- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784905425960
感想・レビュー・書評
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一見科学書のようですが、スカイではなく仏教の「空」についての本。
仏教誌『サンガジャパン』でよく目にする石飛先生の作品集です。
ブッダと龍樹の仏教対話術というサブタイトルが気になります。
龍樹は、世界史の授業でも取り上げられた人物でありながら、あまり詳しいことを知らないためです。
まず著者は、自分が大乗仏教の立場にいることを明示します。
それで、テーラワーダ仏教の師とは思想が違う面もあるとのこと。
ブッダと龍樹の仏教の語り口について述べています。
2人とも相手に合わせた語りをし、その人を傷つけないように答えているとのこと。
誰の感情を害さずに新しい法を説くのは至難の業だったと思いますが、そのマイルドさが仏教思想の基本なのでしょう。
無常の思想は、「常にある」意識にとらわれた人々への逆説であり、本当の意味での自由をさすものだと語られます。
絶望を解くようでいて、実は無常の意識は執着のない幸せな境地を指し、積極的な生き方を招くというわけです。
また、西洋と東洋の考え方の違いが語られます。
西洋では、哲学や思想は思索に思索を重ねて苦悩の末にしぼり出されてくるものですが、インドでは、瞑想の中から出てくるもの。
キリスト教は、自己が主体的に神への愛を隣人へに施していく一方で、仏教は、自己(エゴ)を他に影響させないことを重視します。
それは、隣人を自分同様に愛したイエスと、自己を越えて他者を害さないようにしたブッダという思想の実践の違いにも表れています。
幸福に生きることを説いたフランスの哲学者アランとブッダとの共通点や、古代ローマのモラリスト、セネカについての言及もあり、興味深く読めました。
比較宗教的な内容にもなっており、もりだくさんの読み応えのある一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示