流れる [DVD]

監督 : 成瀬巳喜男 
出演 : 田中絹代  山田五十鈴  高峰秀子  杉村春子 
  • 東宝
4.09
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104032935

感想・レビュー・書評

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  • なんとも豪華な女優陣!
    この女優陣×成瀬巳喜男で面白くないはずがない訳で。
    経営不振の芸者置屋を舞台に、時代の流れに押し流されながらも凛々しくあろうとする女性たちの姿をときに切なく、ときに滑稽に描いた傑作。
    いや、大傑作と言っていいんじゃないかな。
    話はただ、舞台になる置屋での日常の出来事を描いているだけなんだけど、これが実に面白い。
    人間をしっかりと描き、それに応える俳優の演技があれば、スペクタクルなシーンなどひとつもなくても「こんなに面白い映画が撮れるんだなぁ~」と感動してしまいました。
    人間以上に面白い被写体って、この世にないんじゃないかと思ってしまいます。

    見所は人間ドラマだけにとどまらず、山田五十鈴の立ち居振る舞いの艶やかさ、田中絹代の品のいい仕草や言葉遣いなど。。。現代人が忘れかけている「日本女性の美しさ」を感じることも出来ました。
    「古い映画なんてつまらない」などと言わずに、若い女性にこそ観ていただきたい作品ですね。

    ちなみに本作の杉村春子は最高!
    今のところマイ・ベスト・春子ですね。

    (1956年 日本)

  • 女優の豪華さはさることながら、適材適所というか、それぞれの女優のキャラがちゃんと立っている。
    また、ものすごく気まずい状況をやり過ごすために用いられる言い回しに感心し、関心をそそられもした。まあここはひとつ・・・とか何とか、今では冗談でお酌のときくらいにしか使われない言い回しも、いろんな状況で使えるんだなあ、と勉強にもなった。
    その言葉を武器に、芸者たちをはじめ作中の女たちは図々しいことを平気でする。いわばパッケージ化された社交上の言い回しをなかば無意識に用いて。それさえあれば、多少なりとも厚かましい振るまいをしても許されるみたいな、そんな空気をみなが共有していて懐かしくなると同時に、それって人間関係を円滑にする上でものすごく深遠な知恵なんじゃないかと改めて実感。
    その意味で、本作はフィクションでありながら、ほとんど貴重な時代の記録とさえなりつつある。女たちが主人公の作品であるだけでなく、彼女たちの発する、渦巻く繊細な言い回しがもうひとつの主役。
    本作の冒頭と最後に挿入される「流れる」川の映像がひときわ、そのひっそりとした置屋の世界の濃度を高めている。

  • 成瀬巳喜男監督の映画を見るのは約15年ぶりで6本目。
    私としてはおかあさんが一番好きな映画なのですが(香川京子が良かったので)。
    名女優の競演、見ごたえありました。特に栗島すみ子は初めて見ましたが存在感がありました。杉村春子はいつもながら上手いですし、 田中絹代も印象に残ります。
    高峰秀子は私の渡世日記も読みましたし、好きな女優さんですが、他の共演者より自然な演技という意味で負けているように感じます。同じ成瀬監督の浮雲の高峰秀子も悪くはなかったですが、私としては木下恵介監督の映画に出ている時が一番輝いていると思います。
    原作も読んでみたくなりました。

  • 今回で観たのは二度目だが、一度目よりさらによく感じた。わたしの好きな芸者の世界の物語ということもあるが、なにより大女優の競演が見もの。これほど豪華な顔ぶれはなかなかない。
    田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子、栗島すみ子と、よくここまで揃えられたと思う。豪華すぎて映画の主題である「流される女達の運命の哀しさ」が感じられにくいというのが難点といえば難点だが、そんなことはどうでもよく、とにかく大女優と共にこの世界に浸れるのが幸せである。
    特にいいのが山田五十鈴。姉役の賀原夏子が、山田のことを「声もよし柄もよし」という台詞があるのだが、まさにその通りで、さらに芸もよしなのだから、とても落ちぶれた役にはみえないほど。ラスト、三味線を弾きながら長唄を唄うシーンでは、あまりのうまさに聞き入ってしまった。
    田中絹代の演技も完璧で、大スターでここまで女中の役を陰となって演じられる女優はなかなかいない。自分を殺すことで自分を生かす。山田とは正反対のタイプで、それでいて観客の目を離さない存在感と品があり、素晴らしい。
    杉村春子もお茶を挽く芸者の役がぴったりで、岡田茉莉子と一緒に「ジャジャンガジャン」を踊るシーンは秀逸。
    栗島すみ子もさすが成瀬が引っ張ってきたトーキー時代の大女優だけあって、やり手の料亭のおかみ役を完璧に演じている。山田の先輩芸者の役を演じているが、山田に一歩も引かない女優ぶりは見事。
    高峰秀子も岡田茉莉子もそれぞれいいが、さすがこの四人を前にすると、若さが目立つ。女は四十からと思わせる、そういった意味でも元気付けられる映画。

  • 終戦間もない日本を舞台に、とある芸者置屋の凋落を描いた作品で、幸田文の小説を成瀬巳喜男監督が映画化。
    蔦の家が零落していくさまは、なんだかそのまま「喪われていった日本」であるような気がして、とても感慨深かった。
    それにしても名だたる女優たちの演技合戦が、まあとんでもない。

  • 幸田文の原作も大好きだけど、映画もしみじみといいなあ。
    名看板だが傾きかけた芸者置屋「つたの屋」に生きるのは、女将と芸者たち、店を継ぐ気はない女将の娘、妹とその子、それに夫と子を失った女中。これら「男のいない女たち」を演じる山田五十鈴、杉村春子、田中絹代、高橋秀子、岡田茉莉子、中北千恵子ら大女優たちが、みんな素晴らしい存在感で見せる。いかにも脇が甘くて店を手放してしまう女将と、だらしないところのある年増芸者を演じる山田五十鈴と杉村春子がきりりと帯を締めて三味線を弾き、芸者としての円熟を見せつけるラストシーンに河の流れが重なり、哀切あふれる幕切れ。傑作。

  • 杉村春子の涙の流し方がマジいいっすね。パネェわ。

  • 梨花の目を通して知ることのできるくろうとの世界

  • 浮雲を みて 成瀬巳喜男は すごいなぁ。
    とおもって、「流れる」をみた。
    いやはや。驚きました。
    日本でも このようなすばらしい 映画 ができるんですね。

    1956年 作品。 幸田文 原作。
    成瀬巳喜男 監督。

    山田五十鈴のもつ 熟女 ぶりと 三味線のうまさ。
    日本の芸者のながれを 受け継いでいる。
    杉村春子と 最後に 伴奏する 三味線は 圧巻。
    芸のきわみだ。
    白黒にもかかわらず 着物も素敵だ。
    帯とのバランスがいい・・・。

    田中絹代 は 細かい芸が きちんとして
    身のこなしもうまい。表情もさりげない。
    古典的な 日本人女子のよさを うまく表現。
    45歳の女中役 として出る。
    田中絹代 を女中として使う 成瀬巳喜男 がすごいのだろう。

    田中絹代は サンダカン8番娼館 のときの演技を見て すごいなぁ。
    と驚いて・・・その後 気になる女優になったのであるが・・
    そのピーンとした清楚が この作品の中では生きている。

    杉村春子が ちょこまかと 年増芸者として でてくるが・・・
    酔っ払って 登場して・・・
    10歳年下の 男に逃げられて・・・そのときの表情から
    山田五十鈴に そのほうが いい といわれて・・・・
    きっとなり そして 高峰秀子に 芸者なんか辞めなさいよ
    といわれて・・・いいよ。やめるよ。といって・・・
    ナミダを ポロリと出す・・・
    ふーむ。この展開力そして 表情の変化のうまさ・・・・
    いやはや。女優ですね。
    『オンナにはオトコはいらないだってさ』
    って いうしぐさなんかは もうたまらないねぇ。

    山田五十鈴が 熟女ならば・・・その上を行く 二人。
    姉役で 妹に 家を抵当に入れて 借金をさせ 利子を
    つけるという ごうつくばばぁ・・・・と
    おだやかで 姐さん役で 相談に乗りながら・・・・
    結局は ビジネスライクに 突き放してみている。
    この女優の貫禄 は いったいなに としらべてみたら・・・
    粟島すみ子 という 女優さんで 
    山田五十鈴の 先輩格のスター。
    どうりで 座敷で向かい合ったら 粟島すみ子のほうが
    威圧感があるのだ。
    そういう空気が じっとりと 画面から流れる。

    こうやって 女優たちが並ぶと
    岡田茉莉子の きれいで若々しさと
    高峰秀子の 平凡さが 表に出てしまいますね。

    三味線とミシン 時代は 大きな変化を遂げていた。
    そういうなかでの 女たちの必死に生きようとする群像。
    成瀬巳喜男は それを描ききっただけでも エライ。

    粟島すみ子 1902年3月15日 -1987年
    田中絹代  1909年11月29日 - 1977年3月21日
    杉村春子  1906年1月6日 - 1997年4月4日
    山田五十鈴 1917年2月5日 -
    高峰秀子  1924年3月27日 -

    あれ・・・山田五十鈴と高峰秀子は 7つしか違わないのか。
    1956年の作品なので 山田五十鈴は 39歳。
    高峰秀子は 32歳・・・娘役をやっていたけど 
    若くはなかったんですね。
    田中絹代が 47歳。・・・・実年齢に近い。

    杉村春子は これからがんばって 
    女優の花を咲かせていくんですね。

  • 成瀬巳喜男の映画はこれが初めて.小津映画が空間で語る良さを持っているとしたら,成瀬映画は人物の表情で語る映画だな,と思った.とにかく女性たちの表情がすごい.セリフもそうだけど,演者から溢れる雰囲気が圧倒的に良かった.

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