- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784907902117
作品紹介・あらすじ
テレビ史上最高視聴率96%!
鉄道王・小林一三の実弟にして「聖地」後楽園を率いた国粋主義者、
稀代のフィリピン人興行師と共に暗躍した裏社会の顔役、
キリスト者として平和の架け橋となった東洋王者、
メディア王・正力松太郎、そして昭和の妖怪・岸信介…
関係者の証言や資料をもとに、大戦中100万人以上が
犠牲となったフィリピンとの国交回復をめぐる葛藤と交流の軌跡を描く。
復興期の日本を熱狂させたボクシング興行に、
見果てぬアジアへの夢を託して集った
男達の実像に迫る、もうひとつの昭和史。
感想・レビュー・書評
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第33回大平正芳記念賞
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極めて魅力的なタイトルに惹かれてその意味するところを深く考えずに手に取ってみた作品。大東亜とあるけれど実質的にはボクシングによる第二次対戦後のフィリピンとの国交回復物語。たまに太平洋戦争は欧米の植民地からアジアを解放するための正しい目的の戦争だったという説を唱える人がいるけれども本作を読めばそれは少なくともフィリピンに関してはまやかしだと分かる。個人的には日本があの当時やったことは純粋な侵略行為だし当時アジア解放を唱えた人がいたかもしれないがそれはあくまで少数はであっただろうと思う。大勢が関わっていたのだから同床異夢というかいろんな意見はあっただろうけど全体としては侵略に違いない、とそう思う。そして欧米化がいち早く進んだ大日本帝国はアジアの先駆者、盟主として振る舞ったわけだがアメリカの植民地であり少なくとも首都マニラについては当時の日本より欧化が進んでいたフィリピンはいわば目の敵にされ酷い目にあった。5人に1人しか生還できなかった日本軍も悲惨だがそれに否応なく巻き込まれたフィリピンの戦後日本に対する目は極めて厳しく日本を反共の砦として活用しようとした米国の仲介も効かず、日本の大使も当事のフィリピン大統領に会えない状況で日本人ボクサーだけは現地人と交流が図れた、それがいかに国交回復に貢献できたか、という作品。多過ぎる脚注が邪魔で読みにくい部分はあるけれど裏社会の顔役や大物政治家、国粋主義者などが暗躍する国際政治と興行世界の交わりは非常に興味深い。非常に面白い作品でした。
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毎日新聞コラム掲載pocketに関連記事
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[拳と政治と思惑と]戦後に日本とフィリピンとの国交回復がなされる以前から,両国の選手らを交えて行われていたボクシングの東洋選手権。携わった選手,興行師,そして政治家らは,そのイベントにいったいどのような思いを託したのか......。スポーツと戦後社会の関係の新たな側面に光をあてる意欲作です。著者は,スポーツ社会学を専攻し,関東学院大学の兼任講師を務める乗松優。
ボクシングという横糸を通すことで,戦後の日本社会の今まで知らなかった側面がここまで明らかになるのかという点にまず驚き。東洋選手権という乗り物に様々な思惑が乗っかり,結果として非常にユニークなイベントになったことがよくわかります。スポーツと政治の関わりについて考えたい方にはぜひオススメの作品です。
〜東洋選手権を支えていた選手の存在を,仕掛け人たちの理想を叶える手駒として単純に捉えることはできない。...(中略)...彼らの語りに見られる深い内省は,戦後社会の再建に邁進する日本の「内向き」の歴史観を離れ,フィリピン人や日系移民が占領や戦争という過去とどう向き合ってきたのかを思い起こさせると共に,復興の名の下に忘れ去られつつある過去を浮き彫りにしてくれる。〜
そういえばボクシングの試合って最近見てないな☆5つ -
素晴らしい熱量.