火宅の人 [DVD]

監督 : 深作欣二 
出演 : 緒形拳  いしだあゆみ  原田美枝子  松坂慶子 
  • 東映ビデオ
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988101104239

感想・レビュー・書評

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  • 木村大作のカメラワークのうまさに、驚くばかり。
    素晴らしい映像の連続だった。雪と海が実に豊かに捉えられていた。
    日本的な美の風景が、火宅の人の背景となっている。
    自然の雄大さと 人間の切ない愚かさがなんとも言えない。
    中原中也との喧嘩のシーンにしても、「汚れちまった悲しみに」
    というのが、映像で抉り出される。檀一雄、太宰治、中原中也。
    文学者は、破天荒だった。
    緒形拳の檀一雄というのは、実像とは違うかもしれないが、
    こんな風だったのだろうなと思う。彼は料理が得意だったようで、
    そのシーンがなかったのが、残念ともいえそう。
    それにしても、いしだあゆみの身体から沸き立つ 怒り、悲しみが
    実に すごいので、たじろぐほどの迫力だった。
    まさに、心が鷲掴みされる演技。母性の強さというべきか。
    鮭を切るときの包丁の使い方に集約される。
    次男が、病気になってからの家庭の中に流れる風景は、なぜか納得できる。
    受け入れがたい現実に 向き合う。そして、檀一雄は、それを逃げるように。
    原田美枝子の変容が、実に大胆だった。蜜月と悩みと別れ。
    その変化が、表情の中に うまく表現されている。
    松坂慶子の物悲しさ。「資格がない」と言いながら、のめり込んで行く。
    一人の男の造形と臆病さ。それがにじみ出た いい作品だった。

  • 流石、深作欣二監督。
    エンターテイメント映画に堂々と仕立てあげている。

    いまで言うダメンズの極みのような主人公。
    家庭が大変だろうと、金がなかろうが、女に走っちゃう
    ひどい人。

    芸術家だからこそ、これもOKなんでしょうね。
    ピカソが何回も恋人を変えるように。
    既成概念にとらわれず、自分の感情に素直に生きていく。
    それは本人にとってもつらいことかもしれないけれど、凡人である私には自由勝手にしか、見えない。

    映画的には緒方健が何しろかっこいいから、なんだかこの物語に納得してしまう。女がほっとかないねと。(姿かたちだけではなく、しゃべり方とか、朴訥としているようで色っぽっく、かっこいい。)

    女優(壇ふみ、いしだあゆみ、原田美枝子、松坂慶子)は、皆きれい。
    若いときにはこんなにきれいだったんだなーと。改めて思います。

    松坂慶子との放浪の旅が、自然のダイナミックさとあいまって、主人公達と一緒に解放感にひたれる。
    家庭、愛人の災難から逃げて、放浪しているひどい旅なんだけど。。。

    とにかく、映画が総合芸術で、楽しいものであるということを十分に感じられる作品。
    ※ただ、音楽がいまいち。昔の火曜サスペンスのような、古臭いシンセオーケストラというか。

    原作の小説、沢木幸太郎のノンフィクション「壇」、どちらも読みたくなった。

  • 演技や映像がとにかくよい。

    若い頃の原田美枝子、松坂慶子が美しい。
    いしだあゆみは怖くてすごい。ろうそくを吹き消すシーンなどは何が起こるのかと思って思わずのけぞった。それでいて、「私、あなたのなさることは何でも分かってますのよ」とか言って笑顔を見せる。怖すぎる。

    松坂慶子と旅した五島や九州のどこかの火山のシーンなどは映像がとても美しい。

    こんな主人公は身近で見たこともないし、お近づきにもなりたくないし、生き方を認めたくもないので、あくまでエンターテイメントとして楽しめる。

  • これは浮気作品ではなく、多情作品だと思う

    欲望のままに忠実で
    まるで子供のまま大人になった様な彼
    女がいないと生きていけなく

    愛する事よりも、愛される事を誰よりも求めていたのかもしれない
    本当は、さびしくて
    本当は、誰かに求められたくて

    母性をくすぐる男としての弱さが女を魅了し
    彼の心の奥底もちゃんと見抜いていた女性達
    女の怖さ。したたかさ。強さ。引き際。

    遊び方には、遊び方のルールが存在する
    それを学ばせてくれる作品である

    父である事も。
    夫である事も。
    彼である事も。
    どれも彼だけど、その前にただの男でありたかった彼
    ある意味、ここまでやりたい事やってきた彼は幸せだと思う
    酒を飲み
    女を抱き
    行きたい所
    会いたい人に会い
    そして、彼には常に還る場所があった
    受け容れてくれる人がいた

    妻の立場として
    浮気相手として観るよりも、彼の立場に立ってみたらとても面白い
    羨ましさを感じるほどに…
    一周回って格好良くも…

  • 「火宅の人」ずっと気にはなっていたが、先入観でもっと嫌な男の話かと思っていたもので。観れて今最高の気分だ。緒形拳は「鬼畜」同様、優柔不断だが、どこか愛おしいダメ男な役が巧すぎる。序盤に檀一雄と交流のあった作家陣が出るが

    私「『国会の猿どもめ』に似てるな。『作家の・・えーっと何だ?』」夫「『作家のクズ共め』でしょ」私「それだっっ!」前者のように悪口ではないですよ。褒め言葉です。屈折した愛から出た言葉です。

    そして彼を取り巻く女達。妻:いしだあゆみ、愛人:原田美枝子・松坂慶子。松坂慶子との放浪は原作にない映画独自のシナリオらしいが(wikiより)長崎・五島の教会の十字架が本当に胸を打つ。映画ならではの演出である。

    ラスト。いしだあゆみが「そう仰ると思ってました」緒形拳「何で?」「貴方のなさる事は、私は何でもわかるんです」
    私「奥さん怖いよな。まるで私のようだ」夫「そう言われて、僕はどうしたらイイんですか!?」夫婦で死ぬほど笑い転げました。一旦映画再生を止めましたよw。

    その後のエンドまでが美しい。挿入される次男の話も涙なしには観れない。これは原田と松坂のおっぱいを楽しむ映画ではない。こんなにも人間を掘り下げた原作と脚本、それに応える俳優達と映画人。この映画のある事を邦画は誇って良いと思う。素晴らしかった!ありがとうございました!

    いしだあゆみが原田の頭をはたくシーン(頬をはるんじゃなく)大好き。

    妻・いしだあゆみは宗教にはまる。これ唯一この女性に添えない部分。辛い時、藁にも神にも縋りたい気持ちはわかる。話し相手が欲しいのもわかる。しかし、何故宗教に行くのか?同じ宗教でも、私なら多分お百度を踏む。

    思うに。神というのは余りにも全能すぎるので何もしてはならぬのではないか?誰か一人を助けると周囲や未来が変わる。所謂バタフライ・エフェクトだ。神とは世界を造って以降はただ見続けるしか能のない存在で、指一本動かす事にも禁忌を伴う存在なのでは?もしそうならば、神はもう目すら開いていないかも知れない。神に心があれば。そうせざるを得ない。

  • 破滅型文学者が、妻、別宅を構える愛人、旅の最中に出会う情人の3人の中で翻弄される。金がなければなしえないが、金だけでは女の愛は繋げない。一見物腰は柔らかだが、行動との乖離にちょっと不協和を感じずにはいられないが、一方、本音が笑顔に隠されて読み取りにくい女の愚かさと凄みとを感じることもまた確か。特に、妻の座にあるいしだの怖さが……。

  • 深作欣二監督•脚本、1986年作。緒形拳、いしだあゆみ、原田美枝子、松坂慶子出演。

    <あらすじ(ネタバレ)>
    作家・桂一雄(緒形)は、妻(いしだ)のほか、日本脳炎による麻痺を持つ息子のほか4人の子を持ちながら、女優(原田)を愛人として、通俗小説を量産しながら、自宅をよそに放浪を続け、謎の女(松坂)と長崎で恋仲になったりするが、結局、自宅に戻る話。
    「火宅」とは、仏教説話(正確には「法華経 譬喩品」より)の用語で、「燃え盛る家のように危うさと苦悩に包まれつつも、少しも気づかずに遊びにのめりこんでいる状態」を指す(Wikipediaより)。

    <コメント>
    檀一雄はたしかに火宅の人で、全く悪気がなく、穏やかで優しい人でした。
    そのことはわかったのですが、日本アカデミー賞受賞作品のわりに脚本がイマイチ。松坂さんの絡みは、1人の女に飽き足らないことを言いたいのかもしれないが、それならもっとたくさんの女性を絡めたほうがよかったと思う。
    檀一雄は檀ふみの実父とのこと。

  • 太宰や真田広之演じる中原中也、山の上ホテルなど楽しい。

    いしだあゆみと原田美枝子って北の国からだね。
    原田美枝子ははつらつとしていて女性としてとても美しいし、いしだあゆみと緒形拳は愉快だ。テンポで思い出すのは伊丹十三。

    松坂慶子は蒲田行進曲だね。同じ深作欣二。美しい。

    深作欣二作品のなかではとっても好き。
    今平の楢山節考とか、緒形拳ってやっぱりすごいな。

  • テレビ。

    檀ふみの著作はずいぶん前に読んだことあったし、
    沢木耕太郎の「檀」を読もうかなぁと思っていたところへの
    テレビ放映。

    緒形拳がぴったり。ひどいことしているのに憎めない主人公。

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