「4分33秒」論 ──「音楽」とは何か (ele-king books)

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著者 : 佐々木敦
  • Pヴァイン (2014年5月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907276133

「4分33秒」論 ──「音楽」とは何か (ele-king books)の感想・レビュー・書評

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  • 【分類】762.06/Sa75
    芸術のコーナーに並んでいます。

  •  いやしくもクラシック音楽ファンを自認する者なら、20世紀音楽に関心がなくともジョン・ケージの名前くらい知っていようし、その代表作が「4分33秒」だということも承知のことだろう。ただし彼らが「4分33秒」を聴いたことがあるとは思えない。いや、20世紀音楽のファンだって聴いたことがあるとは思えない。
     というのは半ばジョークで、いったい「4分33秒」を聴くというのはどういうことなのだろうか。
     単純に聞こえないじゃないかというのは浅薄な理解であって、ケージはそこで何も聴くなと言ったわけでもなく、聞こえないことを体験しろと言ったわけでもなく、聴き方を変えろといったのだというのが、ひとまず「4分33秒」のコンセプチュアルな理解である。それを庄野進は聴取の解釈学から聴取の詩学への転換と述べたが、「4分33秒」においてはそれまで楽音と思っていなかったものを音楽として聴くといういかにもケージらしい哲学が開陳されているのであり、これを代表作とみることには一定の正当性がある。
     しかしなぜ「4分33秒」以降もケージは作曲を続けたのか。環境音を聴けということだけなら、なぜそれは4分33秒でなければならないのか。この点については4分33秒という枠の中に何か出来事が起こるという構造を有しているからだということを近藤譲は述べている。

     すでにあちこちで語られてきた「4分33秒」であるが、本1冊をこれにあてた論考というのはさすがになかったのではないか。2008年、佐々木敦が彼の私塾において5回にわたって行ったレクチャーの記録である。1回は3時間。つまり4分33秒のための15時間。語った内容はほとんど手を加えていないという。
     著者は聴取体験の変容、枠と出来事といった先駆者の論考を引きつつ、「4分33秒」の問題圏をケージが当初意図していたであろう点よりも先に推し進めようとする。

     もし、「4分33秒」の目的が聴取態度の変革、認識論的な変化にあるなら、それは1952年にデイヴィド・テュードアがこの曲を初演したときにしかない。聴衆はピアノの前に座った演奏者が蓋を開けて、しかし何もしないことに訝しがりながら、しかしそのうちに会場に満ちているあらゆる音に耳をすますようになる……。著者はしかしながら聴衆は「4分33秒」が何かはリアルタイムには理解しなかったろうから、遡行的に「作品」が生成されたのだろうと考える。他方、現代の聴衆が「4分33秒」を聴いたとしても聴衆はそのコンセプトをすでに知ってしまっているから、それは「4分33秒」の哲学や思想の再確認に過ぎない。
     そして聴取という問題とは別に考えてみようとする。それは時間の経過ということである。時間芸術のもっとも核となるものの抽出ということになろうか。「4分33秒」という時間が流れるということ。
     評者は面白く読んだが、「4分33秒」という時間が流れるということ、リアルタイムに音楽なり出来事を体験するということに、著者はいささかナイーヴすぎるのではないかと思う。まさにベルグソン的なのだ。いったい我々は「4分33秒」という時間をリアルタイムに体験できるのか。中島義道もいうように「4分33秒が経過した」と事後的にしか認識できないのではないか。もちろんケージはリアルタイムに体験が可能と思っていただろうが。

  • 4分33秒。話で聞くにはインパクトのある曲だけれどそれだけじゃない。無とは、沈黙とは、音とは、音楽とは。常識とか普通と言われる概念を根底から疑問とし、その一曲と対話する。
    分かりやすい言葉で咀嚼された理論はすんなりと心に染み込むし、押しつけがましくない展開はそこらの理論書の小難しいイメージをあっさり塗り替えた。
    とにかく一度、無響室体験をしに行くことを決めた。

  • ジョン・ケージという、これはもう「思想系」と言ったほうが早い存在。そしてその括弧つき作品『4分33秒』から受けた「認識の転換」には計り知れないものがあるが、その聖典である『小鳥たちのために』にならぶよいテクストが出た。
    わたしの活動はこれでまた破壊され刷新される。それがわたしにとっての『4分33秒』への向き合い方であり、そのくらい大きなことなのである。

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