死刑のある国ニッポン

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  • 金曜日 (2009年8月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906605576

死刑のある国ニッポンの感想・レビュー・書評

  • 死刑制度存置派の藤井誠二氏と廃止派の森達也による対談。
    いつもなら森氏は迷いながら結論を探すのに、死刑制度に関しては「死刑」を書いたときから廃止という意見を突き通している。

    私個人は「死刑」を読んで以来、やや廃止派に傾いていたけれど、藤井さんの意見を読んで、いっそう揺れてしまった。
    でも、やっぱり森さんのいう性善説みたいなものを信じたいとは心のどこかで思っている。

    どちらかの意見を必ずしも選ぶ必要はないけれど、日本という国で生きていく以上、死刑制度については誰もが一度は考えるべきテーマだと強く感じた。

  •  真っ向から対立する2人の400ページにわたる対論。机上の議論でなく、死刑囚や犯罪被害者への豊富な取材経験もふまえ、いろんな角度で論じている。死刑の是非について、突き詰めて考える材料をふんだんに与えてくれる一冊。

     私は以前から、死刑は廃止すべきだと思っていたが、この本を読んで、その考えはさらに強まった。ただ、正反対の考えに至る人もいるだろうと思う。

     以下、覚え書き。

     死刑制度が犯罪抑止に役立っていないことは、データから明らか/2007年の殺人事件認知件数は戦後最低であり、治安は悪化していない/冤罪によって犠牲になるコストは最低限にすべき。命は戻らない/死刑囚1人あたりの年間経費は500万円弱で、100人なら5億円。決して高すぎないし、お金に換算する問題ではない/「殺すなかれ、殺させるなかれ」(ブッダ)。過去に起きた殺人の命は戻せないが、これからの死刑は止められる/被害者の応報感情だけが死刑の根拠なら、遺族が死刑を望まない場合や天涯孤独で遺族がいない被告の場合はどうなる。唯一の応報刑である死刑は、罪刑法定主義の放棄である。絶対に赦されない罪はあるのか。その罪への対価として死刑はふさわしいのか。

  • 最近、ハマって読んでいる森達也の対談。興味深く読んだ。

    僕個人は、死刑制度について現在コメントできるものはない。難しい問題だと思う。

    藤井誠二との対談たる本書はしかし、森氏の主張の展開としては他の本に比べるともうひとつだなあ、という感想を持つ。

    森氏の最大のよさは、対象テーマと自身の魂をぶつけての逡巡状態にある。そして、既成の価値観に簡単に与しない。オウムでも、部落でも、メディアでも、超能力者でも、森氏は揺れ続ける。

    本書における森氏はしかし、完全に決断しており、その決意はまったく揺るがない。そしてそれを宣言している。

    対談の場合、相手の意見を聞き、自説を曲げるある程度の覚悟がなければ、そこには対話はない。雄弁があるだけだ。互いに主張をぶつけあうだけだ。藤井氏は死刑制度廃止論から存置に転向し、今なお逡巡しながら森氏と対峙している。一方、森氏は「自説のほうが正しい」という確固たる確信があり、藤井氏の言葉には耳を傾けるけれども、俺の見解は変わりっこないよという姿勢は首尾一貫している。

    らしくない。

    これでは森氏の最大の武器である情感の揺れがスポイルされてしまう。彼が激しく主張すればするほど、らしくないなあ、と嘆息してしまう。

    そうはいっても、意見が対立する二人の対談という極めて難しい構図で最後までしっかり読ませるのはさすがだ。死刑存続と廃止のどちらがよりよいのか、決着は本書ではついていないし、藤井氏の論がより正しい、と僕が思っているわけでもない。そういう意味での瑕疵ではない。

    あとさきになったが、この後「死刑」を読むことにする。

  • 森達也「死刑」を読んで衝撃を受け、100パーセントではないながら、死刑廃止に気持ちが傾いていた私ですが、今回の対談では、また、大きく気持ちが揺れてしまいました。

    森さんと藤井さんは、旧知の間柄。根っこのところはかなり共通したものをお持ちのお二人なのに、藤井さんは死刑存置、森さんは廃止、と違う立場を取られています。
    藤井さんが、なぜ死刑を存続しなければいけないか、と説くと、うん、そうだよね、と思い、それに対して森さんが、でもね、と言われると、うん、それもそうだ・・と。
    とにかく、非常に私の気持ちが揺れてしまって、休み、休み、自分の気持ちとお二人の論点をすり合わせながら読み進みましたので、かなり時間かかってしまいました。

    ただ、似た根っこをお持ち、と思った反面、微妙にスタンスが違うんだなぁ、とも。
    藤井さんは、被害者遺族に寄り添う形で、ある意味、支援者というか、活動家の色合いが強く感じられるのに、森さんはあくまでジャーナリスト、大事な題材ではあるけれど死刑廃止運動家としての日々ではない、と感じたところ。
    また、今回、初めて思ったのですが、森さんが「理系的に」話を分析・整理して、本質だけを見ようとしているところに驚きました。

    藤井さんの話には頷けるところが多く、でも、森さんの視点から考察すると、「青い」と思えてしまうんですよ・・。

    今、なぜ死刑が廃止できないのでしょうか、という藤井さんの問いに、森さんは多数派につくという日本人の国民性メディアによって煽られるフェイクな危機管理意識、多くの人が死刑を概念的にしか知らないことと、三つの要因を挙げられています。
    これはそれぞれ知っていたはずのことなのに、改めて、ストンと頭の中に入ってきました・・・。

    森さんも藤井さんも、お互いを論破しようとは思っておられなかったように思います。
    議論の余地のある問題である、もっとみんなで考えよう、少なくともタブー視して目を背けているのはやめようじゃないか、という二人のお気持ちを感じ取れたのが収穫かな、というのが、ようやく読み終わった私の感想です。

  • 真面目な二人が死刑制度の是非について真面目に議論した本。ノルウェーの例は衝撃的。教育現場にいると、確かに「この子は悪いことをしたけど、この行為をするまでのバックグラウンドは愛情不足だからなあ」ってことがよくある、というかほとんど。しかし、それを制度化し国民が納得しているのはすごい。もっと調べてみたくなった。

  • 少し古い本だが、現在の日本の死刑制度について深く言及されているし、廃止派(森さん)と存置派(藤井さん)がガチンコ議論しているので偏り無い意見を知ることが出来る。
    どちらも死刑という命を扱う難しい問題に対して、考え尽くして出している結論だからこそ、ブレずに主張を突き通している。

    僕らはもっと日本の死刑問題に対して、知るべきだし自分の頭で考えるべき。
    僕がそうであったように、この本を読んでスタートするのでも全然遅くないと思う。

  • 私は存置派だったが、森さん話のほうが、論理性があり、藤井さんは情緒性が強く、
    死刑廃止に気持ちが動いたが、迷うばかりだ。

  • 「死刑賛成」派と「死刑賛成派」の対談。
    私は「反対派」。なぜなら、冤罪で殺される可能性もあり、
    「死刑になりたいから」と人を殺す人間が増えてきたからだ。死刑を廃止すれば、そういう考えもなくなるだろう。

    とても重いテーマなので、気軽に読める本ではない。だが、読む価値はある

  • 今現在日本にある死刑制度。あなたは廃止派?それとも存置派?じぶんはこっちと思っても、これを読むともう一度考え直してみたくなる。藤井氏と森氏の長い長い対話。答えは出ずとも考えていくべき事案。

  • 死刑廃止派と死刑存置派の対談本だが、基本的にはこの両者の言い分は変わらない。しかし、それなのになぜ両者の結論は違うのか。それは「罪を犯した人の命」についての考えが違うからである。

    この本は犯罪や刑について「一体、だからどうしたわけ?何が言いたいわけ?」と思いたくなるほど多角的な面から議論しているのと、同じ話が何度も出て来て結局すっきりとした一本の線にならないのは、「死刑」ということがこれだけ語り尽くしても尽くせない制度だからではないかと思った。

    ただ、正直、最終章だけ読んでもいいのでは?と感じたことも否めないが、長い前振りあってからこその最終章とも言えるような気がするし、なんとも評価しがたい本である。

    ただ、この二人の他の著書を読んでみると、この人達の発言の根本のところが分かるかも知れないので、何冊かずつ読んでみたいと思った。

  • 本書の中で、「廃止派」森の問いに対し「存置派」である藤井が答えを出し切れていない部分が二つある。
    一つは応報感情を死刑存置の中心根拠にすえた場合、被害者に遺族がいるかどうかで刑が変わってしまうのか、それは罪刑法定主義に抵触しないのか、という点。
    また一つは冤罪の不可避性の問題。
    抑止力という根拠が、もし実態を持たないのであればこの二つの論点はかなり大きなものとなってくる。

  • 「憎悪は人の心を内側から蝕みます。人を憎しみ続ける人生、誰かの死を願い続ける人生、それが豊かなはずはない」と言い、死刑廃止を訴える森さんと遺族に取材を重ねる中、論理を超えたところで存置派を貫く、藤井さんとの対談集です。
    たぶん、自分と同じように死刑や裁判、刑事事件などと直接かかわった事のない人は森さんが藤井さんを圧倒してるような読み感を抱くでしょう。でもそんな中でも折れない藤井さん。そんなのが印象的でした。
    しかも、廃止・存置両方に共通する今の司法の問題点。それもまた印象的です。
    もし、裁判員などの選ばれるような事があれば読んでみてください。

    あっ、こんな難しそうなのが嫌な人はこちら を
    http://ameblo.jp/no-ressentiment/day-20100621.html

  • 死刑存置派と死刑廃止派のお二人が激論を交わす本。
    死刑の意味、実情、冤罪、被害者感情などよく分かる。
    どってがいいのか悩んでしまう。
    でも、日本にこの制度があるなら、主権者である国民1人1人が考えないといけない問題だと思う。

  • 死刑廃止か存置か?単純な二択ではない。
    私は知識が少なすぎてはっきりと答えを出すに到っていない。

    結局は感情、情緒が選択するんだろう。

  • 死刑廃止か 存続か読んだ後も どちらが自分の気持ちかまだ答えが出せずにいますそれを考えることが 大切なのだと自分を甘やかしています。

  • 森氏の論旨はもっともで、読み進めると藤井氏は段々廃止に傾いていくように思えた。

    それでも私は廃止には反対だ。

  • 木曜(11/5)に『罪と罰』を読み、金曜(11/6)に『死刑でいいです』を読み、昨日はちょうどリクエストしてたのが届いたので『死刑のある国ニッポン』を読んだ。むずかしい、むずかしい、むずかしい。

    『死刑でいいです』は、「孤立が生んだ二つの殺人」というサブタイトルをもつ。16歳で母親を殺し、少年院を出て再び大阪の姉妹殺害事件をおこした山地悠紀夫(ことしの夏に死刑執行された)を追ったルポである。再犯を防止するヒントを見つけたいという思い、そして"他人に共感しづらく「反省」という気持ちを理解するのが難しい"山地の特性を理解し、そういう人の孤立を防ぐにはどうしたらいいかを考えたいという思いをもって続けられた取材をまとめた本。

    ひとつの論点は「反省なき更生」である。

    ▼日本社会はまず「反省」を求める。しかし、山地のように反省が難しい人には無理に迫るのでなく、再犯防止を優先した矯正教育で更生させるべきだという考えが出始めている。いわば「反省なき更生」ともいえる考え方だ。

    その後に、少しずつ反省の心を理解できるよう訓練できれば、悲劇は減らせるのではないか。「死刑でいい」と考えて人を殺す人間に、厳罰化は抑止効果がない。(p.227)

    『死刑のある国ニッポン』は、藤井誠二と森達也の対談集。『罪と罰』の鼎談のなかで、ずいぶん森達也がけなされていたので、その鼎談に加わったひとりと藤井と、森の対談は、どんな話になるのかと、半日ほどかけて読んだ。

    死刑廃止から存置への「転向」派だという藤井と、結論を出すことは苦手だけれどこれについてはもう惑わない、悩まないという死刑廃止派の森。

    藤井は、この10年あまりずっと、とくに殺人事件の被害者遺族の取材を続けてきた。

    ▼藤井 …被害者遺族を取材してわかったことの一つは、「彼らの究極の目的は死刑だ」という、社会の勝手な思い込みがあるということ。死刑廃止論者の大半もそう思い込んでおられたのではないかと思います。

     死刑という加害者への罰は遺族の方にとって最終的な「目的」じゃなくて「途中経過」。ぼくはよく「被害後」というコトバを使うのですが、遺族らが長い被害後を生きるうえで、いったい死刑は心境にどう影響を与えるのかということが、社会は全然わかっていないと思った。(pp.46-47)

    森は、得体の知れない、わけのわからない集団と思われていたオウムを、信者の一人を追うかたちで『A』、そして続編の『A2』というドキュメンタリーにまとめている。その、オウム以後の"セキュリティ意識"についてこんな風に語る。

    ▼森 …僕は「許せない」というフレーズがとてもシンボリックだと思うのだけど。最近では事件が起きるたびに、誰も「許せ」などと言っていないのに、メディアも政治家も一般市民も「許せない」と口走ります。ずっと不思議だった。何に対しての否定形なのか。

     最近になって気づきました。この否定形は、寛容だった過去に対してです。かつてなら許せたけれど今は許せないとの意識の表れです。このセキュリティ強化の意識のひとつの帰着点が、死刑判決と執行の増加です。(pp.144-145)

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死刑のある国ニッポンの作品紹介

裁判員制度が始まった-あなたは人を、死刑にできるか。真っ向から対立する存置派・藤井誠二と廃止派・森達也が、煩悶のなかで真摯に言葉をぶつけ合った緊迫の対話。

死刑のある国ニッポンはこんな本です

死刑のある国ニッポンのKindle版

死刑のある国ニッポンの文庫

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