闇に消される原発被曝者 増補新版

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  • 八月書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784938140731

感想・レビュー・書評

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  • 樋口健二さんの映画「闇に消されてなるものか」を上映/江古田映画祭予約殺到! | レイバーネット日本
    http://www.labornetjp.org/news/2021/1614439219791staff01

  • ここに記録されているのは闇から闇へ葬りさられる原発被曝者の赤裸々な証言です。原子力発電は『クリーンで安全なエネルギー』と喧伝されてきたその本当の姿がここにあぶりだされています。筆者の執念に感動します。

    僕がこの人の存在を知ったのはYoutubeにて福島の原発事故をなじり倒している筆者の動画と、イギリスのBBCにて放送された原発の最底辺で働く労働者の被曝問題を描いたドキュメンタリーを見たことがきっかけでした。この本は福島の事故を受けて再刊されたそうですが、できましたら、これをきっかけとして今現在も事故を収束させるために、また、日々、日本全国で稼動している原子力発電所で、今日も作業に当たっているかたがたに思いを馳せていただけると幸いに思います。

    内容をざっとかいつまんで申しますと、「クリーンで安全なエネルギー」であるはずの原子力発電所の内部で、許容量の何倍もの放射線を浴びて被曝し、会社からも、まるでぼろ雑巾のように見捨てられた方々の「声なき声」が筆者の執念を感じさせるインタビューと写真でつづられています。

    最近、テレビでも原発内部の労働者被曝を取り扱った番組を報道していることをYoutubeでちらほらと見ることがあるのですが、当たり障りのないことに終始していて「真実」を知るためにはこういうものを読むことと、できたら、講演か何かに足を運んで、筆者の話を直接聞くしか方法はないかな、と考えます。

    僕が読んでいて一番胸が詰まったのは佐藤茂さんという方の発言で
    「熱くてよ!苦しくてよ!ほれこそ面(マスク)なんかつけておれず、はずして働いたさ。音(アラームメーター)の出るのも無視してよ!まるで宇宙人のような格好だったな!」
    というもので、病床に臥せっている状態から搾り出すようにしていっている言葉なので、こういうことを長い間知ることがなかったことを非常に後悔しました。結局、佐藤茂さんは「骨転移ガンで苦悶のうちに死亡した」のだそうです。

    そのほかにも裁判を起こそうとした人間を奥さんを抱きこんで600万円の和解金で裁判を潰したりですとか。医師に『袖の下』を渡してカルテを改竄させる。などの『国策』の名の下になりふりかまわぬ電力会社の姿と放射線を浴びて被曝する労働者たちが季節労働者、漁民、農民、そして被差別部落の出身者(あえてこう書く)たちへの『差別』によって、彼らの犠牲によって日本の原子力産業というものは長いこと成り立ってきたのだな、と。はじめてこの『真実』を知ったときには衝撃でした。

    かなりショッキングなことが書かれていますので、あまりすべての人には、ということはできないんですけれど。『真実』を知りたいという方にはぜひ、一読お願いします。そして、お読みになった暁にはJヴィレッジの体育館で粗末な布団で作業服を着ながら眠り、レトルト食品を食べ、許容量の何倍もの放射線を浴びて被曝しながらも事故の収束に向けて奮闘している方々へ思いを馳せていただけると幸いに思います。

  • 事故前も事故後も体質は変わらない。
    2年半経った今、ただ、少しずつ考えは変わってきている。
    どのように捉えるか、反応するか、ということは
    人それぞれ違っていて、わかりあえない。
    できるのは、自分の考えにもとづいて、自衛することだけだ。

  • これはすごいルポだ。 原発がいかに多くの被曝労働者を生み出し、そして書名の通り、いかに彼らが闇に葬られてきたのか。古い本なので70年代から80年代の話なのは仕方ないが、そんな昔から地道な取材を重ねた著者の執念に恐れ入る。

  • 原発怖いです
    そう思います
    今現在も、ここに書かれたよりも過酷な状況で原発で仕事をしている人はいるのでしょう。
    福島第一原発は今だって終息していない
    誰かがこういった仕事をしてくださるので
    自分は今、何もなかったような顔をして生活ができる
    メディアにはでてこない、こういった仕事についている方達を忘れてはいけない
    そう思います

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/493814073X
    ── 樋口 健二《闇に消される原発被曝者 198108‥ 三一書房 20110706 八月書館》
     
    ── 私は巨大科学としてしか、原発をとらえない人々に対して、被曝
    者が居ないだけでなく、居ないことにしている体制を知ってほしいとい
    う願いを込めて、今まで取材をつづけてきた(あとがき)。
     
     樋口 健二 カメラマン 19370310 長野 /日本写真芸術専門学校副校長
    ── 樋口 健二《売れない写真家になるには 四日市 毒ガス島 原発 198310‥ 八月書館》
    ── ドキュメンタリー《隠された被曝労働 ~ 日本の原発労働者 ~ Nuclear Ginza 1995‥‥ BBC》
     

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著者プロフィール

1937年長野県富士見町松目生まれ。報道写真家。日本写真芸術専門学校副校長。日本写真家協会会員。世界核写真家ギルド会員。日本広告写真家協会学術会員。『増補新版 樋口健二報道写真集成 日本列島1966 ―2012』(こぶし書房、2012年)他、著書・写真集多数。2011年、第17回平和・協同ジャーナリスト基金大賞受賞。日本の最暗部を追いつづけるフォト・ジャーナリスト。

「2021年 『慟哭の日本戦後史――ある報道写真家の六十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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