名前をつけてやる

アーティスト : スピッツ 
  • Universal Music
3.65
  • (97)
  • (47)
  • (223)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 540
感想 : 58
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・音楽
  • / ISBN・EAN: 4988005312952

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • スピッツ2枚目のアルバム。「初期スピッツ」として名高い。

    デビューアルバムから7ヶ月くらいでこのレベルのアルバムが作れるのは、やはりセンスが違う。惜しむらくは音圧が低い点。これも「味」と取ってしまえば取れるが、やはり聴いてると音が小さいのでもう少し大きいミックスにしてほしかった感じ。あと、マサムネの歌いかたがアンニュイな感じでふにゃふにゃしてるのもやや個人的にはマイナス。シューゲイザーを意識しているため狙ってるのだろうが、デビューアルバムくらいのトーンで歌ってほしかった。
    ただし楽曲は珠玉のナンバーが続く。本当にスピッツのエッセンス、バンドとしての本能に突き動かされているような音にうっすら恐怖を感じるほどの出来。どんな感性を持ってたらこんな名曲たちが作れるのか。ポップだけど妖しい、ノスタルジックだけど新しい、儚いけど強い曲たちが並んでいる。いい意味で「売れない」ような作品。この時期にスピッツファンだった人はよっぽど音楽にアンテナを張っていたんだろうなあ。
    以下、曲ごとのレビュー。

    1、ウサギのバイク
    名曲はイントロから名曲。アコギのアルペジオ、1番は全部スキャット、「ウサギのバイクで逃げ出そう」という逃避行全開の歌詞。メロディアスなギターソロ。3分くらいであっという間に終わる尺。もはや芸術。

    2、日曜日
    アッパーなパンクナンバー。戦争の歌とも、性的な歌とも取れる。これも短い曲ながらインパクトは抜群。ベースとドラムが主役みたいに暴れてて楽しい。

    3、名前をつけてやる
    タイトルナンバー。「むき出しのでっぱり」「ふくらんだシャツのボタン」等、フェティッシュな表現がそこかしこに。それを乗せるメロディーラインもポップ然としてるのにサビはマイナーコードが多用され、「あか抜けない」キャラが音でも表現されてる。これもスピッツの根っこを表してるような歌。テツヤのギターソロ、いいなあ。

    4、鈴虫の夜
    テツヤ作曲。軽快なリズムパターンに歌謡曲の哀愁が漂う。「鈴虫」っていう小さな存在と自分を重ね合わせてるような、ダサいけど憎めない主人公が浮かぶ。昔の、アパート暮らしの学生っぽい歌。

    5、ミーコとギター
    パンクナンバー。ベース、ドラムプレイはかなり難しそう。1ヶ所間違えたらすぐ追いてかれそうな疾走感がある曲。「ミーコの彼はミーコの彼じゃない」「パパとミーコのようなギター」等、ヤバそうな世界観。まさしく美大出身、みたいなイメージが湧く。

    6、プール
    ファーストアルバムの「夏の魔物」的な立ち位置の名曲。イントロからアウトロまで、全部が素晴らしい。最初のギターバッキングを聴いただけで「懐かしい夏」を勝手にイメージしてしまうくらい絵画的なサウンド。歌詞については「夏蜘蛛になった」「白い花降りやまず」「でこぼこ野原」等、性を感じさせる表現はここでもたくさん。しかしそんなにおいを吹き飛ばすほどに曲が纏っている、狂気すら感じるノスタルジー。芸術です。

    7、胸に咲いた黄色い花
    アコギが印象的なポップナンバー。スピッツの曲はよくサビが弱い、と言われるが、これもそんな感じ(サビも十分メロディアスだけど)。サビよりCメロの方が奥行きを感じさせるメロディになっている。優しい小作品。

    8、待ち合わせ
    パンクナンバー。「君は来ない 百万年前に約束した場所へ」等、よっぽど「君」を好きだったことが伝わる。失恋をやけくそに歌ってるようなイメージの歌。最初は「飾りのない恋 ドロドロの」だったはずが最後は「帰らぬ日々 澄んだ水の中に」と、粘性を失ってしまう。まさか入水しちゃったのでは…と死のにおいも感じさせる。

    9、あわ
    ジャジーなアレンジの歌。インディーズの「シャボンのうた」が元ネタ。インディーズのころはテンポも早いポップパンクだったので、アレンジが大分変わったみたい。
    「でっかいお尻が大好きだ」とか「機関銃を持ち出して 飛行船を追いかけた」とか「すぐにショーユの染みも落ちたよ」とか、意味不明な歌詞全開。解釈なんかせずに不思議な歌の世界をそのまま楽しめば良さそうかな?アウトロのお洒落な楽器隊はかなり好き。雨の日に聴きたいナンバー。

    10、恋のうた
    スピッツがパンクから今のようなポップロックに転換するきっかけとなった歌。カントリーっぽく、歌謡曲っぽい、これぞスピッツ! って感じの可愛い歌。初期にしては珍しくストレートな表現で恋心を歌っている。「昨日よりも 明日よりも 今の君が恋しいから」は誰が言われてもグッとくる…はず!

    11、魔女旅に出る
    将棋の藤井くんが好きだという歌。別れの辛さを「苺の味に似てるよ」と表せる人はマサムネ以外にいるのだろうか。ストリングスと絡まったメロディーはひたすら美しい(相変わらずサビはすぐ終わっちゃうけど)。この歌も毒気は少なく、美しい表現で別れが綴られている。「今 ガラスの 星が消えても 空高く書いた文字 いつか君を 照らすだろう」「歪んだ 鏡の向こうに 忘れてた道がある さあ まだらの靴を捨てて」とか、美しすぎて、もし自分が別れの時に歌われたら確実に泣きそう。

  • なんともノスタルジックな気分にさせてくれる
    不思議なアルバムです(笑)


    一曲一曲は地味なんやけど、
    実はバリエーションに富んでいるし、

    思春期に誰もが持つ、
    焦燥感や欲望や孤独のエッセンスが感じられる、
    アルバム一枚トータルしての
    流れや世界観が
    素晴らしく絶妙で、

    ファンの間では
    最高傑作の呼び名も高い作品です。



    どこか不思議な
    世界の幕開けを告げる、
    のどかでワクワクする
    『ウサギのバイク』


    晴れた日曜日の
    ピクニックにピッタリな
    軽快なロックンロールナンバー
    『日曜日』


    言葉遊びも楽しい
    キュートな世界観の、
    心躍る
    極上のポップチューン
    『名前をつけてやる』


    指を傷だらけにした
    ミーコが、
    ギターと格闘する様が浮かんでくる
    ロックチューン
    『ミーコとギター』


    夏の情景が浮かび上がる
    甘く切ないバラードの名曲
    『プール』


    切ない歌詞とは裏腹な
    激しいパンクロックナンバー
    『待ち合わせ』


    雨の朝に聴きたくなる
    叙情的かつ
    まったりソング(笑)
    『あわ』


    パンクロックバンドから
    今の音楽スタイルへ
    シフトチェンジするきっかけとなった、
    インディーズ時代からの
    最重要ナンバー
    『恋のうた』


    アメリカンドラマ『かわいい魔女ジニー』をイメージし、
    初めてストリングスを導入した、
    切なくも後押しするような別れの歌
    『魔女旅に出る』



    など、
    夢のように儚く幻想的な、
    草野マサムネの
    独特な詩世界を堪能できる、
    ちょっとダークで
    エロチックな匂いのする名盤です(笑)


    サイケな
    にゃんこのジャケットも
    カッチョいい〜♪

    • takanatsuさん
      こんにちは。takanatsuと申します。
      先日は私の拙いレビューにコメント頂きありがとうございました。
      カブっている好きな音楽ってスピッツ...
      こんにちは。takanatsuと申します。
      先日は私の拙いレビューにコメント頂きありがとうございました。
      カブっている好きな音楽ってスピッツかな?と予想してこちらにコメントさせていただきました。
      スピッツいいですよね!
      『名前をつけてやる』もとっても好きなアルバムです。
      「恋のうた」はもしかしたら最強のラブソングではないかと思ってますし、「ウサギのバイク」とか…1曲1曲語るわけにもいきませんがとにかく大好きです。可愛い曲がとても多いですよね。

      円軌道の外さんのレビューも「そうそう」と頷きながら読みました。今後とも参考にさせていただきたいと思いますのでよろしくお願い致します。
      2011/12/27
    • 円軌道の外さん
      わぁ〜コメントありがとうございます(^O^)スピッツとthe pillowsは、デビュー当時から密かに応援していたので、うんうんと終始頷きな...
      わぁ〜コメントありがとうございます(^O^)スピッツとthe pillowsは、デビュー当時から密かに応援していたので、うんうんと終始頷きながら、レビュー読ませてもらいました(笑)
      the pillowsの『RUNNERS HIGH』のレビューにコメント書いておいたので、
      またお暇な時にでも読んでもらえたら嬉しいです。ではでは今後ともヨロシクお願いします(^_^)v
      2011/12/27
  • 最初聴いた時は、聴き馴れない感じを受けたけど、二度目から歌詞カード見ながらじっくり聴いたらすごく良い曲ばっかりで、スピッツ凄い!って思った。
    初期の作品もすごく良かった♪ますますスピッツにはまりました。

  • 聴了
    1回目 2022.6.16
    2回目 2022.8.6

  • ウサギのバイク
    日曜日
    名前をつけてやる
    鈴虫を飼う
    ミーコとギター
    プール
    胸に咲いた黄色い花
    待ちあわせ
    あわ
    恋のうた
    魔女旅に出る

  • 草野マサムネが以前インタビューで「最初から最後までサビみたいな曲を作りたい」みたいなこと言ってて、「プール」を聴いた時、これぞ!って思った。

  • 初期スピッツの新鮮さと危うさが感じられる秀作。

  • 【曲調】
    狭い庭でひとやすみ。
    1、3、9曲目が好みでした。

    【類別】
    ロック、ポップス色。

    【楽器・声】
    エレキギター、アコースティックギター、一部にストリングス、ベース、ドラムス。
    全て声楽曲、男声。

  • 「鈴虫を飼う」「プール」「あわ」「恋のうた」好き。

  • 草野さんが言っていた、スピッツのテーマは「死とセックス」

    この作品はもしかしたら、そのテーマを一番如実に表しているんじゃないかと思います。

    毒っ気の中に可愛さと、思春期のエロさと、揺れるギターの哀しい雰囲気を持った初期の名盤です。

    プール はスピッツの中でいちばん、「死」 を感じられる曲だと思う。好きすぎる。

全58件中 1 - 10件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×