無常の教え

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制作 : 星飛雄馬 
  • サンガ (2013年10月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784905425601

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無常の教えの感想・レビュー・書評

  • 『手放す生き方』の続編となる一冊。
    現代の阿羅漢と呼ばれるタイ出身の長老、アーチャン・チャー師の言葉が、彼の弟子ポール・ブレイター氏によって編纂されています。

    英語タイトルが「everything arises, everything falls away」
    まさに「無常」を説いた一冊です。

    仏陀が説いた道をたどり、彼の教えを自分の言葉で語るチャー師。
    仏陀の教えは、時に遠く困難な印象も受けますが、それを師は、時にユーモラスに、時に皮肉を込めて自分の言葉で語っており、聞く者の心に響くものとなっています。

    仏教に身近な日本人にとっては、その教えはかなり耳馴染みが良く、理解しやすいものですが、仏教に触れたばかりの欧米人にとっては、その教えのどれもが斬新で驚きに満ちた

    発想なのかもしれません。
    師と弟子のやりとりは、仏陀とその弟子のように形式的に仏典化されたものではなく、リアルなやりとりが伝わってきます。
    もはや超人的な立場にいる師ながら、やはり修業を重ね、煩悩と闘いぬいてきたことが彼の言動からわかるため、彼を慕う弟子がひきもきらずに集まる理由もわかります。

    修行と瞑想による悟りへの道を説く師。
    そこへ至るまでの厳しい道のりの説明も忘れません。

    また、修業を重ねることで、一般人との感覚の差が広がっていくことにも言及しているのが、真新しいと感じました。
    悟りを開いた人は、世間の人々を無知な存在だと感じ、世間の人は悟りを開いた人を、無反応な人物だと感じる点です。
    宗教人は、世間の常識とずれがあることは否めず、そこをどうならし、相互理解を目指していくのか、かねがね気になっている点です。
    やはり、その道の先達者に、迷いも困難も理解してもらった上で導いてもらえることが、その道を目指す者にとって何よりの力となるのでしょう。

    氏は森林内の寺院で瞑想修行を続けていますが、かつてはタイの国土の70%が森林で覆われていたところ、今では森林伐採が続いて10%程度に減っているとの記載もありました。
    そのことで、長年続けられてきた森林僧院の伝統が脅かされる可能性も、指摘しています。
    すべてが移ろいゆくものだというのは仏教の教えですが、森林寺院の伝統が変わるのは、なにか大きなゆらぎが発生するような気がしてなりません。

    全ては無情であり、変わりゆくもの。
    その考えを基軸として様々に発展する師の言葉は、例えを用いてわかりやすく、時に厳しく、時に突き放すものではありながらも、仏教徒ではない人にも強く語りかける力を持っ

    ています。
    やはり優れた宗教家は、その生き方そのものと含有を含んだ言葉が、迷える人々を導いていくもの。
    全編を通じて、星氏の翻訳による、きれいで詩的な文章にまとまっています。

  • 世界的大ヒットだった"手放す生き方"の続編。
    今回は前作よりも高度なものとなる。

    内容は40の短編法話集で、それを六つの章にカテゴリー分けしている(無常、苦、無我、瞑想など)。
    一日一法話読むもよし、瞑想する前に読むのもいいだろう。

    ダンマが少しずつ理解されてくると、世俗との考え方や価値観のギャップが拡がってくるのは否めない。その時に在家僧の説法や本を読んでも腑に落ちるものがほとんどなくなってくると思うのだがいかがだろうか(本物の方の説法が聞きたいものだが、そんな方は表舞台には出てこないものだ)。

    そんな時にこのような"眼のある人"の法話はとてもありがたく、さらに修行を邁進させる起爆剤にもなるし、気づきも多いと思う。


    アーチャン・チャー老師は"常ならず"が口癖だったそうだ。
    お弟子さんはこの言葉しか言わない師に辟易していたようだが、やはりダンマはこの言葉に尽きる。
    無常と観ないから苦しむのであって、親が子供に大事なことを口うるさく言うそれと同じなのだ。
    釈尊も原始仏典で何度も説かれている。
    ”「一切の形成されたものは無常である」と明らかな知慧をもって観るときに、ひとは苦しみから遠ざかり離れる。これこそ人が清らかになる道である。”
    (ダンマパダ277 中村元訳)


    訳者は前作同様、タイ、ミャンマー関連の仏教書の翻訳家でもあり、修行のご経験もある星飛雄馬氏が担当。
    星氏の翻訳は解っていらっしゃるだけにたびたび膝を打つことうけあいだ。

    この本のサブタイトルは"苦しみの終焉"である。
    なんと希望に満ちた言葉だろうか…
    少なくとも苦しみの"軽減"につながる一冊である。

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