ふしぎなたね (美しい数学 7)

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  • 童話屋
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784924684676

感想・レビュー・書評

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  • 表紙を一枚めくると、もうお話がスタートしている。
    一見昔話風で、実は数学の絵本。でもそれだけじゃない。
    これはなかなか奥が深いお話で、色々な読み方が出来そうだ。
    数学の好きな人も苦手な人も楽しめそう。

    「むかしあるところに」怠け者の男がいて、仙人から「ふしぎなタネ」を2個もらう。
    1個焼いて食べれば一年間お腹が空くことはなく、1個を地面に埋めておくと次の秋には必ず実って2個のタネが収穫できるという。
    さて、はじめの数年間は仙人の言うとおりにしていた男だったが、ある年に気が付く。「このままだと いつまで たっても おんなじだ」。

    そうそう!タネを2個とも埋めれば次は4個の収穫があり、そのうち1個だけ食べて3個埋めれば6個の収穫になる!そして、ここから計算が始まる。

    気づいてすぐ実践し、試行錯誤を繰り返しながら家族を増やしたりもしていく。
    その10年間が劇的で、増やすことによる喜びもあり、増やすだけでもダメなのかと気づかされたり。さてさて、この計算が最後まで出来るかどうか!
    それぞれの場面ですべてのタネが絵で描かれているので、それを数えれば答えが出る仕組みだ(笑)。でも紙と鉛筆を使わずに答えが出ると、妙に嬉しくなる。

    掛け算が授業に出てくる中学年以上向き。約8分。
    でも決してそれだけではない。
    成長のためには同じことの繰り返しではなく、自ら新しいことを実践すること。
    生産業に携わる人たちは、このようなことが日常なのだと学ばされるし、おまけに、災害に遭った時はとにかく命を優先しろとまで教えてくれる。
    なんとまぁ中身の濃いお話だこと。
    ラストの一ページなんて、ほとんどミレーの『晩鐘』である。
    安野さんによる「あとがき」まで、ぜひぜひ。

    • nejidonさん
      vilureefさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。
      またお話できて、とっても嬉しいです(♡)

      以前のアイコンの子は...
      vilureefさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。
      またお話できて、とっても嬉しいです(♡)

      以前のアイコンの子は、頭にミカンを乗せていた子ですね。
      あの子は20歳の誕生日を目前にして先々月亡くなりました。
      もうね、あまりにも悲しくて悲しくて。
      写真を見ていても泣けて仕方がなくて、それでアイコンを替えました。
      分かりにくくてすみません。
      ブクログはアイコンを目印にしてますから、替えると探せないんですよね。ゴメンナサイ。

      今度の子は我が家の末っ子で(それでも8歳)、真っ白でオッドアイです。
      無邪気な甘えっこで、一緒に遊んでいると、前のアイコンの子を
      亡くした悲しさをしばし忘れさせてくれます。

      安野さんのこのシリーズは、算数好きになるものが何冊かあります。
      シリーズでまとめてあると、図書館で探しやすいですよね。そうであると良いのですが。
      佐藤さんの本は残念なことにこちらには置いてなかったです。
      今度行ったときにリクエストしてみますね。

      vilureefさん、日々の暮らしもブクログも、順調な時ばかりではありませんが、
      細々とでも続けていきましょうね。
      2017/06/17
    • vilureefさん
      そうでしたか…
      20年間一緒に人生を共にした猫ちゃんを失くすとはさぞかしお辛かったでしょうね。
      私も1年以上たっても思い出すと涙が出ます...
      そうでしたか…
      20年間一緒に人生を共にした猫ちゃんを失くすとはさぞかしお辛かったでしょうね。
      私も1年以上たっても思い出すと涙が出ます。

      でもその悲しみを癒してくれるのもまた猫なんですよね…
      末っ子猫ちゃん、甘えん坊なんですね。
      さぞかし可愛いことでしょうね〜(o^^o)

      今や空前の猫ブームですよね。
      やっと時代が私たちに追いついたのかしら?(笑)
      2017/06/17
    • nejidonさん
      vilureefさん、優しい言葉をかけていただき、また涙が・・
      皆さん同じかと思いますが、自分の身体の一部のように思っていたのですよ。
      ...
      vilureefさん、優しい言葉をかけていただき、また涙が・・
      皆さん同じかと思いますが、自分の身体の一部のように思っていたのですよ。
      いずれ来る日だとは頭で分かっていても、心が受け止めきれません。
      時間をかけて、もういないという現実を認めていくしかないんでしょうね。

      猫ブームは嬉しいことですが、複雑な部分もありますね。
      よく見に行くペットショップで、急激に猫が増えまして。
      結局金儲けか!とツッコミを入れてます。
      ちなみに、我が家の子たちはみんな野良にゃんでした。
      まぁ、一緒に過ごした時間の大切さは、出自なんて関係ないですけどね。
      末っ子のオッドアイの子、今も私の膝の上ですよ♪(^^♪


      2017/06/18
  • 数学でもあり、物語でもあり、人生訓でもある…
    紙とペンを準備して、さあページを開いてみよう!

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    小3娘に読み聞かせ…というより、物語を読みながら、たねがいくつ増えたのか計算しながら読みました。
    計算しなくても、読み進めるのにまったく支障はないので、読んでいると自然に計算したくなってしまうので不思議でした。
    娘は一桁×一桁のかけ算までは習得済みでしたが、この本を読んでいくうちに二桁×一桁の計算も理屈が自然とわかったようで、足し算も途中交えながら最後まで計算していました。
    もちろん、かけ算がまだわからない子も、最初のうちは足し算である程度できますし、足し算がわからなくても絵のたねを数えて楽しめるので大丈夫です。
    また、計算するときは文章の意味をしっかり理解しないとひっかかってしまうのですが、だからこそ娘は、いつもにも増して読まれる文章に集中していました。
    そして読み終えたとき娘は「(計算しすぎて)頭がいたくなった~パンクする~」と言っていました(笑)

    ちなみに、娘とわたしが計算しながらこの絵本を読んでいたところ、中1の息子も興味を示しました。
    しかし、思春期でへそ曲がり中な息子は、わたしたちと一緒に計算するのではなく、あとでこっそり絵本を開いて、ひとりで計算していました(笑)

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    計算上はずっと増え続けるたねですが、たねを植えるのは地球の上なので、自然の力によって状況が一変してしまいます。
    計算上でも物語上でも、この自然の脅威が一番のミソとなっていて、このエピソードによってよみては、人間の思い通り、つまり計算通りにすべてのことが運ぶとは限らないことを教わるのでした。
    そして、私利私欲にしがみつき、たねをどんどん増やし続けることよりも、いざというときはそれを捨てて、つまり自分の私欲を捨て、自分の命と一握りのたねを守るために脅威から逃げることが必要なのだと、読み終わって痛感したのでした。

    計算(数学)の本でもあり、物語の本でもあり、自然と人間のつながりを教えてくれる本でもあり、人生訓でもあり…、こんなにもたくさんの要素が入っているにも関わらず、こちゃついた印象は一切ありません。
    むしろ、小さな子どもから大人まで、本当に老若男女問わずにじっくり絵本の世界に没頭できるとてつもない絵本です。
    読んでいると絶対に計算したくなるので、ぜひ紙とペンを準備してから読み始めてみていただければと思います。

  • 画家・絵本作家の安野光雅さん。美しい細密な絵が印象的ですね。
    「旅の絵本」シリーズや「ふしぎなえ」の系列、はたまた『平家物語』や『即興詩人』などの文学作品の絵本化など、さまざまな作品がありますが、1つの大きな柱として、科学や数学にかかわるものもあります。
    これはそんな数学を絵本にした「美しい数学」シリーズの1冊です。

    冒頭はこんな風に始まります。
    むかし あるところに なまけものの男が すんでいました。
    冬の日のこと 男がぼんやりと 空を ながめていると
    せんにんが でてきて
    「ふしぎな タネを あげよう。そのタネを 1こ やいて たべれば
    1年かんは もう なにも たべなくても おなかが すくことはない。
    また この タネ 1こ 今 じめんに うめておくと、
    らいねんの 秋には かならず みのって 2こになる」
    といって ふしぎな タネを 2こ くれました


    あら、なまけものの男には願ってもないお話ですね。
    さぁ、男はどうするでしょう? 皆さんならどうするでしょうね?

    男は1個のタネを食べ、1個のタネを地面にうめます。
    その年は1年、おなかが空かずに済み、翌年にはちゃんと2このタネを手に入れました。
    そしてまた1個のタネを食べ、1個のタネを地面にうめました。
    その翌年、またまた2個のタネを手に入れました。
    めでたし、めでたし。

    ・・・・いやいや、でもね、それって、何年たっても同じことの繰り返しになるのですよ。
    当座は過ごせますけれど、何年たっても進歩もない。
    男ははたとそれに気づきます。
    それじゃあどうしようか。
    男は1年、他の物を食べて我慢をし、2個のタネを地面にまくことにします。
    さぁどうなるでしょうね。

    安野光雅さんの柔らかな美しい絵をながめながら、2個のタネが4個になったら、そのうちの1個を食べて残りをまいたら、そして男に家族が増えたら、と読者も一緒に考えていくことになります。
    安野さん、タネの数も実はきちんと描いているのもすごい!
    最後には男は大きな試練に見舞われるのですが、何とか乗り越えられそうですよ。
    もうきっと、なまけものでもなくなったのでしょうね。

    楽しく眺めて数に親しむ。そして論理的に考える。
    そんな楽しい絵本です。

  • 安野光雅さんの絵本は、自分も小さい頃から親しんだ記憶があるけど、「旅の絵本」シリーズと、トリックアート的な絵本のことしか覚えていない。この本は、書店で「数学」のコーナーで見つけて、「数学?」と思いながら、まぁ、小学校1年生の娘が”旅の絵本”が好きだし、読めるかなぁと思って買いました。そしたら、本当に”数学”の本で、奥が深くてびっくりしました!
    1粒の種から必ず翌年には2粒の種がとれる、という”不思議なたね”を仙人からもらった”なまけもの”の男。毎年、一粒食べて一粒植える、(一粒食べれば一年間は何も食べなくても大丈夫)、ということを何年も繰り返す。何年繰り返しても結果は同じ。毎年2粒収穫し、一粒は食べる。
    それを何年も繰り返すところがみそ。
    そしてある年、やっと気づく。「これじゃあ、いつまでたっても同じことの繰り返しだ!」(ウケる(笑))。
    そして一年だけ、食べるのを我慢して、2粒植える。そしたら翌年4粒になる。そしたら1粒食べても3粒植えたら次の年に6粒になる・・・・。わおー!
    っていう話。
    小学校1年生の娘にも、「倍になる」っていう概念が生まれました。「美しい数学」、すげー!

  • この本は、さいしょ、いいことばかりだったのですがさいごに、台風がきて、たいへんになってしまいます。7こたねをうめて「どうか いい タネが みのりますよう」と2人はいのりました。
    私は、台風をのリキれたのがすごいと思いました。

  • 美しい数学シリーズ最後の一冊。

  • これ途中でわからなくなると、わかんなくなる。S11

    優しい絵と不思議なできごとが何が起こるんだろうとわくわくする。
    ちびちゃん達には「ひとつぶのお米」の方が展開が速くて好評。

  • たねをまいてたねができてどれだけ増えていくか?ねずみ算の絵本。

  • こういう本って、なんでここで終わるんだろう?もっと続きを書いたらいいのにー(9歳2ヶ月本人談)

  • 「1コが2コ、2コが4コ……
    倍々ゲームで学ぶ、数の愉快。
    怠け者の男が仙人からもらった不思議な種。1コ埋めれば次の年には必ず2コ実るという。1コが2コ、2コが4コ……。それを10年続けたらどれだけ増える? でも嵐が来たら作物はどうなる? 単純な倍々ゲームで学ぶ、数のマジック。親子で楽しみたい数学絵本。4、5歳から。」
    (科学道100冊 2019 より紹介)

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著者プロフィール

安野光雅(あんの みつまさ):1926年島根県津和野生まれ。画家・絵本作家として、国際アンデルセン賞、ケイト・グリーナウェイ賞、紫綬褒章など多数受賞し、世界的に高い評価を得ている。主な著作に『ふしぎなえ』『ABCの本』『繪本平家物語』『繪本三國志』『片想い百人一首』などがある。2020年、逝去。

「2023年 『文庫手帳2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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