超訳 小説日米戦争

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著者 : 佐藤優
  • ケイアンドケイプレス (2013年9月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906674534

超訳 小説日米戦争の感想・レビュー・書評

  • 元ネタは、先の大戦前の1920年に発行された小説となります。
    そちらを佐藤さんが超訳との形でリライトした1冊、表紙が印象的で。

    第1部がその超訳した小説部分、第2部がその小説に対する解題部分で、
    今の世相と絡み合わせながら、解きほぐそうとされています。

    まず、なかなかに耳に痛かったのは、小説の中のこちらのくだり。

     1.国家も民間資本も、将来の戦争に備えた技術革新を怠ってきた
     2.国際連盟を信頼するあまり、戦争の可能性を軽視してきた
     3.今後、国家も民間資本も、積極的に民間の発明家を保護奨励し、国民の発明心を奮起させよ

    結構、今の時代でも卑近に感じる部分はありませんか?
    “最先端研究が仕分けされたり”とか“戦争突入を止められない国際連合”とか。

     “(先の大戦前夜の)歴史的状況が現在、ふたたび繰り返されていると考える。”

    さて、これらの根底にあるのは『日米開戦の真実』でも述べられていた、こちらの状況。
    月並みですが“歴史はくり返す”とのフレーズが浮かび上がってきます。

     “国際政治を動かす「ゲームのルール」は、それぞれが正論をぶつけあうことではない。
      いかに味方を多く作り、国際世論の転換を図るかだ。”

    これを踏まえて「自由と繁栄の弧」や「セキュリティ・ダイヤモンド」を読み解くと、
    2013年からの、第2次安倍政権の外交戦略がいかに筋の通ったものであるかが、あらためて。

    ん、「世界には3カ国しかない」との視野であれば、“世界の2/3が敵”になるのでしょうが、
    そんなアレな妄想はさておき、実際には“世界の1%が敵性”なだけに過ぎません。

     “日本精神の真髄は何なのか、という親日保守の思想が確立されなければならない”

    佐藤さん、右派左派を横断する形で様々な論考を重ねられているせいか、
    たまに、どちらからも“コウモリ!”的な指摘をされているのを見かけます。

    政治信条的には、中道の右派と左派を行ったり来たりなのかもですが、
    個人的には、根底には保守思想があるとも思います。

    そしてあらためて真理と感じるのは、こちらのフレーズ。

     “優れた小説は自分の居場所をわからせてくれる力がある”

    いわゆる古典に分類される小説も、長く読み継がれているものは、
    大衆・純文問わずに、当時の世相を反映しているものだと思いますから。

    日本であれば、太宰や夏目、芥川、新渡戸、宮沢など、
    海外であっても、ドイルやトールキン、クリスティ、クランシーなどなど。

    手法としては、直喩・隠喩の差はあると思いますが、
    人々の心に響くのは、何かしらの自己投影ができるから、と思います。

    個人的には久々に、『沈黙の艦隊』、そして『紺碧の艦隊』『旭日の艦隊』を思い出しました。
    前者は手元にあるのですが、後者は久々に古本屋でも探してみますかね~。。

  • 戦前に流行した仮想戦記のうちの一冊を紹介している。戦前の仮想戦記のほとんどが対米戦だと聞いたことがる。ゆえに太平洋上での艦隊決戦にて趨勢が決まる話が多かったらしい。取り上げられた「日米戦争未来記」の戦争経過も同じような足跡を辿って戦いが繰り広げられる。実際の日本海軍はアメリカを仮想敵とし、太平洋上で日本に向かう米艦隊を迎え撃つことを前提として平時を過ごしていたため、この「未来記」が当時としては決して荒唐無稽ではなかったことが想像できる。
    原文の後書きに、「著者がこの日米戦争未来記において暗示したところのものが、果たして何であるかは、賢明なる読者の感解力にまかす」とある。当時における暗示とは何だろうか。それは一番は、日米戦わば日本の敗戦を避け得ずということだと思った。そんな都合良く在野から秘密兵器が誕生し日本が救われることがあるのだろうか。それこそ漫画の類の話である。日本が国際社会の中で舵取りを誤らないためにどうしたらいいのだろうか。原作者は国際連盟の平和構築能力や、徒に対米戦争熱を煽る思想から一定の距離を取ろうとしている。佐藤氏は現代への暗示として反知性主義や反米主義への警告と捉えているが、このことが佐藤氏の言う自らの考えとの親和性の高さなのだろう。

    日米必戦論に石原莞爾の「最終戦争論」があるが、大正期に多く出版されたこのような仮想戦記を独自の思想からさらに大きく発展させたものであることが分かる。

  • 猪瀬直樹の”黒船の世紀”か何かでこの本の原書の存在を
    知ったんだったかな?
    こういう形できちんと読めて嬉しかった。

  •  大正時代の小説で、樋口麗陽著の日米戦争未来記という書を現代語で表し、それから現代の日本の状況を理解しようとする意欲的な本である。原著は荒唐無稽な日米決戦ものだが、日本の第一艦隊が全滅するとか、電波利用の新兵器が活躍するとか、未来をけっこう当てているよね!と著者佐藤氏は云う。それは、原著者の樋口が、精神論など一切持ち出さず、技術開発の重要性を説き、冷静な観察力で世界を捕えるなど現実的で客観的なところがあるからと説明する。
     そして、この本が書かれた時代と現代は似ていると著者佐藤は指摘し、知的体力の低下が論理や命題の誤りに気付かず、浮かれた空気に流され、その結果として再び国の滅亡に至る危険があると心配する。
     史実に基づかず、事実を精査せず、自分で考えず、気に入った論で善悪を二分するような粗雑な議論を見聞きするだけに、知的体力の低下を懸念する佐藤氏の持論は同意せざるを得ない。

  • 幅広い知見に基づいた佐藤氏による分析がうならせる(歴史はこういうふうに解釈するのか)。
    そして、右傾化している日本の現状をますます憂える。

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超訳 小説日米戦争の作品紹介

西暦一千九百年代末期、日米戦争が愈々勃発。開戦まもなく、日本の主力艦隊は米軍により全滅さる。絶体絶命の祖国を救わんと、日本の石仏博士は艱難辛苦の研究により、電波利用空中魚雷、空中魚雷防禦機、空中軍艦の三大新兵器を発明。だが、しかし、米国艦隊の本土急襲には問に合わない!樋口麗陽作『小説・日米戦争未来記』は、大正九年に発表された空想小説。-日本が米国と今後どのように付合うべきかを、佐藤優が、鋭利な刃を用いて分析。

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