火垂(ほた)るの墓 [DVD]

監督 : 高畑勲 
出演 : 辰巳努 
  • ワーナー・ホーム・ビデオ
3.84
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988135529725

感想・レビュー・書評

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  • 過去20年のメモに残っていないので、小学生か中学生の頃に、一度見たか、ながら見して目を背けていたか。
    原作は2002年に読んでいるはずだが、記憶に残っていない。

    「となりのトトロ」と併映ということで師弟対決となったわけだが、予想していた以上に対になっているのに驚く。
    きょうだいや年齢といった設定だけでなく、まるまる同じ構図のカットがいくつもある。
    ということは同じ行動をしているのだ。
    トマトとキュウリ、お風呂、髪を梳く、兄か姉の号泣、母に抱き着く妹、背負って傘、兄か姉が側転する、などなど。
    たった十年違うだけで、こんなに違うのだ……と感慨深い。
    ましてやこれを、親子連れで連続で鑑賞すれば、阿鼻叫喚放心惨憺虚無絶望は必定。

    まず冒頭で驚愕した。幽霊モノなのだ。
    自分の死を見つめる兄、駅員の無感動でも結構な衝撃なのに、なんと妹も幽霊になっている。
    幽霊ふたりで列車に乗って、過去列車に乗っていた自分たちを見つめる。
    「銀河鉄道の夜」を連想する(スイカ……宮沢賢治がトシに与えた天上のアイスクリーム)が、こちらはどうにも、ひどく赤い。阿修羅、煉獄、絵面だけでもかなりアヴァンギャルドだ。
    この幽霊が幾度か差し挟まれ、後悔、悔恨、思い出巡り、という二階建て構成であることが判ってくる。

    この後筋を辿りながら考えたことを書き続けることは、もうできない。
    何せ4歳児を育てている真っ最中で、節子の動きがリアルで、愛おしい、だからこそ待ち構える悲劇に、言葉がない。
    ロオップ、という発音や、泥団子でおままごとや、ごっこ遊びや。
    動きひとつひとつが凄い。その凄みが、かけがえなさ、とか、めくるめく、という感じを出す。
    それこそ十年後に、十年前の娘ってどうだったんだろうと思い出すときに、スマホで撮った動画にプラスして、節子とメイを見返したいほどに。

    この作品を語るときに、誰が悪いのか、という切り口がある、というか、結構この話題になりがち。
    そうしなければ耐えられないからだろう。
    おばさんへの嫌悪感、清太がちゃんとしていれば、という二大話題だが、どちらも作品中に、そう言い切ることはできないよというシーンが仕込まれている。
    感情的で直線的な観客の反応を予め摘み取っておく、巧みさ、というか、残酷さ、というか。

    なんでもジブリ中枢の三人が必ず言うのは、その企画に現代性があるかどうかということだ。
    作品を通じて現代を照らし出す、という表現をしていた。
    清太を引き籠りがちな現代の若者(1988年)と重ね合わせた勲の読み、確かに。
    今風に言えばコミュ障。
    泣きつけば何とかしてもらえそうな他人を、何人も配置しているのに、清太は現実を直視できず、結果妹を死なせてしまう。
    14歳、プライドを捨てて大人に頼ることもできただろうに、それができなかった、悲劇。
    悲劇は戦争だからだけではないのだ。
    個人的には、40に近づこうとする自分が、万一の場合、清太を超えられないのではないかと考え、他人事ではなかった。
    令和の父親(子供の友達みたいな)。
    こんなふうに観客に考えさせることの、残酷さ。

    そもそも火傷の母親をボイと描く、絵的な残酷さから、誰にも感情移入できそうでいてできないもどかしさを与える残酷さから、こんな演技を5歳児?の声優に言わせる残酷さから、とにかく鬼畜。マジサイコパスじゃね。
    (コメンタリー必聴。録音ドキュメントと称して、演技指導者?が先導して、何度も何度も言わせる。うち、おばあちゃんに聞いてん。お母ちゃん、もう死にはって、お墓の中にいてるねんて。)

    さらに野坂昭如のインタビューも、凄い。
    野坂昭如が綴る『火垂るの墓』の原点「食欲の前には、すべて愛も、やさしさも色を失った」「プレイボーイの子守唄」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/737fa900bceed66fbbfe7ba2bc53e66a61296c68

    単純な反戦モノではない。
    むしろ反戦モノととらえられることを、勲は迷惑に思っている。
    心中モノなのだとか。
    この点については、岡田斗司夫の意見に賛同する。
    構造だけ抜き出せばそうかもしれないが、アニメにしてキャラにすれば、どうしたって別種の心の動きをしてしまうよ、観客がみなそこまで知的なわけじゃないよ、と。
    四歳児を抱えて、四歳児に抱えられて、と自分に座りのいいストーリーを作らざるを得ないよ、と。

    ラストで、幽霊節子が膝の上で寝る状態で、幽霊清太が見下ろす町が、現代に変わっていく……ここ、スコセッシの「ギャング・オブ・ニューヨーク」っぽい。
    冒頭と合わせて考えるに、清太は死亡後、何度も何度も数年の記憶の場面を見返し続けている、ループものなのだ。煉獄とはそういう意味なのか。
    連想するのは、黒沢清の諸作。
    ここまであからさまではないが、観客が幽霊に見られているという感覚が、多い。
    また連想を拡げるなら、「風と木の詩」……心中モノ、愛する者を閉じ込めるモノ、という意味で。
    最後に作品を離れて気楽な呟きをするなら、そういえば長らく蛍なんか見てなかったなー。それこそ30年くらい?

  • 初めて観たのは思春期の時で号泣でした。ドロップがせつないよね。その後も何度もビデオで観てます。多分ターミネーターについで2番目に何度も観た映画かも。そして何度見ても号泣します。

  • 昔みたような気がしてたけど、最後まではみていなかったようだ。
    しっかし、後味が悪い作品だなー。
    節子のぶりっこぶりにイラッと。
    さらに、お兄ちゃんのニートっぷりにイラッと。
    辛いのは分かるけど、ハングリーに生きろよと。
    作品をみる年代によって受け止め方が違うんだろうけど、今は泣けない。

  • 1988年スタジオジブリ。脚本監督高畑勲。原作野坂昭如。
    戦時中、父が出征し、母は空襲で死んでしまう兄妹の物語。
    親戚の家で継子扱いを受け、家を出て防空壕で暮らし、盗みなどする。が、妹は栄養失調で死んでしまう。最後は数十年を経た都会の夜景だが、ビデオで冒頭を見直すと、兄は昭和20年9月に死んだ、と語るところから始まり、妹の遺骨が入った飴の缶を係員が放り投げて、遺骨がこぼれ出たところから妹が幻影のごとく浮き上がり、映画が始まっている。ここは忘れていけないところだろう。
    高畑勲を追悼しての放送録画。本当の空襲は映画よりもっと大変だったと高畑は語っている。

  • 子供のときに見た以来、久しぶりに観た。
    以前観た時は親戚のおばさんや野菜泥棒の被害者のおじさんなど清太たちに対して酷すぎると思ってたが、今見たら戦時中・戦後でそれぞれの家族や自分自身が生きていく為に必死だったんだと思った。
    とにかく戦争はいけない。戦争をこれから伝える為に必要な作品だと思う。

  • 物語としては、ある意味淡々としたやるせなさだけが募り、終幕へと…。人生の終幕というには余りにも儚すぎる命である。ああ、なぜ、職に就けるだけの年齢に達していなかったのだろう。そして、なぜ、居候先との関係を良好にできなかったのだろう。戦時下という時代であるとはいえ、何とも言葉を失う作品である。

  •  空襲で家と母を失った兄妹が二人で生き、死んでいく姿を描く。
     
     アニメーションの表現としてはとても高いレベルにあると思う。自分達の死までを見つめる赤い姿がなんとも言えない。
     ストーリーについては、主人公の行動にいらついてしまう部分も多いが、この映画は公助と共助からあぶれた人を描くことで、間接的に戦争を糾弾しているのだと思う。
     あんまり見てられないけれど、それだけこの映画がよくできているということだろう。

  • 追悼も兼ねて視聴。

    自分のようなヒッキー&ニート傾向のある人間には、泣けるというより心に痛い映画だな、と思いました。

    戦時下のような厳しい環境であればあるほど、また弱く無力な存在であればある程、人は社会に帰属しないでは生きてはいられないのだと…、多分に絶望的な気分になります。

    社会でうまく立ち回ることができず、耳に痛い正論や面倒な人間関係から逃げ、好きなものだけで構成された世界に閉じこもる。残酷で煩わしいだけの社会と隔絶して生きられれば、それはとても幸せかもしれないけれど、その代償はあまりに重い。

    兄妹の二人だけの蜜月が純粋で美しいほど、その蛍のような儚さが胸に刺さりました。

  • 鬱になりたいときに見る。

  • 暗い気持ちになる

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著者プロフィール

アニメーション映画監督。1935年、三重県生まれ。作品にTVシリーズ「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」など、劇場用長編「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「ホーホケキョとなりの山田くん」「かぐや姫の物語」など。

「2014年 『かぐや姫の物語 徳間アニメ絵本34』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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