- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909812537
作品紹介・あらすじ
「この作品の面白さを誰かに伝えたい!」
そう思ったら、本書を開いてみてください。
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大学は「感想文」では許されない
レポートや論文を書くことが要求されます。
大学の文系学部を意識している高校生にも
「文学批評」の基礎からわかる本書をお勧めします!
感想・レビュー・書評
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P193『読むという行為は、自分たちが意識するよりも多くの感覚を働かせた営みであり、複数の経路で伝達される感覚情報を組み合わせて受け止める、マルチモーダルな営為。』
読んだ本について述べるとき、さまざまな切り口がある。
作家についてなのか、作家を取り除いた作品のみなのか、時代背景なのか、それを読む私たちがどう感じたのかなど。
私たちがどう感じたのかを文章にするとき、それは「感想文」と言われることが多いが、どうも「文学批評」との違いがわからない。
そんな「批評テイストで書いたつもりの感想文」を書く自分にはぴったりの本であり、とりあえず2度読み終えたので、ここに感想を残そうと思う。
冒頭でも書いた通り、作品に関する批評とは、古くから存在しており、多くの学派が、多角的な解釈を通じて研究を重ねている。
文学を取り巻く環境は、ここ数十年で急激に変化しており、今では家から1歩も出ることなく、電子書籍という形で本を買える時代になった。
そうでなかった時代、本を買うと言う行為は、特権階級のみが許されたことであり、「美的センスがある人間」が批評することが多かった。
しかし、批評する以上、それは客観的な尺度がなければならず、そうして、作家論、ニュークリティシズム、読者論、構造主義、イデオロギー批判、メディア論へと、分派して行くこととなる。
それぞれの切り口は当然、メリット・デメリットが存在していて、どの手法を使っても、1つの作品全てを語り尽くすことはできない。
だが、これらの手法を使うことで、文学批評の難易度は下がり、また、独自の理論ではないため、感想文になりにくい特性がある。
この本を通じて、さまざまな方法があることを知り、今後の感想を書く際には多く役立つと感じたが、最終章にある通り、「文学批評は、不可逆的な影響を及ぼす」という言葉は、決して忘れてはいけないと感じた。 -
文学批評という難解な概念について、さまざまな視点から分かりやすく分析している。専門用語をほとんど使わずに解説しているのがありがたい。私にも文学批評が書けるような気がしてくる。
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文学批評の概論を平易な言葉で学べる良書。字も大きく、文章も論理的かつ明快でとことん読みやすい。文学批評というジャンルに疎かったのでかなり面白かった。
文学批評にも型があるというのがまず目から鱗だったし、それぞれのやり方も面白い。それに、読み進める過程で何度もどこかで見たようなサンプル文章に出くわすのにも驚いた。例えば構造主義やら各種イデオロギー批判、読者論など。フェミニズムおよびポストコロニアル批判的な視点は当たり前のように自分の感想文にも出てくる。つまり読んでいると実際にそう「感じる」。まるで批評の型が自分の中にプリインストールされているかのように。サイードを一度も読んでいない自分のような人間にとってもオリエンタリズム批判がすでに普通のことになっていると思うと批評のパワーはすごい。直で読んでいない人間にまで影響を及ぼすとはまさに政治だ。
批評家というのは御意見番であり、民意と政治を動かすアジテーターみたいなものだったのだ。
もちろん作家に政治力があるのは分かる。人は世界を物語形式で認識して生きる動物だからこそ、深く人を感動させ、動揺させるような物語を作り出す作家には剣よりも強い力がある。一方で評論家は物語の「読み方」を読者に指南する。権威があればなおさらパワフルに働くのだろう。マスメディアとジャーナリズムとプロパガンダだけが政治の道具ではないのだなと認識が改まる本だった。 -
記録
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【読書メモ】
前著「文学のトリセツ」からより一層踏み込んだ文学批評の入門書
前著ではだれもが知る「桃太郎」を例示として取り上げていてわかりやすかったので、その点今回はより一歩本格的
ただ、帯にある「この作品の作品の面白さを誰かに伝えたい!」の文句から個人的な面白さを表現する手法の解説と思っていたが、文学批評本来の社会的客観的な価値を伝えるといった内容でした
そういう点ではちょっと期待はずれ
【参考になった点】
【以下再読のための備忘】
・自分の感想に客観性を加えるための批評力
・一定の手法を学び、次にまねる、スタイルをぬすみ、身体にたたき込む。型を身につけ、自分で書けるようになる
・作品論:作家の情況から作品を分析する
・解釈:作者が想定した作品の意味
・批評:今生きている私たちにとっての作品の意義
・マルクス主義批評:社会的・政治的・経済的背量のみ重視
・個人の経験≠全体的差別:誤った固定観念
・空白部分=読み進めることで解決=新たな空白部分
・「期待の地平」
・好みでは優劣を決められない
・支配のセンス→社会的に承認され、定着した理由 -
入門書としても、文学批評史としても良くできているのではないか。個々のつまらない点に突っ込むのではなく、概論として、気になる点は原書に当たればよいわけだし。六つに体系付けて話をまとめて、その相互の関連も明示しているし、読みやすい
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女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055864
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文芸批評というものが一体何を目指しているものなのか知りたいと思い、本書を手に取りました。
「感想文から〜」というタイトルで一見how to本に見えてしまいますが、中身は引用・注釈もしっかりついた大学教養レベルでも使えそうな文芸批評入門です。
作者・作品・読者という視点から文芸批評の手法の広がりが見渡せる上に、各手法による批評実践の例が親しみ深い作品(ごんぎつね等)を例に示されており、自分で批評文を書いてみたくなるような本でした。
文体もソフトで読みやすく、「批評ってなに?」と思っている人は手に取って損のない著作だと思います。 -
ツヴェタン・トドロフの理論、ちゃんと読んでみたくなった。作家主義についても詳しく書いてあるのが良い。
(^_^)/
>ゆうママさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
僕も、以前は、ら抜き言葉や「全然〜」の後に否定以外の言葉が入るのに、なかなかつ...
>ゆうママさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
僕も、以前は、ら抜き言葉や「全然〜」の後に否定以外の言葉が入るのに、なかなかついて行くことができませんでした。
今では、変化するもの、という形で長い目で見てます。
この意味の変化について、国語辞典を編集されている方が書かれた、『悩ましい国語辞典』という本が、大変おもしろかったので、こちらにて紹介させていただきます。