ボロボロになった覇権国家: 次を狙う列強の野望と日本の選択

著者 :
  • 風雲舎
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784938939359

作品紹介・あらすじ

クレムリンから見た世界再編バトルの息づまる衝撃。座標を変えると別の世界が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 国家は、国益(=「金儲け」と「安全の確保」)を追求する存在だという認識のもと、アメリカを中心に、世界で起こる様々な事件の裏にある真の動機を解明している。
    著者は、ロシアの外交官・KGB要員養成所であるモスクワ国際関係大学で学んだ在野の国際関係経験者である。著者の分析は、ロシアでの経験がふんだんに活かされている。いわば、クレムリンから見た世界情勢なのである。
    著者によると、アメリカが覇権国家でいられるのは、ドルが基軸通貨であるからであり、財政赤字と貿易赤字、ユーロの台頭により、アメリカが覇権国家から転落するのは必至であるという。イラク戦争もそのきっかけは、フセインが決済通貨をユーロにしようとしたことだったという見解を披露しており、これは目から鱗だった。
    また、中露の戦略は、アメリカの一極支配体制を崩壊させ、多極世界を構築することであるという。ロシアでは、「他国の争いを支援する国は繁栄する」と言われているらしく、道徳的にどうかとは思うが、現実の国際政治を考えると真理であると思った。
    日本については、アメリカの天領であるとして批判的に述べられている。
    2005年に出版された本書であるが、そこで予想されたイラン戦争についてはいまだに実現していない。このように、著者の世界情勢分析が的確がどうか疑問な点も多い。特に、多様なプレーヤーを抱え、必ずしも一枚岩ではない各国を、あたかも一つの意思を持つ主体として描く分析手法は、過度な単純化ともいえ、無理があるように思う。しかし、国際情勢の大まかな見取り図としては、本書の見方は概ね正しいのではないかという感触は持った。

  • アメリカと、EU、ロシア、中国などの関係の裏側、本性について分かりやすく解説。当たっているかは分からないが、なるほど、と思う視点があり、面白い。予測よりイランとの戦争が遅れているが、米中戦争まで至るのか?

  • 米ソの二極体制が崩壊し、現在は米国の一極体制となっているが、今後は中国・ロシア・EUも加わった多極世界となるだろう。石油代金などの決済も現在はドル建てとなっているが、フセインーフランス間で取り決めがあった(著者はこのためにアメリカの怒りを買ったという)ようにユーロ建ての決済も増えていき、ドルは基軸通貨としての地位から滑り落ちるかもしれない。しかし、アメリカの軍事費は年間50兆で世界全体の軍事費の4割にも達しており、経済規模も圧倒的(GDP10兆というのは3兆ドルで二位の日本の三倍)である。「金力と腕力」にまさる米国は世界各地で戦争を起こすことでその地位を維持しようとするであろう。中東情勢について、フセインはイラクでは少数派のシーア派であった。イランはシーア派が多数を占める国で、次の標的となるのではないかという。また、その後は昇り調子の中国と、米・台連合軍の戦争が起こるのではないかという。
    ロシア情勢については面白かった。基本的にはエリツィンのもと、国営企業を安く手に入れた新興財閥の中に、親エリツィン派(ベレゾフスキー、チュバイス、アブラモビッチら)と反エリツィン派(グシンスキー、プリマコフら)があり、プーチンが大統領となった時点でグシンスキーは即、国外逃亡。しかし実際に大統領になったプーチンは親エリツィン派にも容赦なく、ベレゾフスキーなどは国外に退去してしまった。
    全般的に、単純化しすぎのきらいはあるが、一極体制から多極世界へといたる過程にあるというシンプルな世界観がしっかりしており分かりやすい。

  • 普段、なかなか読み進まない私が2日(時間にして約10時間程度?)で読破できた程に理解しやすく読みやすい。
    それで以て書かれている内容も、これからの世界情勢の動向を的確に見据える為の濃厚な知識や知恵が満載されている。
    そして、それらの知識や知恵は、今の日本で氾濫し安易に接する事が出来るアメリカ視線によるものとは明らかに異にしており、アメリカ視線だけの情報のみで世界情勢を判断する事が如何に危険であるかを明白に気づかせてくれる。
    これからの日本が変貌する世界情勢の渦の中で、どの様に進むべきかを的確に見据える為にも是非読むべき書の一つであろう。

    (参考)
    著者: 「北野 幸伯」 氏のホームページ
    http://rpejournal.com/

  • あなたの世界が劇的に変わる本!



    【この本との出会い】
    その頃、新聞のロシアとウクライナの
    天然ガス供給問題を読み数々の?が浮かんできていた。
    ・日本の新聞はロシアの陰謀説(らしき)を強調しているようにみえる。
    ・でもロシアの稼ぎ頭であるガス(輸入)をロシアは誰よりも欧州に送りたいはず。
    ・ガスプロムが悪者ならなぜ12月に格付けがよくなったのか?
    ・欧州いくつかの国はニュースではウクライナにペナルティを求めている。
    →事実はどこにあるのか?
    そんなときにこの本に出会った。

    【本を読んだ後の頭の中の変化】
    ・北朝鮮の飛翔体。
    ・アメリカ軍に守られている日本。
    →アメリカにさらにお金が流れる?
    「ほらね、俺たちが守ってあげないとだめでしょ。
     もっとお金ちょうだいよ。」と。
    (陰謀説まで感じてしまうように…)

  • いかに自分を含めた日本人が平和ボケしているか認識させられました。
    まさに世界観が変わる”衝撃”の一冊です。

  • ネット上で有名なロシア政治経済ジャーナル(RPE)の著者が自分の主張をまとめた本。「外交の目的は国益の追求である」「国益は金儲けと安全の確保である」との観点から世界情勢を読み解く。世界情勢をすっきりさせてくれる。題名からはトンデモ本ぽいが、新聞でも著作が紹介されるなど内容は意外とまとも。ただ、アメリカvsロシア、中国という単純な構図に当てはめている点は疑問が残る。

  • 本当に今の世界状態がわかりやすい。
    EUとロシアの動き、中国と台湾の関係。世界の覇権国家アメリカの今後の行方、そしてそれにたいする日本はこれからどうやって対処していけばいいのかわかる本です。

  • 世の中で今起きていること、また今後どうなっていくのかが世間に疎い女性の私でもわかりやすくとても理解できた!

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著者プロフィール

国際関係アナリスト。1970年生まれ。19歳でモスクワに留学。1996年、ロシアの外交官養成機関である「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を、日本人として初めて卒業(政治学修士)。メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」(RPE)を創刊。アメリカや日本のメディアとは全く異なる視点から発信される情報は、高く評価されている。2018年、日本に帰国。
著書に『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』(草思社)、『隷属国家日本の岐路』(ダイヤモンド社)、『日本人の知らないクレムリン・メソッド』(以上、集英社インターナショナル)、『日本の地政学』(小社刊)などがある。

「2022年 『黒化する世界 ――民主主義は生き残れるのか?――』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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