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- / ISBN・EAN: 4988104021175
感想・レビュー・書評
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ものすごいものを見てしまった。いままで見た映画の中で暫定ベスト3に入る勢いの傑作。しかもそれが、今から60年以上前の1954年に完成していたとは衝撃です。
戦国時代、野武士たちの度々の襲撃に悩まされる寒村。村人たちは、村を守るため、雇っている間の「米の飯」と引き換えに、浪人の侍たちを、用心棒として雇うことにします。
村人たちの侍探しは難航しますが、冷静沈着な侍「勘兵衛」と交渉成立したことを機に、次々と侍を見つけ、最終的に、個性溢れる七人の侍が集まります。
七人と村人たちは、村を守るため、野武士四十人と全面対決することになりますが…。
本当に、たったこれだけのシンプルなストーリー。
それなのに、3時間半の世界の中に、清濁両面から、ありとあらゆる人間の姿が描かれています。
村人たちは、自分たちがのぞんで侍を雇ったくせに、いざ侍たちが来たら、ひどい目にあわされるのではと恐怖に怯え、七人を歓迎しません。
そのくせ、野武士による襲撃があったとなると、逃げ惑い、半狂乱となりながらも、さも当然とばかりに七人に助けを求めます。
そして、侍たちが野武士数名の捕獲に成功すれば、侍たちの制止など全く無視して、総出でたった一人の野武士をなぶり殺して喜ぶ残虐さ。
彼らは、これまでの野武士との対決の中でも、機会さえあれば、野武士を殺し、所持品一式身ぐるみ剥いで自分たちのものとしていました。
六人の生粋の侍たちは、一見すると弱者のようでありながら、実は強かなずる賢さや残酷さを併せ持つ農民たちの実態を生まれて初めて知り、衝撃を受けます。その中で、ただ一人、侍と偽っていたけど実は農民出の荒くれ者「菊千代」は、平然と彼らの実態を暴きたて、六人の仲間の前に突きつけていきます。
「農民ってのはなあ、ずるくて、汚くて、…」
そんな言葉ではじまる三船敏郎演じる菊千代の台詞は、人間の本質をついているようで、とても印象に残ります。
やがて七人の侍と農民たちの間には交流と絆がうまれ、いよいよ野武士四十人との全面対決を迎えます。
全く金にもならず、忠義を尽くす主君もいない、単なる飯のための傭兵仕事でありながら、いざ戦いとなれば、本気で村を守ろうと奔走する侍たち。
そして、必死の戦が終わってみると…。
物語の最後、全く対照的な農民と侍の姿の対比は鮮やかで、侍のリーダー格であった勘兵衛の虚しい言葉が、ものすごく胸に突き刺さります。
「また負け戦だったな。この戦に勝ったのは、農民たちよ」
この物語の主題は、七人の侍の勇姿以上に、人間のあらゆる本質をあぶり出すことだったんだろうな、と思いました。もちろん、戦シーンは迫力満点で、映像としての見応えもあります。 -
映画メモ。
もし、もっと若い頃にこの作品を観ていたら、菊千代のことは、不格好で暑苦しくて、あまり好きになれなかったかもしれないな、と思う。
でも、最初はまるで理解できなかった菊千代の怒りや、狂ったような笑いが、物語が進むにつれて、人としてとても真っ当で正直な行動に思え愛おしくなってくるのが醍醐味。
作中で描かれる「農民」が、今観ても自分を含む日本社会の人々のありように重なって、「人を描く」ってこういうことを言うんだな、と思えた一本。 -
黒澤明 監督の大作
凄い!凄い!と噂で聞いていたが 観たのは
実は初めてです
外国でも かなり高評価でリメイク版もオマージュされて
何作品も作られている
全く あらすじを知らずにDVD鑑賞
「七人の侍」ってタイトルだけで 勝手にイメージしていたが 全然思っていた内容とは違っていた。
三船敏郎さんはシブいイメージしかなかったので 驚きと親近感がわく コメディタッチで描く人物像 菊千代 (とても生き生きして良かった)
志村喬の統率力ある侍を中心として…
ただ 力ある強い侍というわけでなくて 戦略を立てて闘う。知恵と人情深く チームみたいに それぞれの個性を生かしており、なるほど…素晴らしく出来上がった作品だったなあ と思います。涙 涙…でなく あっさりと斬り込んでゆく
作品が出来てる感じが清々しかった。
『七人の侍』1954年(昭和29年)4月26日に公開された日本映画 東宝製作・配給。
監督は黒澤明、主演は三船敏郎と志村喬。モノクロ、スタンダード・サイズ、207分。 -
IFCでの「週末、黒澤。」
どんどん熱が上がり本作の週末から「観れるだけ観る。」の方針に変更。つまりは週末二日連続で朝11:00の上映に駆けつけるという前人未到の暴挙に出る。まぁ、きっかけは地下鉄の遅延もあり一回目の冒頭15分ほどを見逃してしまったのが始まりではあるのだけれど。
一日目の鑑賞を終えた後、酒場でこの街での仲代イベントの仕掛け人の方に偶然お会いした。「観てきました!今日は『七人の侍』。」と得意気に報告したところ、「おお、じゃ仲代さん、ちゃんと観てきた?」と返され「???」。しばらくして思い出した、彼は本作にノンクレジットの端役として出演したことについて語られていたことを。不覚 orz...
で、二回目は目を皿にして鑑賞した結果、納得の理由がそこに。答えは一回目に逃したその「冒頭15分」の中にあった。とはいえそのあとものを読んでその中に宇津井健や加藤武も混じっていたという事実を知り、敗北感は拭いきれぬまま。
またこの二回の鑑賞を通して随分と脇を固める役者陣へ目を配ることができた。
まずはMifune: The Last Samurai (2015) のドキュメンタリーでもたっぷり語ってもらった利吉を演じる土屋嘉男。「『七人の侍』のオーディション会場にたまたまいたのがきっかけ」というエピソードを聞いた記憶も新しく、この後何度もお見かけすることになる原型が既にここにあったことに驚きを隠せない。
志乃を演じる津島恵子。つい数週間前に「たそがれ酒場」(1955) にて妖艶なダンサー姿をみさせてもらっていただけに、本作での幼さかつそのぽっちゃり感がほんの1~2年後にああも変わるものかと。女優ゆえの変わり身なのか、二十代中頃ゆえの成長なのか…、前者であれば夢がある。
岡本勝四郎を演じる木村功。「野良犬」(1949) も「天国と地獄」(1963) も、あげくの果てには「田園に死す」(1974) までをもこの街のスクリーンで観ていたのにその登場時に「あ、七人のひとり!」とは反応できていなかった自分を改めて恥じた次第。七郎次役の加東大介とともに「本編では生き残った二人が先に鬼籍に。」というエピソードは少し哀しい。
万造を演じる藤原釜足、与平を演じる左卜全、「赤ひげ」(1965) で老衰で死ぬ老人を演じたのは後者だと思いこんでいたのだが前者が正解と改めて認識。ひと昔前は混同していたことを認めねばならないが、最近は随分と鮮明になったもんだと本作鑑賞を通して再認識。
あと「休憩」の尺のイメージも改めて鮮明に。
ご不浄へと足を運んで結果遅刻する人達を横目に「素人め…」と冷ややかに眺めつつ落ち着いて音楽に聞き入っていたのも今回が初(笑) -
見るたびに発見がある。ストーリーを知っていても面白い。何度も見たくなる映画
侍たちと百姓たち それぞれの立場、経験と考えの違い。
登場人物たちのキャラクターの違いが際立っていて相関図だけで面白い
とくに前半の侍集めの話が大好きだ
朗らかに笑い合う明るい雰囲気の中にも、侍たちの戦で確かに生きてきた度胸と腕の確かさを見てわかってカッコ良い
七人の侍のうち、やっぱり勘兵衛様が一番カッコいいと思う
リーダーシップとしての存在感。いくつもの戦を生き残ってきた経験と知恵の確かさ。
勝四郎と菊千代をまるで息子のように叱り見守る姿は理想の父像かもしれない。 -
『泣くな
『こいつは俺だ
『また負け戦だった
エンディングの悲しさがあってこそ。 -
白黒映画なんてと若干侮っていたところがあるが、すごい
黒澤明が世界中で評価されている理由もわかるし、日本映画の最高峰だとこの七人の侍が評価されるのもよくわかる。
これのおかげで黒澤明の映画を見ようと思った。
見ていて誰が誰か名前が出てこなくなってしまったけど、一人一人のキャラが濃くて分かりやすいせいか、すんなり入ってくる。
しかし、三船敏郎の存在感というか迫力がすさまじいし、志村喬の七人を率いる姿もかっこいい。
個人的には寡黙で凄腕の久蔵が好き。誰が相手でも負けなさそうな、立ち振る舞いがいい。
とにかく、まあ面白かった。少し長い気はしたけども。 -
(ネタバレ無)
何故こんな面白い日本映画を今まで観なかったかと後悔したほど痺れた映画。
物語の始まりは農民たちの静かなる決起から。彼等は野武士から村を守るために、『農民が侍を雇う』という常識を覆す方法をとる。だが厳しい身分社会の中で農民達の村を『城』として戦ってくれる武士など、そう簡単には見つからない。『侍には白米を心ゆくまで食べさせる』(自分たちはヒエやアワを食いつなぐのが精一杯であるにも関わらずだ)。この条件が農民が出せる最大の報酬であった…。
七人の侍は、演技や演出は勿論だが何より物語が素晴らしい。3時間以上に及ぶ物語の最後の台詞は非常に印象的であり、全てにおいて珠玉の作品。 -
2012.Jan.6
名作と言われてるし、何となく観てみたいなぁくらいに思っていて、TSUTAYAで何となしにレンタル。
いやー想像以上だった!
別に映画に詳しい訳じゃないけど、映画の全てがつまってるような気がした。
200分という長編だけど、それも感じさせなかった。
まず構成。
恐らく今でいう映画やマンガなどの基礎になっている構成なのかなと思う。
悪者を退治するために一人、また一人と増えていく仲間。ワクワクする!
仲間の一人一人の個性も素晴らしい。
役名も俳優の名前もわからないけど、まず、メインのカリスマ的存在の侍。
ひよっこ。知将。ムードメーカー。クールな腕利き。ほんわか系。粗暴なトリックスター。
それぞれのキャラが立っていて、皆魅力的!
単純な勧善懲悪ではないストーリー。
これがハリウッドなら、悪の野武士vs善の百姓になるんだろうけど、そうではない。
罪のない百姓が、野武士に襲われている。
しかしその百姓はまた、罪のない落ち武者を襲っている。嘘をついて物品を溜め込んでいる。
野武士と百姓とで何が違うのか?
結局人間は我が身が一番可愛いのか。
他にも菊千代のコメディっぷりも本当~に笑えるし、恋愛もあり、百姓の女房に関するドラマもあり、本当に詰め込まれている!
観ていてずっと飽きない
三船敏郎演じる菊千代はが大好きになりました。
格好いいし、面白いし。
これが1952年、今から60年も前に作られていたなんてなぁ。
やはりクラシックは観ておくべきだな、と改めて感じた。
レビューの最初の2行が、すべてを物語っているように思えます。
ワタクシは、これを超える作品はもう日本では...
レビューの最初の2行が、すべてを物語っているように思えます。
ワタクシは、これを超える作品はもう日本では作れないだろうなぁと、ずうっと
(勝手に・笑)思っております。
ストーリーも素晴らしいけれど、様々な技術の結集が素晴らしい。
一体何十台のカメラをまわしているんだ??という撮影ですものね。
レビューに書かれた「狡い農民たち」は、映画の中だけでなく現実にうようよいますしねぇ。
余談ですが、勘兵衛を演じた志村さんの大ファンです。
「寅さん」のシリーズにも出ているんですよ。
同じ黒沢映画の「生きる」もぜひご覧になってくださいませ♪
いつも楽しいレビュー、ありがとうございます!
そうですね、技術的にも、もうきっと現れないレベルの素晴らしい映画ですよね。
私も志村喬さん好きです。
「生...
そうですね、技術的にも、もうきっと現れないレベルの素晴らしい映画ですよね。
私も志村喬さん好きです。
「生きる」はまだ観てないので今度観ますね。
情報ありがとうございます。