小早川家の秋 [DVD]

監督 : 小津安二郎 
出演 : 中村鴈治郎  原節子  司葉子  新珠三千代  小林桂樹  島津雅彦  森繁久弥 
  • 東宝
3.67
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104022103

感想・レビュー・書評

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  • 正確には「こはやがわ」と発音とのこと。

    てっきり中国地方のお話かと想像させておいて、のっけから中村鴈治郎のコテコテ関西弁。舞台は京都伏見をベースとし、向日町、十三、嵐山と京阪地区てんこ盛り。その理由はとさかのぼってみると「兵庫県宝塚市に存在した東宝の源流の1つである宝塚映画制作所の創立10周年記念作品として、小津安二郎を招聘した作品である」に始まるらしい。小津の原節子出演作品が有名で彼女が松竹所属の女優さんかと勘違いしがちなのだが、彼女自身1947年にフリーとなるまでは東宝所属だったということで、「早春」(1956) で東宝所属の池部良が、また「秋日和」(1960) にて同じく東宝所属の司葉子が松竹のスタジオに貸し出されていたという事実ともあいまって、小津の最後から二本目の作品が東宝で撮影されるに至るまでのレールは十分に用意されていたようだ。

    その他のキャストは当時の「東宝オールスター」とのことらしいが、その辺まだ認識が浅く、パッと見ただけではその判断に至れない。森繁久彌にいたっては完全に認識できずスルーしてしまっていた次第…。嬉々としたのは本映画祭二度目の浪花千栄子のホームグラウンドでの演技。One of Sevenの加東大介には後日「秋刀魚の味」(1962) にて再度お目にかかることができてさらなる喜びをえることになる。子役の島津雅彦にはこの映画では少し大きくなってしまっていたので心奪われなかったものの、後日鑑賞した「お早よう」(1959) ではKO負け(笑)

    ただ配役の上でなんといっても光るのが笠智衆と望月優子が演じる近隣の農夫婦だ。この二人は「お茶漬けの味」(1952) でも一瞬ではあるが夫婦役をみせていた。この後も小津が撮り続けていたとしたら「東京物語」以上の夫婦役を演じていたかもしれない。望月優子が飯田蝶子より20歳若く(というのはまだわかりやすいが)、笠智衆が東山千栄子より14歳も若かったという(こちらは完全に驚きの)事実を加味すればこの妄想も現実味が増す。

  • ”The end of summer”に相応しい爽やかで晴れやかでどこか冷ややかな秋映画。

    老舗造り酒屋が舞台で「六甲に行く」という台詞が劇中にあったことから場所は灘かと思っていたけど、後で調べたらまさかの伏見だった。
    宝塚映画製作なのに一部登場人物の関西弁があまりに関西弁じゃなさすぎて、気づいたらツッコミ修正しまくっていた。
    佐々木のお母さんの京都弁はパーフェクトでどこか艶やかな響きがまたお母さんのあのキャラを引き立てていた。
    そりゃ旦那も夢中になるわな。

    小津作品の常連とも言える笠さんがあんな形で登場するとは。
    はっきりした職業は分からんけど火葬場の煙突から出る煙を見るだけ見ときながら手も合わせないなんておかしい。
    只者じゃない雰囲気が登場した時からぷんぷんしていた。

    ちょこちょこ挟まれる心象風景は相変わらず表現が上手すぎたけど本作では後半に向けて不吉な描写が増えていく。
    競輪場に舞う破った紙切れ、火葬場の煙にカラス達。
    穏やかだった作風にそんなホラー要素がいきなり加わったもんだから、他に観た人もきっと度肝を抜かれたんやろなー。

  • 日本/1961年/小津安二郎監督/原節子出演

    造り酒屋の三姉妹を持つ家族小早川家の日常を描く。主人の中村鴈治郎がとぼけた味でさすがだ。何かとというと愛人宅にでかけてしまい、新珠三千代の怒りを買ってしまう。このやりとりが面白い。原節子は41歳で、なにかと「もうおばあちゃんだから」と言う。森繁久彌の縁談話が来るが、結局は断ってしまう。小津監督のコンビは本作が最後だったらしい。いつも笑顔をたたえるいい役者だ。若き司葉子は理知的な美人でその意味では原節子を越えてるのかもしれない。こちらも縁談話をことわり好きな北海道に転勤した男と会いに行くことを決心する。他に、抑えた演技が光る加東大介、大阪人のきっぷの良さ(?)が出てる浪花千栄子と話は地味だが見どころは多い。

    会話のシーンでは一人でカメラに向かって話してるシーンが多い。それがうまくつながってないので、まとめてとって編集でつないでるような気がする。話すシーンに力を入れているとも言えて、小津安二郎らしい。また二人が少しずれて座っているというシーンが多くこれもいからも小津安二郎らしいアングルで自己模倣のようでおかしい。

    こんなことなら死ぬ前にミンクのコートを買ってもらっとけばよかったという団令子。何かというと「ちゃうちゃう」と否定する男、どうせなら一度倒れた時に死んでいてくれれば二度も出てこなくて済んだという杉村。

    中村鴈治郎の死に際の言葉、「そうか、これで終いか、、」というのはいいですね。使ってみたい。

  • 中村鴈治郎の上手さに虜になったきっかけ。
    飄々とした憎めない感じがよく出てる。
    女優さんもみんな綺麗。

  • 関西を舞台にしている小津映画は珍しい、殊更に飄々として惚けた会話が楽しめます。孫とかくれんぼをしながら家を抜け出して愛人宅に向かうなど、中村鴈治郎のキャラがなんとも憎めないですね。

    最初の方で出てくるハッとするような美女がだれかと思ったら白川由美でした。豪華な女優陣の中でやはり原節子は別格の存在感。

  • 原節子、またまた未亡人役として登場。冠婚葬祭はドラマがあるね。「品行は直せても、品性は直せない」とのたまう原。ニコニコしてる割に言ってること結構キツイ。

  • 道楽者の老人の放蕩ぶりと、そんな彼に一喜一憂する家族の姿を描いた小津安二郎監督晩年の1本。

  • やはりこの映画は中村鴈治郎あってのもの。そして、その娘を演じる新珠三千代。この二人さえいてくれたら、いつまでもいつまでも見ていたいくらいのものである。また、その一方で浪花千栄子演じる中村鴈治郎の「焼けぼっくい」が、見事にリアリストな「その筋の人」を演じていて、これもまたいい。やはり水商売の女性というのは、こうでなくっちゃいけない。

  • 噂の小津さんの初めての映画。
    とってもとってもよかった。

    ちょうど普段接している建具や柱たちの現役時代
    その姿をおがめられるだけでも十分なくらい。
    もうもう1秒1秒見入ってしまった。
    こんなにも関心の幅が広がると、映画1つでさえ違う楽しみが増えるだなんて、自分でもビックリです。

    そして出演女性陣の美しさ、佇まいの美しさといったら,,,

    貧困はなおせるけど、品性はどうしようもできないわ、的な台詞にはハッとさせられた
    劇中ではお見合い相手のことについての話しのなかででてきた台詞だったけど、なぜか、広義にも捉えてしまい、小早川家の秋が撮られた時代と、いまわたしが生きるこの時代においても、なんだか言えることやなと、、なんとなく感じたのでした

    ああ、ひさしぶりにこんなお腹いっぱいな映画を見ました

    これより小津さんの映画を見続けます

  • 小津安二郎監督 1961年作品

    造り酒屋の大旦那 小早川(中村鴈治郎)。
    長男の嫁 秋子(原節子)で、長男はなくなっている。
    養子婿(小林桂樹)をとり造り酒屋を継いでいる長女文子(新珠三千代)
    お見合いを勧められている次女 紀子(司葉子)
    と 豪華な配役陣である。
    カラー映画なので 妙にくっきり鮮やかである。

    小津安二郎作品の特徴は 最初に広告塔などが出るが・・
    それが、ホテルニュージャパンだったのが印象的。

    森繁久弥が バーで 見合い相手の原節子に会うところから
    始まるが、二人の出身の違いが表現される。
    鉄工所の社長である森繁久弥が『OKや。大OKや。』と
    『俗』っぽさを、難なくやり遂げる。

    小津安二郎のオハコの 『嫁行き物語』かと思ったら
    今回の主題は 中村鴈治郎のやけぽっくりから始まる
    浪速千栄子と団令子 母娘の対応と
    中村鴈治郎の心筋梗塞で倒れ 死に至るまでの
    『死』を正面にすえた物語だった。
    あまりにも主題への直接的なぶつかりかたを、
    中村鴈治郎の好演で表現する。

    男友達が外国人という
    団令子の 『ミンクのコートを買ってもらうまで
    お父ちゃんと呼ぶことにしよう』という
    ドライな女性の登場も 時代の変化を大きく表している。

    中村鴈治郎とがっぷりぶつかるのが
    新珠三千代で、芯の強さを表現しながら
    心筋梗塞で倒れたにもかかわらず元気に復帰する姿に
    涙する娘を演じる。
    父親に意見する新珠三千代の
    まっすぐな娘の眦がなんともいえない。

    母親の命日で 嵐山の料理屋で一堂会するのが
    小早川家の一番いいときになる。

    『なんやこれでしまいか。これでしまいか。』と最後の言葉を残す。
    妹の杉村春子の
    『さんざんすきなことしてきて、これでしまいかは、
    ないよね。』と わらって、
    『でも死んでしもうたら、なんもかもしまいや』と
    なきくづれる・・・・・

    火葬場の煙、カラスなどの死を象徴する
    表現は ちょっと思い込みが激しすぎたのかもしれない。
    いつもなら小津安二郎らしく さらっとしているんだが・・。
    しんがりに 笠智衆を農夫で登場させたかったのだろう。

    のべおくりであるいていく 時には 
    小津安二郎好みの からりと晴れている。

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著者プロフィール

1903年東京深川に生まれる。1923年、松竹キネマ蒲田撮影所に撮影部助手として入社。大久保忠素組の助監督を経て1927年、時代劇『懺悔の刃』で監督デビュー。以来1962年公開の『秋刀魚の味』まで、全54作品でメガホンをとり、サイレント、トーキー、モノクロ、カラーそれぞれのフィルムに匠の技を焼き付けた。1963年腮源性癌腫により死去。1958年紫綬褒章受章、1959年芸術院賞受賞、1962年芸術院会員。作品『生れてはみたけれど』(1931)、『出来ごころ』(1933。以上、松竹蒲田)、『戸田家の兄妹』(1941)、『晩春』(1949、芸術祭文部大臣賞)、『麦秋』(1951、芸術祭文部大臣賞)、『東京物語』(1953、芸術祭文部大臣賞、ロンドン映画祭サザランド賞、アドルフ・ズーカー賞)、『早春』(1956)、『東京暮色』(1957)、『彼岸花』(1958、芸術祭文部大臣賞)、『秋日和』(1960、芸術選奨文部大臣賞。以上、松竹大船)、『宗方姉妹』(新東宝、1950)、『浮草』(大映、1959)、『小早川家の秋』(宝塚作品、1961)ほか。

「2020年 『小津安二郎「東京物語」ほか【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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