かなわない

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著者 : 植本一子
  • タバブックス (2016年2月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907053123

かなわないの感想・レビュー・書評

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  • 何かの拍子にECDのweb連載を見つけて、そこに綴られていた、彼と24歳年下の写真家植本一子の生活に強く惹かれた。彼女が書きつけていた「働けECD」というブログを読んだ。

    地方在住のわたしからすれば、物価も家賃も高く、助けてもらえるような人もいない(と彼女が嘆く)東京に、なぜ住み続けているのかなと思いながら、実はどこかで憧れる「しあわせな暮らし」なのかもと思ったりした。

    植本一子さんは、繊細で不安定で、いつも感情がコントロールできなくなると、爆発しては後悔する日々を送っている。それを包み隠さずweb日記に書いている。

    その赤裸々な内容に批判もあるだろうが、だからこそ彼女の日記は本になるのだ。タテマエならSNSで書けばいい。「普通なら書かない」から特別なのだ。良いとか悪いとかではなく、良いとか悪いとか言われる対象になることが、特別だし、本を出すということだ。

    彼女はそのあたりについてはしっかりされていて、大変だから稼がせてもらうというようなことを、どこかの対談かインタビューで言っていた。だからこの本を買おうと思った。

    内容は、一子ちゃんの、日々の気持ちの(激しすぎる)変化、母親との関係、育児の悩みや、ギリギリな子供への対応などが綴られている。これだけでもお腹いっぱいなのに、本書では外に恋人がいることが明らかにされる。しかもそれを夫である「石田さん」ことECDに打ち明けるのだ。

    一子ちゃんのひどさは、とことんで、自分がイライラしたらすぐに「離婚する!」と騒ぎ、あげく外の恋人は今回がはじめてではないという。

    そんな一子ちゃんをまるごと受け止める石田さん。ただ黙って。けして受け流さず、きちんと向き合って。いつも絶妙な距離で。でもそうでなければ、一子ちゃんはもっと辛いのではないか。支えてあげる、守ってあげるというのは、一子ちゃんには辛いのではないか。黙っていて、いつもと変わらない石田さんでないと、もっと苦しむのではないか。そう思った。

    ただ、子供の言うことやすることに余裕がなくなって、カッとして、彼女も子供以上に癇癪を起こす様子は、子供たちのことを思うと読んでいてとても辛くなる。

    落ち着くと別の感情も沸いてくる。

    育児に苦しむ母親を、助けてあげる人が必要なのだと、強く揺さぶられる。
    母親を救わなければ、子供は救われない。
    どんな母親でも、子供たちにとっての母親は彼女なのだ。

    しかし思うような助けがない彼女は、
    自分を責め続けた結果、自分と母親との関係を掘り下げて、深みにはまっていく。さらにそのモヤモヤを石田さんに向け始め、外に恋人を作ってしまう。

    子供もいて、あんなに献身的な旦那さんがいるのに、けしからんと思うけど、やっぱり石田さんとは「石田さん」と呼称する、絶妙な距離なのだ。夫婦になるとますますなのかもしれない。でも、一子ちゃんには石田さんしかいないのだ。彼女を全力で肯定して受け止めてくれるのは彼だけだ。もし仮に、他にいたとしても、きっと石田さんには「かなわない」。

    そして石田さんにとっても、植本一子はかけがえのない人に違いない。

    進行性がんの闘病中、石田さんの周りに無邪気な笑い声と笑顔があるのは、一子たゃんがくらしちゃんとえんちゃんを産んで育てているからだ。

    いろいろ言う人もいるだろう。
    だけども縁があり、家族になったんだから。二人ではじめて、4人で家族になったんだから。

    何があっても、大丈夫。
    きっとしあわせはそこにある。

    だから「叶わない」なんてことはない。

  • 著者のうまくいかない育児と不倫の話など。基本的に本人のブログを基にしており、「彼」との不倫の話も、子供の育児の話も本人の意思で書いてない部分もあるため、断片的にしか伺い知る事ができない。それが散漫な印象になっている気がするが、それでもこれだけさらけ出しているんだし、仕方のないことだとも思った。

    個人的な好みとして、ブログ形式で色々とさらけだしている文章より、書き下ろしの文章のほうが、考えている事がより伝わってくる気がして面白かった。ただ、最後の「彼」の暴れてる章については、なんつーか、著者のどうしようもなさがある意味一番でているように思った。

  • とても強い本だ、と思った。

    強さに負けそうで、なかなか読み進められず、まさに「かなわない」と思いながら読む。

    同年代の著者の気持ちは肌感覚ですごく伝わってくる。
    自由でいたい、自由でありたいと思う一方で、実際には自由のない生活、自由でいるつもりが、それは自由ではなかった、そんな生きづらさ、日々をふつうに過ごすことの難しさが。

    壮絶な内容を包み込むかのような優しく美しい装丁は、激しい感情をさらけ出す著者を見守るECDさんのように感じる。

    結婚もして、子どももいて、仕事もしている。なのにどうして?

    よくわからない何かと闘って、そんな思いに潰されそうになる。

    かなわない。

    「かなわない」というタイトルにどれだけの思いが詰まっているんだろう。
    これ以上、強く素直な言葉はない、と思った。

  • 本当に意味がわからないし、なんて身勝手で子供みたいな人なんだと思うけど目が離せない。
    昔の作家みたい。

  • こんな本は初めてだなと思った。

    外へ外へと出ていって
    人間関係を拡大しながら働き続けることと、
    小さな小さな家の中を守っていくということの
    両立の無茶さを感じた。

    働き続けるには、
    外からの刺激も学びも必要で、
    そのためにいろんな人に出会っていたら、
    そりゃ好きな人もできるわな、っていう話。

    夫婦ってなんなのか
    家庭ってなんなのか

  • ちょっと赤裸々な育児日記、くらいの気軽さで手に取ったら、とんでもなかった。
    どうしようもなく正直に、一生懸命に、自分であろうともがき続ける魂の記録だった。それも現在進行形の。
    息苦しくてしかたないのに、貪るように読み進めてしまうのは、彼女の言葉の隅っこの方に自分を見つけるからかな。ふとした言葉に、ぐっと込み上げるものがあり、何度も息を吐いた。
    .

    書かずには、表現せずには生きていけない人がいる。比喩的な意味などではなく、言葉そのまんまの意味で。そういう人をすごいなとか、しんどそうだなとか思うと同時に、すごい嫉妬の気持ちが沸き起こるのはなんなんだろう。
    .

    あと単純にめちゃくちゃうまいのです。日記形式の文章が。美文ではないし、だらだら書いてるような雰囲気で油断するけど、そこにある気持ちをフレッシュなままとりだして、濃縮果汁還元する言葉のチョイスとリズムに、書いてあることの重苦しさは横に置いて、こりゃ凄いわと感心したり。
    .

    もう、いろいろな角度からかきむしられ、ちょっとまだ感情がまとまらない。

    ここ数日の間に新刊がでたらしい。写真展も開催中とか。早く読みたい、写真を観たい。でも同時に思う。この何日か少しの隙間もこの本を開き、どっぷりつかってへとへとになって、やっと読み終わったのに、2冊目とは、、身がもたない。
    ー それでも、読んで、観にいってしまうのだろうけれど。

  • 途中まで、なんとも移入できなかった。
    でも読み終えると、これほど胸に残る作品は他に無いと確信した。
    まさに清も濁も丸抱えして七転八倒しながら生きる姿。
    飲み込みにくい本こそ、自分に何かを残す。
    この作品は、かさぶたにならない傷痕を残してくれた。
    これは強い。

  • 読んでてしんどくて辛かった…。
    前半は震災の時の気持ちの揺れが思い出されて辛かったし、全体的に自分と同じ年頃の子の母の暮らしとして全く違ってて、受け入れ難かった。
    終盤唐突に知らされる、夫とは別の恋人との修羅場。
    知ってる人や店が沢山出て来るので余計にどんな暮らしかがわかり、生活が苦しいと言いながら外食も買い物も気軽にするし、子供とつきっきりが恐怖で辛いとずっと言ってるし、こんなにも自分を優先している人を知らなくて驚いた。
    というか、隠せないんだと思う。
    子供がいたら、人目を気にしてもっと子供の可愛い描写を入れたりして取り繕うと思うんだけど、そういうのが一切なくて、良くも悪くも剥き出しに生きるしかできない人なんだなと思った。

    あと、育児が苦痛でしかないと言いながらもご飯は美味しそうで、実際はもっときちんとしてるのかもかとも思ったり。
    あと、何もかも黙ってそのままで丸ごと肯定してくれるECDかっこよすぎでしょ。

  • 植木一子さんの、日記を一冊日記まとめた本。なかなか内容が深く、子育て、不倫などが赤裸々に書かれている。子育てする上で、誰でも感じる子供に対する嫌悪感や、その後押し寄せるどうしようもない後悔。正直に書かれている分、重く感じる。

  • 一子さんの自由奔放さと石田さんの包み込むような優しさが対照的で、世の中には夫婦の数だけ違う形があるというけれど、これで許されている一子さんは端から見れば幸せなのだと思う。
    しかし、当の本人は毎日、家事や育児も辛く、挙げ句の果て好きな人もでき離婚を申し出るも断られる。
    この時の石田さんの「これ以上、自由になってどうするの?」の言葉が印象的だった。
    何かを変えれば自分も変わることができると信じているようにも見えるが結局は変わることなどできないのはわかっている。

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かなわないの作品紹介

2014年に著者が自費出版し反響を呼んだ同名冊子を中心に、『働けECD〜わたしの育児混沌記』(ミュージックマガジン)後の5年間の日記と散文で構成。震災直後の不安を抱きながらの生活、育児に対する葛藤、世間的な常識のなかでの生きづらさ、新しい恋愛。ありのままに、淡々と書き続けられた日々は圧倒的な筆致で読む者の心を打つ。稀有な才能を持つ書き手の注目作です。

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