スイミング・プール 無修正版 [DVD]

監督 : フランソワ・オゾン 
出演 : シャーロット・ランプリング  リュディヴィーヌ・サニエ 
  • 東北新社
3.48
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感想 : 147
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4933364611031

感想・レビュー・書評

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  • フランソワオゾン、『まぼろし』『8人の女たち』と観てきてあまり面白くなく、特に好きな監督ではないなーと思ったのですが、この『スイミングプール』はまだマシというかけっこう面白かったです。

    私はオゾン懐疑主義者で、おしゃれっぽいから観てる人が多いんじゃね?と思ってる。この人はセザール賞とか受賞してないですからね。だからけっこう厳しめの意見です。
    しかし90〜00年代以降のフランス映画ってどうなのか。アンファンテリブルの3人以降だと、ジャンピエールジュネとオゾンぐらいしか私は知らないので、もうちょい開拓したいところです。あと最近はフランス本国よりも、北米のフランス系監督たちの方が勢いがあると思う。デイミアンチャゼル、ドゥニヴィルヌーヴ、グザヴィエドラン、フィリップファラルドー…などなど。

    この映画はいちおうサスペンスに分類されるけど、どちらかといえばドラマ映画。主演はシャーロットランプリングとリュディヴィーヌサニエ。

    シャーロットランプリング、『愛の嵐』のレビューにも書きましたが好きな女優さん。特徴的な三白眼。若い時から脱いでるイメージが強いし、その頃の作品を観てこれを観るとより面白いと思う。一時低迷したそうですが『まぼろし』以降オゾン作品の常連になって復活したそう。
    リュディヴィーヌサニエの方は前作『8人の女たち』にも出てた。

    シャーロット演じる主人公はイギリスのマンネリ中の推理小説家。編集長のフランスの別荘へ、ロンドンから気分転換と執筆のためにやってきて…という内容。
    前々作『まぼろし』とも重なる内容だけど、フランスなどヨーロッパではバカンスがけっこう大事なので、バカンスものというジャンルがあるのかな?と思う。例えば私の好きなエリックロメールの『海辺のポーリーヌ』『緑の光線』など。
    途中から出てくるリュディヴィーヌサニエとシャーロットが典型的な対照になっている。若くて性に対して奔放、そして巨乳。

    シャーロットは若い頃から貧乳だし、典型的なイギリス人らしく今は保守的。だけどセリフで面白いのは「若い頃はスウィンギングロンドンの時代だったからね」。つまり『ナック』とかその頃。

    イギリスの女性推理小説家といって真っ先に思い浮かぶのは、やはりアガサクリスティ。というかアガサぐらいしか知らないだけだけど。私はアガサの「本としての推理小説」にはあまり興味がなく、読みたいのは『春にして君を離れ』とかそっちなんです。それが念頭にあるので、シャーロット演じるサラの気持ちはよくわかる。

    オゾン本人はアガサではなく、パトリシアハイスミスなんかをモデルにしているそう。オゾンもパトリシアハイスミスも同性愛者。だから『太陽がいっぱい』と地続きと考えると、理解しやすいかもしれません。

    この映画は、リュディヴィーヌサニエ演じるジュリーが、ポンポン脱いでセックスしまくるというのも特徴。だけど、オゾンが同性愛者だということを考えると、「単にエロい」とはまたちょっと違うと思います。
    「ヌードやセックスシーンとエロさ」について私はよく考えますが、やはり異性愛を描く男性監督のエロさとは違っていて、粘っこさや陰湿な感じがあまりない。
    男性監督だと例えばヒッチコックやデパルマとかだと変態性を感じる。実相寺監督もエロい。ヴァーホーヴェンだとちょっと違って、幼児性と芸術性。
    『愛の嵐』だとリリアーナカヴァーニ監督は女性だから、エロというよりやはり芸術性が高い。

    オゾンのこの映画も、エロというよりは南仏バカンスの開放的で健康的な感じがものすごくします。そして、タイトルにもなっているプールはやはり、主人公サラの心の澱みと開放を表しているのではと。


    と、基本的にはサスペンス映画の形式で、主人公がミステリ作家だから入れ子的ではあるけど、最終的にはこれアート映画だよねって内容。まさにアガサの『春にして君を離れ』とそれ以外の推理小説という感じ。

    妄想なのか現実なのかわからなくしているつくり(「そこでつなぐと時系列がおかしくなるだろ」って編集)で、その辺の描き方が、オゾン本人もどっちにも取れるようにしていて、本人も適当なのでは?と。ラフにザザッと描いたみたいな、まさに絵画的。
    例えばリンチの『マルホランドドライブ』なんかだと、ちゃんと観ると整合性が取れてるのだけど、この作品は途中からリンチ的世界に入ってしまう。だからあんまり評価されないのも当然かと。このへんが「オゾンはいつも微妙…」と残念な点でもあります。


    脇役の重要人物、編集長はチャールズダンスさん。日本だとあまり有名ではないかもですが、イギリス映画やドラマで顔をよく見るので、イギリス本国では有名な方ではないかと。私は観てないけど、『ゲームオブスローンズ』を観てる方だと知ってるかも知れない。あと『ゴジラ キングオブモンスターズ』にも出ていた。
    アメリカ人俳優で例えると、ジェームズクロムウェルとかJKシモンズとかそういうポジションの俳優さんかなと思う。
    この人、ドラマ版の『そして誰もいなくなった』に出ていたから、そういう面でもアガサ的なものをつい連想してしまいます。『スイミングプール』の方がだいぶ前だけど。

  •  中年の女流作家サラは、小説は売れているのに満たされない日々が続いていた。編集長(愛人)にもあんまりかまってもらえない。
     そんな時、この編集長から南仏の別荘で過ごしてみないかと提案される。サラは一人で別荘生活を満喫するが、そこに編集長の娘だという若く美しい娘、ジュリーが現れる。奔放な娘ジュリーにサラは嫌悪感を覚えるが。。。。

     と、普通なストーリー展開から、だんだんとサラとジュリーがお互いを理解し始め、やがて殺人事件が起こり。。。と思いきや何か変な流れ。そして最後のドンデン返しでやっとこの映画が普通じゃないことが分かる。

     (以下ネタバレ)
     殺人が起こってから、サラはその殺人の手がかりを探し、その後のシーンではその時の殺人の共犯(死体を隠す)になっている。つまりこのシーンは作家サラの空想上での出来事なのだと思う。
     そして最後で、娘ジュリーは全くの別人として現れる。奔放な娘ジュリーもサラの空想の人物だったのだ。
     サラは本物のジュリーと会っていたのか、殺人は本当にあったのか、それは分からない。ただ、サラはジュリーの母の作品らしき本を出しているので、あながち全部が空想という分けではないのだろう。

     ジュリーはサラのもう一つの人格のようなものだったのだと思う。難解で分かりにくいが、改めて見てみると、最後にジュリーが編集長に違う会社から出した自分の新しい本をつきつけるシーンで不思議な爽快感を感じる。
     この映画は、一人の女性が自分を内省し、新しい一歩を踏み出すまでの話だったのではないかと思う。

     ジュリー役の子がいいねぇ。決してそんな美人じゃない。でも何か惹きつけられる魅力を持ってる。

     南仏の景色、雰囲気とジェリーの若い肉体がただただ美しい、幻想的な画とストーリーの映画。

  • 途中までわかりやすい擬似的な母子愛の話なのかと思いきや、ラストで一気に謎が深まる叙述トリック小説のような映画。
    幾つもの解釈があり、他人の謎解きを読んでまわりながら同意したりそこは違うのでは?と考えこんだり…

    とりあえず一度、あまり情報を入れずに素直に観てみるのがいいと思います。

  • 芸術的な作品。女性の老いとクリエイティビティを幻想的に、プールのある別荘を小道具に閉鎖的な異空間(ある意味異界である)として表現している。若さに対する嫉妬はクリエイティビティの源なのか。最終的に小説家の苦悩のような理解をすると物語の広がりがなくなる気がする。2人の女性の関係の変化や不安定さが絶妙ではあった。

  • はて?
    妄想と現実の境目どこ⁉︎
    フランス映画っぽさ満点の、謎だらけストーリー、モヤモヤ感が残るけど、映像がきれい、ジュリーがかわいい、ジュリーの体がパーフェクトってことで☆4つ。ストーリーを楽しむというよりは目で楽しむ映画かな。

  • 不思議な作品だった。
    二人の女優がとても良かった。
    特にサラがジュリーに侵食されていく様は、見事だった。

  • 映像がとにかく綺麗。
    ジュリーとにかく可愛い。
    ラストは読者に想像させ、考えるという結末。静かで美しい。

  • 娘役がきれいすぎて現実味がないのがなるほど、となった最後。登場人物が少なく、なんとなく閉じた世界で話がすすむので余計に最初と最後のオフィスのシーンがいい違和感となって対比されてる気がした。

  • 公開を含め3回目なのだけど、絶対解明できない謎が最後に残っていて、それを見たさになんとなく見てしまう。

    今回気づいたのは、セリフがない長い時間の美しさ。先日「Somewhere」で映像だけで見せる時間に退屈してしまったのだが、この映画ではそれが全くなかった。これが監督の技量というものなのかしら?

  • 人間は、自分勝手に編集して、自分の世界を作り上げている。
    作家である主人公の作り上げた世界と現実との境界線は、誰にもわからない。そんなことを思わせる、とても面白い映画でした。

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