悪い男 [DVD]

監督 : キム・ギドク 
出演 : チョ・ジェヒョン  ソ・ウォン 
  • エスピーオー
3.74
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988131902300

感想・レビュー・書評

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  • 今まで観た中で一番不可解、直接的ではない胸糞映画かもしれない。でも映画としてはめちゃくちゃ面白い!という変な作品。
    韓国映画詳しくないので、キムギドクは初めて観ました。知ったのはブクログでなので何年か前だけど、観たい観たいと思って観ないうちにキムギドクの例のスキャンダル…で、作品を観た結果「この人はやっててもおかしくない」と感じてしまった。限りなく黒に近いグレー笑。

    なんかこう、あまりにも歪みすぎてて、こじらせすぎた結果、360度いや720度ぐらい回って元の位置に戻って、それを「純愛」って無理矢理言ってる気がする笑。
    これは賛否両論あっておかしくないし、女性でムカつく人は多いかも。逆に、キムギドクファンの女性もけっこういるみたいで、色々と意見を聴いてみたいとこです。

    まず惚れた女をハメて(?)売春宿とかソープに売って、体を求めるわけでもなく心だけ奪うというやり方がものすごく卑劣。
    「セックスせずプラトニックが純愛」みたいな描かれ方だけど、いやいや普通の人たちはちゃんと愛のあるセックスしてますから!!笑
    で、主人公のヤクザはインポなのか?と思ったらそうでもなくて、他の女は抱く。んでただ見てるだけで、ジャンルでいうとNTRものなんだけど、これで勃起してるかというと描いてないからよくわからない。まあ描いたら「純愛もの」ではなくなるんだけど。

    主人公の中でもなぜか寝取らせて良いやつと悪いやつがいるようで、ムカつくやつにはさせない。

    女の方も女の方で、最初は憎んでるんだけど(当たり前だ)、なぜか途中から「あれ、私この人のこと好きかも」みたいになっちゃう。これってストックホルム症候群じゃね?洗脳されて、共依存状態みたいになってね?
    ただこういうことは現実にもあるそうで、人から聴いた話だと交通事故で夫を亡くした人が、その加害者男性と謝罪のために交流してたら、最終的にその人と再婚したとか。マイナス100から始まったのが、プラス100にいきなり切り替わる。

    あと主人公のヤクザは喋らない(喋れない?)んだけど、終盤に「えっ!?」みたいなことが起こる。
    これ、あぁコンプレックスがあったからなのか!って普通は思うけど(少なくとも私はそう思った)、特典のキムギドクインタビューを観ると「昔、声帯を切られたんだ」ってそれ『シェイプオブウォーター』じゃねえか!笑
    だから、モンスターと美女の恋、『美女と野獣』みたいに考えると解釈しやすいのかもしれない。

    監督の行状と作品はなるべく切り離して考えようとは思うけど、韓国の男性優位社会、監督は軍隊でめちゃくちゃ馴染んだ(しかも徴兵ではなく志願)、など色々考えると、この人のマチズモとか肥大化したナルシシズムをどうしても感じてしまう。

    なのに映像や発想は天才的に面白かったりする。鏡やガラスの使い方。「こういう表現をしたいからこうした」的な部分が感じられなくもないけど、終盤は超現実的なことが起こる。あれは心象風景なのかなんなのか、もう一度見返さないとよくわからない。このへんがキムギドクにハマる所以だろう。「もしヤクザと女子大生という関係じゃなかったら、あり得た未来」なのかもしれませんね。

    売春…というか例えばソープとかって、あくまで場所なので。中でのことは当人同士。そこで恋愛感情が起きたら?みたいなのも発想としてあるのかも。
    でも出発点が、女性の意思を完全無視、人権侵害だからねえ。自分から働きだしたわけではないので。
    特典インタビューで「男性なら誰でも思うことを映画化した」とか言ってるけど、思わねえよ!と笑。好きな子とセックスしたいとは普通思うけど、相手をハメてNTRしたいみたいな発想はしたことないよ!そう思うのは特殊な性的嗜好の人ですから!笑

    一点だけダメだったのは、アジアン隅田似の売春宿のママ?が、ビンタするときにためらっててリアルじゃない点。ここは問題の「演技指導」しなかったのか、キムギドク…。

  • 公開されていた時にガラガラの映画館で観た&その後レンタルで二度。
    この作品からキムギドク作品にはまった。
    混じりけのない泥のような純愛。
    女性はどう受け取るのかわからないけど俺はすごく好きで共感してしまった。色彩も大好きでパンフをポスター代わりにしてる。

    歪みゆえわかりにくいし四☆にしたいんだけど個人的好みで満点。

  • センチメンタルな内容だけれど、主人公のヤクザがほとんど喋らないという縛りが面白い。タイトルからの連想で、吉田修一の『悪人』を思い出した。あれにくらべれば『悪い男』の方が断然よい。

  • ・・・・理解できない。
    かなり、超越してる感じ、悟りを開いてる感じ

    男女間の愛情は性が必ず絡む。性はSEXが絡む。
    人間の性は、動物の性よりもっと複雑なのだろうか?
    三角形の頂点を表現するのに無駄を省いた感じなのだろうか(ストレートすぎる)?

    もし本当に!!、こういう愛情があるのなら、とてもすばらしいだろうと思います。

    キムギドク作品全般に言えることかもしれないが、台詞が少ないのがいい。
    顔の表情含めた雰囲気は、言葉で訴えられるよりいろんな感情が伝わってくる。
    というより、言葉に集中しなくてすむぶん、いろんなものが見えてくる(見てしまう)
    言葉は自分の感情を伝えるほんの一部でしかあってはいけない気がした。

  • BAD GUY
    2001年 韓国 103分
    監督:キム・ギドク
    出演:チョ・ジェヒョン/ソ・ウォン

    ヤクザ者のハンギ(チョ・ジェヒョン)は、ある日偶然見かけた清楚な女子大生ソナ(ソ・ウォン)に強烈に魅かれてしまう。ソナは彼氏と待ち合わせ中だったが、ハンギは突然ソナを捕まえ一方的なキスをする。その後もハンギはソナをストーキング。そして手下を使ってソナを陥れて借金をさせ、その借金のカタに彼女を娼館の売春婦に落とすが…。

    キム・ギドク初期の代表作をようやく。あらすじだけ辿るとなんとも最低な男なのだけど、これがなんとも不思議なことに、見終ったあとの感触は純愛映画のそれ。

    ハンギの愛情表現は歪みまくっているし、序盤のキス&ストーキングは本当に気持ち悪く、こんな男に好かれてしまったソナがひたすら気の毒だったのだけど、ある日ハンギはストーキング中に、本屋でエゴン・シーレの画集を立ち読みしていたソナが、気に入ったあるページを破り取るのを目撃。さらにソナは本の上に誰かが忘れた財布をみつけるが、届け出るどころかトイレで中身を抜きとり素知らぬ顔で出てくる。

    この財布事件はハンギの罠だったわけだけど、そもそもソナがここで財布の中身を盗まないという選択肢もあったはずなので、彼女の品性もちょっと疑ってしまう。まあそれはさておき、この財布の持ち主(もちろんハンギの手下)が、中身の大金を返せとソナに詰め寄り、そのままソナに借金を背負わせる流れ。せめて彼氏や家族に相談すれば…というツッコミを入れたくはなるがそこはまあ都合上スルーしましょう。

    さて娼館に売られてしまったソナ、しかしハンギは彼女を買うわけでも、借金のカタに自分の女にするでもない。ただただひっそりと、マジックミラー越しに彼女の仕事部屋を覗き見。そのくせいざ客が事に及ぼうとすると手下を使って邪魔させたり、ついに彼女が客を取ったらその客を事後にボコボコにしたり、一体なにがしたいんだか全く意味不明、支離滅裂な行動を取り続けるのだけど、これがなぜか、彼なりの一途な愛し方らしい。

    ソナは嘆き悲しみ、やがてソナに惚れてしまったハンギの弟分ミョンスにより、自分がこんな境遇になってしまったのはすべてハンギのせいだと知る。当然彼女はハンギを激しく憎むが、ハンギはただただ黙って彼女の憎悪を受け入れる。

    その後もすったもんだあり、刑務所に入っていたダルスという男が娑婆に戻ってきたことで、ハンギ一派と争いが起こり何度も流血沙汰。ついにハンギの弟分ジョンテがダルスを殺害。しかしハンギはジョンテを庇って自分が自首する。この刑務所にソナが面会に行く場面がとても良い。ソナの中で憎悪が愛に転換していることがはっきりとわかる。ハンギを憎むことがソナの生きる支えになっていたというのもあるかもしれない。

    海辺のシーンもとても好きだった。本当にあったことなのかどうか不明な幻想的な場面。二人が砂浜に座っていると、赤いワンピースの女性が海へ入っていく。ソナは驚くが、ハンギには見えていない様子。そしてソナは、砂浜に埋められていた、バラバラの写真を見つけ、繋ぎ合わせる。二人の男女、しかし顔の部分だけがみつからない。終盤で、この写真の中の男女がハンギとソナで再現される。とても美しい場面だ。

    個人的にはこのシーンで終わって欲しかったけれど、物語はその後の二人の歪んだ関係も描いて終わる。なんというか、ハンギのしたことは許されるべきではないし、もっと彼を嫌いになりたいのだけど、なんと、そうできないのがこの映画のすごいところ。観客もまたソナ同様、彼の愛を信じてしまうのだ。キム・ギドクの映画はいつもそうなんだよなあ。暴力的なのに、なぜか見終ったあとの気分は悪くならない。とても美しいものを見たような気持ちにさせられる。

  • 初めてのキム・ギドク!面白かったー!この作品の屈折した愛情表現は、芸術ならではの表現に見えたのと同時に、男の女の間は本人同士の間だけで通じる感情があるとすれば、リアルなところを描いている作品かも。相手が何をしてようがお互いを必要とする姿は夢あるなぁ・・・。

  • 初めて見たとき

    極端な人間性に
    こんなに焦点を当てると
    キャラクターを構成すると
    凶器とはかなさしか残らないんだなあと
    口を開けていました。

    繰り返しみることは無くても
    記憶に残ります

  • 主人公の「悪い男」だけでなく、その子分たち二人が実にいい雰囲気を出している。そうたいしてこの世界では出世はできないだろうが、それでも居心地のいい空間を維持してきた三人なのだろう。
    だが、そこに一人の女がやってきたことでその均衡が崩れていくのである。
    といっても、それはけっして裏切りとか憎しみということではない。兄貴の子分に対する気持ちや子分の兄貴に対する気持ちは変わらない。ただ、幸福なバランスが崩れてしまう。ゆっくりと始まる悲劇を私たちは目撃することになるだろう。

    そして兄貴分と女の関係。これはまさしく母子関係であり、そこには最初からセックスが入る余地はない。しかし、あらゆる子どもが母親に忍従を求めるのと同様、この兄貴も女に対して苦行を強いていくのである。そして女は聖母のようにその苦難を受け入れていくのだ。
    まだ見ていないが、この世界がまっすぐピエタにつながっていくんだろうなぁ。ピエタを早く見なくっちゃね。

  • 歪な愛が正当な愛へと変容することなく、歪なまま落着するのが面白い。

  • (2001年作品)

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