの上でひとつの「概念」へと整形され、そしてやがてはひとつのモデルとなった。
    概念→モデル→ブループリント ex. 南北戦争

    【想像の現実(imagined realities)】p136
    国民国家、共和制、公民権、人民主権、国旗、国家その他。(対立概念⇔)王朝帝国、君主制、絶対主義、臣民身分、世襲貴族、農奴制、ユダヤ人街その他ーの清算。

    【公定ナショナリズム】p147
    中世以来集積されてきた広大な多言語領土において、帰化と王朝権力の維持とを組み合わせる方策、別の言い方をすれば、国民(ネーション)のぴっちりとしひきしまった皮膚を引きのばして帝国(エンパイア)の巨大な身体を覆ってしまおうとする策略である。
    ex. 帝政ロシア
    「国民と王朝帝国の意図的合同」p148
    スロヴァキア人はマジャール化され、インド人はイギリス化され、朝鮮人は日本化されることになった。p175

    公定ナショナリズムは、共同体が国民的に想像されるようになるにしたがって、その周辺においやられるか、そこから排除されるかの脅威に直面した支配集団が、予防措置として採用する戦略なのだ。p165

    【旅ー三つの要因】p190-191
    ①19世紀における鉄道と蒸気船、今世紀における自動車と航空機ーによって物理的移動がけたはずれに増加した
    ②帝国的「ロシア化」のもっていた実践的、イデオロギー的側面。地球全体にまたがるヨーロッパ植民地帝国の規模とその支配下におかれた巨大な人口、このことは、純粋に本国人だけの、あるいはせいぜいクレオールをふくめただけの官僚機構では、これを充員することも、財政的に維持することも不可能だということを意味した。植民地国家と、そしてのちには法人資本は、事務員の大部隊を必要とし、これら事務員は、二つの言語ができて、本国の国民と植民地住民を言語的に媒介できなければ役に立たなかった。こうした必要は、20世紀にはいって国家の機能的専門化がどこまでも進行するにつれ、ますます増大していった。従来からの内務官僚とならんで、医務官、灌漑技術者、農業指導員、学校教師、警察官その他が登場した。そして、そうした国家の拡大とともに、その内部では巡礼者のむれが膨張していった。
    ③植民地国家、さらには民間の宗教、世俗団体による近代的教育の普及。

    【三つのナショナリズム・モデルのモジュール性(汎用性)】p212
    ①国民主義指導者は、公定ナショナリズムをモデルとして文武の教育システムを
    ②19世紀ヨーロッパの民衆ナショナリズムをモデルとして選挙、政党組織、文化的祝典を
    ③南北アメリカによってこの世にもたらされた市民の共和国の理念を意識的に展開できる
    ⇒なによりも、「国民」という観念それ自体が、いまでは、事実上すべての出版語のなかにしっかりと巣ごもっており、国民という観念は政治意識と分かち難く結びついてしまっている。

    【まとめ】p217
    主としてアジア、アフリカの植民地に打ちよせたナショナリズムの「最後の波」は、産業資本主義の偉業によってはじめて可能となった新しい型の地球的帝国主義への反応として発生したものであった。
    資本主義はまた、印刷出版の普及その他によって、ヨーロッパにおいては俗語にもとづく民衆的ナショナリズムの創造を助け、そしてこうした民衆的ナショナリズムは、その程度はさまざまであれ、伝来の王朝原理を掘り崩し、可能なかぎり王朝を国民へと帰化するよう駆りたててもいった。ついで公定ナショナリズムは、便宜上「ロシア化」とも呼びうるものを、ヨーロッパ外の植民地にもたらした。中央集権化され標準化された学校制度はまったく新しい巡礼の旅を創出し、この巡礼のローマとなったのは、典型的には、各植民地の首都であった。ある特定の教育的巡礼と行政的巡礼の組み合わせ、これが新しい「想像の共同体」に領土的基盤を提供し、そしてこの想像の共同体のなかで「土民(ネイティブズ)」は自分たちを「同国人(ナショナルズ)」と見なすことができるようなった。p218
    クレオール・ナショナリズム、俗語ナショナリズム、公定ナショナリズムは、さまざまの組み合わせで複写(コピー)され、翻案され、改良をくわえられた。そして最後に、資本主義が、物理的、知的コミュニケーションの手段を加速度的に変えていくにつれ、インテリゲンチアは、想像の共同体を宣布するにあたり、文盲の大衆に対してばかりでなく、異なる言語を読む識字者大衆に対してすら、出版を迂回する方法を見出すようになったのである。p219

    植民地的人種主義は、王朝的正統性と国民的共同体とを溶接しようと試みる「帝国」概念のはらむ主要な要素だった。p245

    ルナン「国民とは多くのことをすっかり忘れていることだ」p264

    (人口調査、地図、博物館)これらの制度が一緒になって、植民地国家がその支配領域を想像するその仕方ーその支配下にある人間たちがだれであるかという性格付け、その領域の地理、その系譜の正統性ーを根底的にかたち作った。p274-275

    地図(マッピング)の言説はひとつのパラダイムであり、このパラダイムのなかで行政が実施され軍事行動がとられ、またそれがパラダイムに役立つことにもなった。P288

    人口調査、地図、博物館は、相互に連関することにより、後期植民地国家がその領域について考える、その考え方を照らし出す。この考え方の縦糸をなしているのは、すべてをトータルに捉え分類する格子(グリッド)であり、これは果てしない融通さをもって、国家が現に支配しているか、支配することを考えているものすべて、つまり、住民、地域、宗教、言語、産物、遺跡、等などに適用できる。そしてこの格子の効果はいつでも、いかなるものについても、これはこうであって、あれではない、これはここに属するものであって、おそこに属するものではない、と言えることにある。p299

    【ロゴ】p301
    ロゴは、それが空っぽであること、なんの文脈(コンテクスト)もないこと、視覚的に記憶されること、あらゆる方向に無限に複製可能であることによって、人口調査と地図、縦糸と横糸を消しようもなく交わらせたのである。

    国民の伝記は、模範的な自殺、感動的な殉国死、暗殺、処刑、戦争を奪い取ってくる。p335
    ⇒物語の目的を果すためには、これらの暴力的な死は「われわれのもの」として記憶/ 忘却されなければならない。

    悪名高い「アジア的価値」のような、うその「文化・地域的」決まり文句 p374

    <解説・あとがき>

    【想像の共同体の鍵】p381
    「想像の共同体」が人々の心にいかにして生まれまた世界に普及するに至ったのか、その世界史的過程を
    「聖なる共同体」と「王朝」、「メシア的時間」と「空虚で均質な時間」、新しい「巡礼」の旅、「言語学・辞書編纂革命」、「海賊版の作成」で解明する

    【メモ】
    モジュール:規格化され独自の機能をもつ交換可能な構成要素
    メシア的時間:即時的現在における過去と未来の同時性に相当する時間概念 p49

    国民性(ネーションネス、nationness)
    並存感(センス・オブ・パラレリズム、sense of pararelism)p321

    格子の力(グリッド・パワー):比喩的に一定の社会範疇によって構成される振り分けシステム、分類メカニズムを格子、グリッドと言う。p279注

    憲法 cf. 『憲法で読むアメリカ史』『アメリカのデモクラシー』

    「自明の運命」(manifest destiny)p349

    アジア的価値

ベネディクト・アンダーソンの作品

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