クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人姉崎等

  • 木楽舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907818142

作品紹介・あらすじ

アイヌ最後の猟師の言葉、そこに生き残るための知恵がある。 大きなクマなら安心だ。危険なのは人間の食べものの味を覚えた若いクマ。単独で40頭のヒグマを仕留めたアイヌの老狩人が重い口を開いた。これまで、誰も語ることのできなかったクマの本当の姿が、半世紀を超える猟師経験にもとづいた豊かな表現で語られていく。聞き手は、アイヌ語研究者であり、『NHKスペシャル』『生きもの地球紀行』など数々のドキュメンタリー番組を製作する片山氏。3年におよんだ最後のインタビューを終えて帰ろうとする片山氏に対して、老狩人は語りかける。「クマに組み伏せられても生き延びる方法がある」と。絶体絶命の場面に遭遇しても生き残る術とはどのようなものなのだろうか。

感想・レビュー・書評

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  • 近年、札幌市内でもヒグマの目撃例が急増している。
    北海道では昔から、ヒグマに人間が襲われるという事件が実際に起こっており、獰猛な生物であるとの印象が強い。
    しかしアイヌ民族クマ猟師の姉崎さんの見解では、ヒグマは人間を恐れているとの事なのだ。開発やレジャーのため、人間の方が本来のヒグマの生息地域に近づいており、ヒグマと人間の距離が近づきすぎた場合のみ、防衛本能により仕方なく人間を襲ってしまうのだ。
    ヒグマと人間の共存のルールを破っているのは、常に人間の方だという言葉が心に残った。

    本書はインタビュー形式で進んで行くが、エピローグで聞き手の片山さんと姉崎さんの印象的なやり取りがあった。
    片山さん「運悪くヒグマが覆いかぶさって来た場合は、諦めるしかないのですか?」
    姉崎さん「クマは人間を齧ろうと口をあけるから、クマの口の中に手を突っ込んでベロをつかんで押したり引っ張ったりする。」

    ・・・・・・・・無理無理無理無理!絶対無理!!

  • ○「クマに会ったどうするか」 姉崎さんのすすめる一〇力条。

    (まず予防のために)

    一 ペットボトルを歩きながら押してベコベコ鳴らす。

    二 または、木を細い棒で縦に叩いて音を立てる。

    (もしもクマに出会ったら)

    三 背中を見せて走って逃げない。

    四 大声を出す。

    五 じっと立っているだけでもよい。その場合、身体を大きく揺り動かさない。

    六 腰を抜かしてもよいから動かない。
    七 にらめっこで根くらべ。

    八 子連れグマに出会ったら子グマを見ないで親だけを見ながら静かに後ずさり。(その前に母グマからのバーンと地面を叩く警戒音に気をつけていて、もしもその音を聞いたら、その場をすみやかに立ち去る)

    九 ベルトをヘビのように揺らしたり、釣り竿をヒューヒュー音を立てるようにしたり、柴を振りまわす。

    一〇 柴を引きずって静かに離れる (尖った棒で突かない)。

  • 名著。感情論でない現場主義のヒグマ論。生き残るための知恵もあれば、クマへの深い愛もある。その奥深さに刮目せよ。
    文庫判も出ているが、最初に単行本で出会った時の感動は忘れられない。

  • アイヌのヒグマ猟師さんへのインタビューまとめ。
    ヒグマと対峙している人ならではのコメントが興味深い。

    母グマは子グマに雪の滑り台を作り遊ばせる。早春に身体を慣らすためか。親がやるから子が真似る。
    大きいクマは安心。悪さをしないから大きくなれた。
    クマに追われたら大声を出せ。
    クマは煙草の臭いを嫌う。ヘビも嫌う。
    手負いのクマは死にものぐるいだから一番恐ろしい。
    人を食べたクマは駆除するしかない。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:489.57||A
    資料ID:50200332

  • ヒグマには、「止め足」という行動があるそうだ。ハンターがクマの足跡を追って行くと、それがふつっ、と消えてしまうことがある。ある所まで行ったら、自分の足跡をなぞって戻り、ハンターにわからないように横に逸れて逃げて行くというのだ(手負いなどの場合は、途中で待ち伏せをしていることもあるという)。非常に知恵のある動物なのだ。

    この本は、単独行でヒグマを40数頭も仕留めたという著者の語りを、アイヌ関係の映像作品を多数手がけている片山龍峰という人が聞き書きしたもの。「クマが狩猟の、いや人生の師匠」と言い切る著者の貴重な体験と見識には、固唾を呑むほどの迫力がある。

    さてしかし。こういう本を読むと、本を読むという行為にふと疑問を抱いてしまう。「体験」を活字で追体験して、わかったような気持ちになることに、何ほどの意味があるだろうか?

  • 頻繁に山奥へ遊びに行くので興味がある内容だが、半分までしか読めなかった。どうしても5ページ読むと眠くなって先に進まない。
    おそらくあまり編集しないで、インタビューしたまま書き起こしているので、内容が良くても文章が読みにくいのだと思う。
    ・クマに会ったらダッシュせずに大声を出して威嚇する
    ・襲われたら何でもいいから口の奥に突っ込む

  • ゴールデンカムイに触発されて、旅先で衝動買い。
    姉崎さんの強かさに脱帽。
    現在、生きているアイヌの文化は存在しない。
    いくら文献が残っていたって、その風習を語り継いでいる人々がいたって、昔のように暮らしを再興させることは不可能だろう。
    けれど、長年培われた土着の知識は今でも生きるものが多いし、民俗的な信仰は、自然と共存するための合理的な考え方であったりする。
    先住民の尊い文化を、現代の生き方に擦り合せるということを、もっと大きく取り上げても良いんじゃないだろうか?

  • 逃げないこと

  • いい本とはこういう本だなと思った。語り部の方も凄い人だが、この人の話を本にしたいと一念発起した聞き書きの方も偉い。

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