カイヨワ幻想物語集 ポンス・ピラト ほか

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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907105037

作品紹介・あらすじ

『遊びと人間』の3年後、1961年にロジェ・カイヨワは物語「ポンス・ピラト」を発表する。無実のイエスを死刑に処してよいのか?ピラト苦悩のひと晩を通し、臆病な人間が勇気をもって正義を決断するメカニズム、宗教の本質、そして日本人にはわかりにくいキリスト教における十字架刑の意味についてカイヨワが"物語"という形式で考える。1962年コンバ賞受賞作。そのほか、大洪水のなかで神の不公平な殺戮を思う義人の物語「ノア」、ポロックの絵画を介した記憶のあいまいさに起因する小篇「怪しげな記憶」、肉体を離れた男の精神が究極の実在に達するさまを描く「宿なしの話」。カイヨワ作のフィクショナルな物語全4篇。

感想・レビュー・書評

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  • 短篇集で表題作の「ポンス・ピラト」は無実のイエスを処刑していいのか?と悩む話。「ノア」はノアの箱舟で生き残ったノアが神の責任を問うという奇妙な物語。

    大洪水から生き残ったノアは正しき人ゆえに負い目を感じ酒浸りになり、正しさゆえに主の不合理さに怒りその責任を問う、というキリスト教徒が読んだらどう思うの?という内容。
    無実のイエスを処刑していいのかと悩むローマ提督ピラトは、正義と信仰がせめぎ合う内容だ。


    ‘不合理故に我信ずる‘が信仰の本質なら、ノアもピラトも合理に留まった人間だった。合理ゆえにピラトはイエスを処刑せずノアは神の責任を問うた。という事実と違ったり伝えられた話とは違う、ありえたひとつの仮定を物語化したのが巧い。読み応えあった。

  • カイヨワと言えば「遊びと人間」(講談社学術文庫)や「メドゥーサと仲間たち」(思索社)を思い浮べるので、創作がどんな風に書かれているか興味深いです。

    景文館書店からの〈お詫び〉
     本書について、2013年4月1日に「漢字はほぼ総ルビ。対象年齢:中学生~」との文言を本欄に記載しましたが、ルビは最小限にとどめるよう、変更しました。
     本作品はロジェ・カイヨワの仕事の中でも珍しいフィクショナルな〈小説〉であり、また、宗教・倫理・正義といった興味深い主題にすぐれた寓意を示唆しもする〈物語〉です。この物語が持つ機能として読書後、読んだ人が、場の人間関係や空気に流されずに個人としての正義を決断する勇気を持つ、ということが少数でも起きるかもしれません。
     そのため、いつかどこかの図書館で手にとる小中学生にも読めるようにとの意図で、本文の漢字をほぼ総ルビとするつもりでした。
     しかし本来の読者である、カイヨワに関心があって読む大人にとっては不要なルビの多用が、可読性と作品の味わいを損なっている度合いが高すぎると判断を見直しました。本版では大人の読者を優先し、ルビを最小限にとどめています。
     どちらの形とすべきであったかについては、さまざまな考え方があるはずですが、誤った案内をして、申し訳ありません。
    http://keibunkan.jimdo.com/景文館書店の本/カイヨワ幻想物語集-ポンス-ピラトほか/

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著者プロフィール

(Roger Caillois)
1913年、フランスのマルヌ県ランスに生まれる。エコール・ノルマルを卒業後アンドレ・ブルトンと出会い、シュルレアリスム運動に参加するが数年にして訣別。38年バタイユ、レリスらと「社会学研究会」を結成。39–44年文化使節としてアルゼンチンへ渡り『レットル・フランセーズ』を創刊。48年ユネスコにはいり、52年から《対角線の諸科学》つまり哲学的人文科学的学際にささげた国際雑誌『ディオゲネス』を刊行し編集長をつとめた。71年よりアカデミー・フランセーズ会員。78年に死去。思索の大胆さが古典的な形式に支えられたその多くの著作は、詩から鉱物学、美学から動物学、神学から民俗学と多岐にわたる。邦訳に、『戦争論』、『幻想のさなかに』(以上、法政大学出版局刊)『遊びと人間』、『蛸』、『文学の思い上り』、『石が書く』など多数。

「2018年 『アルペイオスの流れ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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