安全という幻想: エイズ騒動から学ぶ

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  • 聖学院大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907113155

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  • 1985年帝京大学の外来担当医が手首関節の出血で来院した血友病患者へ非加熱濃縮製剤を投与したことが原因で患者がエイズで死亡した
    帝京大学の第一内科長の安部医師は業務上過失致死で起訴された
    5年に及ぶ裁判で無罪となった

    ・当時の血友病患者にとっては福音とされていた製剤がHIV感染を引き起こした
    ・真実がわからない、また不確実な中で現場では進めざるを得ない医療がある
    ・そんな中、真実を追求するのではなく、個人に責任を転換する形で和解とされた
    ・ジャーナリズムの人権を無視した個人攻撃、犯人探しが正義となった

    どうすれば良かったのか
    自分の中では答えがない
    真実を追求するシステム作りが必要か

  •  東大医学部卒の著者が厚労省生物製剤課長を務めた1982−84年、まさに米国から血液製剤によってHIV/AIDSがもたらされた。
     未知の病原体に対する科学者の見解、非加熱製剤投与者や同性愛者に発生する免疫不全と死、血友病患者への非加熱製剤の投与の是非などに絡む関係者の様子が詳細に綴られ、渦中において不確定的な知見しか持ち得ない状況の中での意思決定の難しさを切々と語っている。
     本書は2015年に刊行され、著書は国民や政治家、ジャーナリストのポピュリズムへの傾倒について警鐘を鳴らしているが、図らずも、この数年で世界にポリュリズム政党の躍進を見ている。
     著者は本書の刊行後数ヶ月で逝去された。

著者プロフィール

郡司 篤晃
1937年茨城県水戸市生まれ。1965年東京大学医学部卒、医学博士。1970年より東京女子医科大学日本心臓血圧研究所助手、講師、助教授を経て、1975年より厚生省医務局総務課、課長補佐。その後環境庁、鹿児島県衛生部長、薬務局生物製剤課長、保健医療局健康増進栄養課長を経て、1985年より東京大学医学部保健学科保健管理学教室教授。1998年より2014年まで聖学院大学大学院教授。1987年「医療の質に関する研究会」を立ち上げ、2004年から2014年まで理事長。

「2015年 『安全という幻想 エイズ騒動から学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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