昔日の客

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著者 : 関口良雄
  • 夏葉社 (2010年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904816011

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昔日の客の感想・レビュー・書評

  • 私から言わせると、この本の内容は、昭和30年代から40年代にかけて東京郊外にあった“古本屋のオヤジ”の“ざれ言”である。でも通読すると、なぜかほっとする。思わず笑みがこぼれる。
    でも、なんでほっとして笑みがこぼれるんだろう?それは息子の関口直人さんが復刊に際して寄せた一文にある「古本屋にとって、面白い時代を生きられた」という点につきるのでは。

    自分の好きなことを言って、書いて… もちろん今もそんな生活をしてる人はそれこそごまんといる。けれど今とちがって、このスッキリとした感じは何だろう?って、ちょっと真剣に考えて、自分なりに出した結論は、今と違ってイヤミがない、ということにつきると思う。好き放題言ってても、毒がないし攻撃的でない。頭ごなしに怒る感じじゃない。また何より否定的でない。
    今じゃ、たとえばツイッターやブログにちょっと自分の考えを載せたら、それを否定し、さらにその人の人格全てを否定するくらいの勢いの口汚いコメントで毒づかれる時代。作家も古本屋も、そしてあらゆる人が、そんなのにいちいち晒されたら、正直やってられないと思う。

    そうではなくて、自分の趣味をさらりと示して、ちょっと言い過ぎ、やり過ぎても、それを軽く笑い飛ばすような雰囲気が、時代のなかに、人々のなかにあったとしか言いようのない描写がこの本にはあふれてる。
    (実際、著者の関口良雄さんも、他人へ話すのが好きで、時に商売そっちのけであること(ないことも?)話し込んで奥さんにアキレられたり、飲むのが好きでお酒が入ると民謡を大声で歌いたくなり、高名な作家の前だろうとお構いなしで“いなかっぺ大将”状態になったり、という場面が一度ならず出てくる。)だから、ほっとするんじゃないかな。

    時代を時計の針のように巻き戻すことはできないけど、ああいう楽天的な空気って決して悪くないと思うし、他方で、なんでこんなに老若男女すべてがギスギスした攻撃的で排他的な社会になってしまったんだろ?って考えてしまう。だからもし、著者のようなタイプの人が今も「現役」で活躍しているのであれば、批判は可、ダメ出し可、今の常識から照らして疑問の提示も可、だけど「否定」はしないでおきたい。
    他人の言うことやることを誰もが徹底的に否定してかかるようになってから、こんな嫌な空気が支配する今の世の中になったとしか思えないから。

    著者の関口さんは上林暁さんから「本を愛する人に悪人はいない」と言われ、「こりゃあ悪人になれないぞ」って瞬間に頭に浮かんだって“正直に”書いてる。関口さんのそういう一見、外連味溢れる文章に「それは違うぞ」って思っても、否定から入るのはやめようよ…そういうスタンスならばこの本の外連味が深味となって素直に染みてくるはず。
    自分の主張や好みに合うか合わないかってだけで、なんでも物事を二元論で切り分ける時代の空気に息が詰まりそうになってる人に、特におすすめします。
    (2015/5/23)

  • 美しいのです。
    本そのものの佇まいも、もちろん帯も栞紐も、その他すべてが。
    このような本の中に、素晴らしいことが書かれていないわけ、ありません。
    大事に大事に、大事にしたい。

  • うぐいす色の布貼りの表紙。
    中身にふさわしい布貼り装幀で、本は目で読むだけでなく、手で触って読むものだな、と思い出させてくれる。
    手渡してくれた書店主さんは、「汚れやすいからね、早く何かカバーをかけたほうがいいですよ」と一言添えてくれたけれど、この布の手触りもまた中身への期待をほくほくと掻き立ててくれるようで、手をきれいに洗ってからちょっと撫でてみる。それからカバーをかける。カバーはかけたけれど、また読む時には手をきれいに洗って、やはり一度は撫でてみてから、読む。

    東京大森の小さな古本屋「山王書房」店主が綴る、作家さんたちとの交流、古本の話は愛情に溢れている。

    見知らぬ大きなお宅の朴の落葉がほしくて、すみませんが少し下さいませんか、と頼む話がある。「落葉はいくらでもあげますが、一体あなたの職業はなんですか」と聞かれて、「ハイ、私は落葉屋でございます」と。
    いいな、落葉屋。
    落葉も、古本に似ているかもしれないな。新刊本には決してない渋いようなほろ苦いような、でもどこかなつかしくて温かいような感触。

    それから、前夜失くした古本の包みを駅の遺失物係に探しに行ったら、中年のご婦人がこれこれの品物を主人が昨夜忘れて…と尋ねていて、同じような人がいるものだとふと見ると、自分の奥様だった、とは、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」をふと思い起こさせるようではないか。

    ああ、無用なものほどなんとうつくしい。
    ずっとずっと読んでいたい本だった。

  • 古本屋を営む作者さんが綴った随筆でした。有名な作家さんの名前が幾人も出てきて、作者さんも大正産まれのよう。2010年発行にしては古めかしいと思ったら、復刊でした。
    もともとは作者さんが還暦の記念に出版を目指したものの、大腸癌を未告知のまま59歳で逝去。その翌年に発行されました。息子さんが引継ぎ書いたあとがきが印象的でした。復刊に尽力した夏葉社の方と、方々で『昔日の人』を紹介した又吉さんのエピソードも良かったです。

  • 羨ましくなるくらい素敵な店主とお客の交流。「あしたから出版社」を読んでから読むことを心からおすすめします。
    http://www.ne.jp/asahi/behere/now/newpage208.htm

  • 大森の古本屋さん、文学・本への情熱がじわじわと伝わってくる
    文体が素晴らしい。

    当時の本好きとの付き合い方、シンプルで、かつどこか深いものが
    懐かしい感じでうらやましい。
    最近はどこの古本屋に行っても、手の震えるような本に出会わない、
    というあるお客さんの嘆き。
    棚を見て、手が震えるようにして取る、著者も上手い言い方と感心
    しているが・・・、確かにこういう衝撃は今は残念ながらない。
    (私は、昔ありましたが)

    当時を思い出させる描写も良い。
    藤澤清造の「根津権現裏」はやはり古書で高価な値がついていたこと。
    三島があの文章読本が、寝転びながら口述で作り上げたと告白
    してしまうところなどなど・・。

    もっと読んでみたい人だった。

  • 又吉さんが何かの拍子にお勧めされていたのをきっかけに拝読。

    おっしゃる通りの、すばらしい御本でした。


    「山王書房」の店主、関口良雄さんの本に対する深い愛情が、
    めらめらとした熱い炎のようなものではなく、
    その枝葉まで沁みこむような脈々とした愛情が、
    伝わってくるような、すばらしいお話でした。

    古本屋を営むことで繋がる縁、本が生む縁というものを、
    関口さんの随筆を読み、追体験することで、感じ入ることができました。

    又吉さんが、
    「著者の本への愛情を思うと、あとがきのところで泣けてしまう」
    というようなことをおっしゃっていて、
    それは、本当にそうだなと思いました。


    版元の夏葉社さんの「復刊」への思いも、とても伝わるような一冊。
    ていねいに、ていねいに、復刊までの道を歩んだのだろうな。
    布張りの装丁も美しく、手元に残しておくべき本。
    こういう本のありがたさ(まさに読んで字のごとく「なかなかない」という
    意味の有難さ、そしてこのような本に出会えたことへの「ありがたさ」)を、
    多くの人に知っていただきたいと思いました。


    本当に、愛おしくなるすばらしい本でした。

  • 図書館で借りたが、これは手元に置いておきたい一冊かもしれない。(追記)で、買ってきた。

  • この本が描く、恐らく今では取り戻せないだろうどこか温かい世界に思いが広がり、感慨深くしばし眠れなかった。昭和28年、東京都大田区に古書店を開き、多くの作家、学者らに愛された筆者による随筆集の復刊。多くの客の言動は、どこか奇妙で哀しいが、どんな理由であれ、本が好きだ、という心情を知る故か、描かれる姿はとても愛おしい。すべては30年以上前の物語。電子図書で騒がしい昨今、「本」の魅力を改めて感じるのに最適の一冊。

  • いや~、素敵な本に出会いました。

    触れるのもドキドキするような、布張りの手触りのよい装幀に、まずほっと心がなごむ。
    中を開けば、街の片隅のちょっとした風景が、穏やかな筆致で季節感たっぷりにつづられ、かと思うと、時折ぷっと吹き出したくなるような面白い話が、軽快に語られる。
    気取りがなく気負いもなく、でもどこか品の良さを感じさせる小気味よい文章、錚々たる作家たちとの心温まる交流や、本への惜しみない愛情など、とても一介の古書店主とは思えないほどの一級の随筆ばかりだ。

    文章からあふれてやまない著者のお人柄こそが、山王書房が多くの作家たちに愛された所以なのだということが、ありありと伝わってくる名著であった。

    時々手にして読みたいかも。買おうかな。

  • 2011年1月19日読み始め 2011年1月21日読了。
    布張りの装丁からして素敵な本。
    内容はもっと素敵。古本屋店主の著者が、お客や作家との交流を暖かく描いたエッセイが収録されているのだけど、これがどれもこれも味わいがある話ばかり。安易な郷愁や自慢話ではなく、どんな大作家も普通のお客さんも同じような視線で見ているのがとてもいいです。
    著者本人も、ごく普通の店主ですよとは書いているものの、なかなか楽しい人物像がエッセイからも浮かび上がっています。この愛すべき本に、著者の人生がぎゅっと詰まっているような気がします。
    本がスキな人なら、きっとジーンとくる、冬の陽だまりのような本でした。

  • 涙が出てくる。

  • 私の古本のイメージは安いもの。この本に出てくる古本はそうではない、まさに財産、宝物。
    今もそんな文化は残っているのかな。それこそ神保町辺りでは普通のことなのかもしれない。
    著者と私、同じ本を扱う仕事をしているけれど、多分本に対する想いは全然違うのだと思う。もちろん重なる部分もあるのだろうけどね。
    それにしても、奥様と仲がよさそうでうらやましい限りです。

  • 昭和30年代~50年代、大森の「山王書房」を愛する人たち(それは時代の錚々たる文化人であったり)の、ほのぼのした交遊録。
    微笑ましいエピソードがやわらかい言葉で綴られていて、何ともいえないのんびりした気持ちに浸れる。
    著者のきどりのないユニークなお人柄に魅了され、心が温まる。そしてじーんとくる。
    挿絵の版画も素敵。
    丁寧にゆっくりと大切に味わいたい、とりまく人々の愛が詰まった1冊。
    あぁ~、この時代、たまらなく好きだな~。

  • よい本だった。昭和の空気が現実の日々のスピードを落としてくれる。特に大きなことが起きるわけではない著者の日常に愛おしさを抱き、しみじみ感じ入る。古本屋という家業も魅力。またお人柄もよいのでしょう。飾らない誠実さに喜びを感じ、すっぽりとよき昭和の時代に包み込まれる感覚があった。

  • 関口さんの人柄がとても魅力的で、一気に読んでしまいました。
    後書きでご家族も綴っていらしたのですが、店主と話がしたい、という方が本当に沢山いたのだろうなあと思います。
    こんなに素敵な古書店、ぜひ伺ってみたくなっちゃいますよね。
    本好きな方や文学好きな方にぜひ手に取っていただきたい1冊だと思います。
    最近まで絶版だったなんてびっくりですよ。夏葉社さんに感謝。

  • 図書館でお得意の
    背表紙ウォッチング中。

    鶯色に手書きのような題名。
    しゃくじつ?じゃないよね。
    せきじつ?だよね。
    なんて手にとって見ると
    口絵、裏表紙には山高登さんの版画。

    中をめくると
    私の好きな時代の著名人の名が!

    これは読まなきゃ!と思い
    ノートとペン片手に
    あっという間に読み終了。

    今、書き残したノートを見てみると
    正宗白鳥、久米正雄、上林暁、尾崎士郎、尾崎一雄、三島由紀夫、川端康成、野呂邦暢…

    知っている人から初見の方まで。
    そして後者に関口良雄と言う方も。

    多勢と親交を持たれて
    数多くの作品を読み込まれている
    だからこそ
    余計に関口さんの才能が発揮され
    読む人を同じ時間にまで呼び込み
    私のような凡人にも
    読みやすいエッセイです。

    “虫のいどころ”
    “尾崎さんの臨終”
    などと真面目なんだけど
    プッと吹き出してしまいそうな
    表現にかえてみたり
    ところどころに紹介される詩や歌
    自筆の短冊歌や作詩など、と
    芸術的な部分も披露され
    次頁次頁へと
    上手に誘い込まれてしまいました。

    読み終わった頃には
    ん?誰かに似ているような…?
    と思わされるくらいに
    「関口良雄」さんが
    とても近い距離に
    感じられていました。

    そして
    関口良雄さんだからこそですよ。
    昔日の客がいらっしゃったのも…
    と、お伝えしたい気持ちでいっぱいです。

    ご子息、関口直人さんのあとがきから
    この作品に
    どれほどの希望と魂と力が込められていたのか伺い知れて胸いっぱいに。

    もっと読みたかったな。

    名残惜しいけれど
    この本はしっかり
    私の胸に刻まれました。

  • 又吉さんのエッセイに影響されて
    図書館で借りて読む。
    昔ながらの古本屋っていいな~とほっこりしながら読めました。

  • 文学者たちに愛された古本屋「山王書房」の店主の随筆です。本を書いている人、本が大好きな人たちがたくさん出てきて、文学者に詳しくない私でも読んでいて楽しかったです。随筆から店主の人柄が読み取れて、愛されていた理由がわかる気がします。本は人を繋げますね。

  • 借り物。古書店の店主がしたためたエッセイ。普段はとても本を読むのが早い私だけれど、この本はじっくり言葉を咀嚼して読みたくなるような本で、少しずつ読んだ。店主の人柄があらわれた優しい本だ。私も彼の古書店に客として行ってみたかったなと思う。それはもう叶わぬ願いなのだけれど。

    ※余談
    沢木耕太郎のエッセイ『バーボン・ストリート』の1編にこの古書店が登場する。

  • 又吉直樹さんが紹介されていたので読んでみました。著者は古書店の主人。見慣れた地名がたくさん出てくると思ったら、同じ区の古書店だった。
    ご主人の誠実な人柄と、ステキな人たちとのエピソードに、心が温かくなりました。

  • 2015/8/31購入
    2015/9/6読了

  • 装丁がすてき。本のカバーが嫌いで教科書からなにまでとって使う癖がある。この本はカバーもなく、布で、持っているだけで気持ちがいい、うれしい。古本屋の主人関口さんの本への愛、昔の時の流れを、本を読みながら感じることができた。有名な作家、なんだか堅苦しく印象だったのがなくなり、読んでみたいと思った。

  • 手触りのとても好い一冊です。
    会わなくても、何年も音信不通でも
    心を寄せる相手には、何かが伝わる。
    メールや電話は近しいようで
    どこか遠くに感じるときがある反面、
    一枚の葉書が、突然届くことに胸を熱くする。
    関口氏のように、心の襞に寄り添えるように
    ありたい、と願います。

  • 2015.7.18

    読む前は難しい内容なのではと思っていたけど、スラスラと読めて、とてもおもしろかった。

    人と人とのつながりの暖かさや優しさを感じられる本。

    わたしも日々追及して、自分の道を作って、信頼される仕事人になりたい。

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昔日の客の作品紹介

尾崎一雄、尾崎士郎、上林暁、野呂邦暢、三島由紀夫…。文学者たちに愛された、東京大森の古本屋「山王書房」と、その店主。幻の名著、32年ぶりの復刊。

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