プロジェクトX 挑戦者たち Vol.4世界を驚かせた一台の車 ― 名社長と闘った若手社員たち [DVD]

  • NHKエンタープライズ
3.60
  • (1)
  • (1)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 13
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988066108549

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • CVCC開発を軸にした物語。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/CVCC

    環境規制という機会を得て、本田宗一郎は社員に対し
    「ホンダがビッグスリーに並ぶチャンスだ」
    と言う。
    けれど、若手技術陣は
    「会社の為にやっているのではない。社会の為にやっているのだ」
    「(専務に対して)会社のためじゃなく、自分のため、社会のために頑張れと常々言っていたオヤジ(本田宗一郎)にそんなことを言わせないでくれ」
    と言う。
    そしてこれが本田宗一郎が社長引退した理由の一つになった(実際に本人が引退スピーチでそう語っている)。

    以前にこのDVDを観たときには「(理屈として)言っていることの是非はともかく、こういうエネルギーは凄い大切なことだ」というぐらいに思った。けれど、いま観ると「言っていることの是非ではなく、まさにこれこそが凄いことだったのだ」思う。

  • ホンダ、シビック開発秘話。

    昭和四十年、車の排気ガスによる公害を規制するために、米国議会が可決した法案、『マスキー法』
    マスキー法は、車両の排気ガスを三年以内に従来の十分の一にせよ、という法案である。
    当然、米国ビッグスリー(フォード、GM、クライスラー)は猛反発し、法案の取り消しを主張した。その中で日本のあるバイクメーカーはただ一社、マスキー法の基準をクリアする車両を作り上げようとしていた……

    副室という小さな部屋でガソリンを爆発させ、飛躍的に大きな力を出す『CVCC』と呼ばれるエンジンを開発し、それを実用化させる苦労。本田宗一郎は社員に対し、『ホンダがビッグスリーに並ぶチャンスだ』と言う。ところが若手社員はそれに反発する。『ホンダは社会のための会社ではなかったのか? 親父さんはそんなことを言わないでくれ』


    本田宗一郎はこのとき、ある苦い記憶を思い出す。ホンダの四輪参戦処女作、N360である。
    マン島TTレースにて1~5位を独占し、二輪業界の頂点を極めたホンダが送り出すN360は、爆発的に売れた。ところが、数年後、N360は欠陥の疑いを掛けられ、本田宗一郎は顧客に殺人罪で訴えられた。疑い自体は不起訴になったのだが、このときの本田宗一郎のショックは大きかったという。実際にホンダのイメージダウンにつながり、売り上げも20%ほどに落ち込んだのである。
    宗一郎は自分が『企業本意』になってしまっていることを恥じたという。その日を境に、宗一郎が開発現場に足を運ぶことを止めた。

    本田宗一郎は、二輪屋として、『空冷方式』を主張していたが、若手技術者は『水冷方式』を主張していたが、最終的には水冷方式に落ち着いた。
    宗一郎はこれをきっかけに社長を退くことを決心したという。

    水冷方式、CVCCエンジン、安全性の確保、あらゆる障害を乗り越え、ホンダ『シビック』は完成し、米国環境保護庁を震撼させた。世界で初めてマスキー法をクリアする車の誕生の瞬間である。
    ビッグスリーは次々とホンダに技術提供を求め、不況とN360の不調による赤字を解消した。

    昭和日本を語るに当たって、ホンダという企業をどう理解するべきか。
    Sonyと並ぶ、『ベンチャー企業ブーム第一次期』の成功社というだけではない。そのふたつの企業に共通するポイントは、『日本というマクロな視点での経営』にあると私は考える。
    Sonyは日本の技術を世界に轟かすために、トランジスタラジオを欧米への売り込みを掛けたし、ホンダは日本と世界の市場を切り開くためにマン島TTレースへの参加、ひいてはトップ1~5を独占するという偉業を果たした。
    ベンチャー企業は単なる利益追求だけではなく、より大きな視点に立ってこそ、大成できるのかもしれない。楽天やライブドアが嫌われる理由の一つは、『外資企業を利用する(される?)』だけで、この国全体をよくしていこうという気概が見られないからではないだろうか。自社の利益のみを追求し、社会還元をしない。日本人が考える典型的な『成金(悪い意味)』である。
    公のない金を日本人は酷く嫌う傾向にある。
    多くの人間の幸せを愛し、公に準じること。すなわち『企業倫理』こそが求められているのである。
    (好例は松下電器。現在のストーブの回収は褒められていいと思う)

    ベンチャービジネスかくあるべし、という姿をホンダ『シビック』に見た今日のレビュー。いかがだっただろうか?

全2件中 1 - 2件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×