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- / ISBN・EAN: 4988126202897
感想・レビュー・書評
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死んだ母を家ごと燃やし、ギルバートとアーニーは、女の子のキャンピングカーに乗って、生まれてから離れたことがなかった町を出た。
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小・中学生時代の個人的な体験とギルバートの境遇との類似もあって、いやに共感する部分の多い作品だった。身内でなく幼なじみが知的障害を負っている私と、引き籠もりの母を含めて父無き家族を支えていかなければならないギルバートの境遇など比べるべくもないのかもしれないけれど、画面のギルバートに対して「こんなことって僕にもあったんだよな」「ああ、この気持ち分かる」と思うたびに、今になって何か当時の行為への認可状を与えられたような、あのときああしたのは全然間違ってはいなかったんだと承認されたような気になるのだ。
『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』では、寄る辺ない少年の目を通して人間の繋がりの暖かさを描いたハルストレム監督。本作では、一家を支えるために飛び立つことを諦めなければならない青年を軸に、家族が持つ負の側面にもスポットが当てられている。「誰かに必要とされること」の重みを伝えようとするハルストレム監督の気概が両作品とも感じられ背筋が伸びる思いがした。この信念は後年の作品『サイダーハウス・ルール』にも引き継がれている。 -
WHAT'S EATING GILBERT GRAPE
1993年 アメリカ
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ジョニー・デップ/レオナルド・ディカプリオ/ジュリエット・ルイス
今となっては豪華共演のジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの兄弟。個人的にはディカプリオは、このころが一番「美少年」だったし「演技派」だったと思う。一方ジョニーも当時からティム・バートン作品などの奇抜メイクやコスプレもののイメージが強かっただけに、この作品では「素顔」っぽさ、普通の若手俳優っぽい素朴な感じがとても良かった。どちらかというと過激な役柄の印象も強いジュリエット・ルイスも、この作品では自然体なのに存在感がありとてもいい。
今更あらすじを説明するまでもないだろうけれど、個人的にはなんてことないシーンがたまに泣きツボにはまる映画で、知的障害者の弟にとても優しいお兄ちゃんの仲良し兄弟っぷりも微笑ましくて泣けるし、反動で、二人が争うシーンも泣ける。そしてなぜか、肥りすぎて家から出られないお母さんが弟のためには立ち上がり家を出ようとする、そのシーンで妙に胸を打たれた。語弊があるかもしれないけど、動物の母親が子供を守ろうとする本能に近いものを感じて。
愛しているからこそ枷にもなる家族の存在。でも実はいつでも自由になれるんだよ、というメッセージが清々しい。
(1995/1/29)目黒シネマ -
観たいと思って数年。2015年、やっと観れた。
ディカプリオが熱演すぎる!19歳でこの演技、どこで身につけたんやろう。いつでも明るいアーニーは困らせるけどなくてはならない存在。
あと、ジョニーデップは苦手ですがこの頃の彼は長髪でいい意味で普通でめっちゃかっこよかった!アーニーを思う気持ちが素敵。
ショートカットで色白ベッキーが可愛かった。淡々と進むけど、飽きさせないいい映画だった。 -
静かで地味で暗い。
陰鬱とした世界に生きる兄と、
その中でも無邪気に光る弟のコントラストの妙。
幼いディカプリオがすごくいい。
オスカーノミネートも納得。 -
知的のハンディを持った弟アーニーや夫の自殺から巨漢になってしまった母をもつギルバート。
ある日、車が故障してしまったことから一週間街に滞在することになった少女ベッキーに会うことで心を開いていく作品。
どこにでもあるような街の日常をただ切り取ったようなお話も不思議な魅力にとりつかれています。
なんといっても若きレオナルド・ディカプリオの演技が素晴らしい。
ハンディを持つアーニーは周囲には一見トラブルメーカーのように見えるかもしれない。
けれどもそれは他人を面白がらせたい、笑わせたい純粋なエネルギーからくるものだ。
喜怒哀楽、スイッチの入りかた、仕草、エトセトラ。。
もちろん吹き替え版も上手く表現されていますがこの作品はぜひ役者の声を聞きたいと2回目は字幕で観ました。
「家族のことを考えると街を出られない」と言うギルバートの気持ちを考えるとなんともいえない気持ちになる。
ベッキーに出会ってだんだんほどけた何かも、逆にそれが彼をツラくしている部分もある。
ギルバートにとって彼女は現代でいうカウンセラーみたいなものなのかもしれない。
ラストのギルバートとアーニーの新しい一歩にはほんとうによかった!
何度もリピートしたくなる作品です。 -
過食症の母と知的障害者の弟をもつギルバートは、心の奥ではどこか別の場所へ行きたいと思いながら、家族のために自分を滅して生きてきた。
しかしキャンピングカーで祖母と旅をしている少女との出会いが、彼と家族の生活を少しずつ変えていくことになる。
ラストの炎は、弔いとともに彼らの解放も表現していると思った。だからあんなに美しく、彼らは微笑んでいたのだ。 -
自殺した父親が残した家に囚われた一家のお話。昔は町一番の美人だったけど今は見る影も無くなってしまった巨漢の母と、しっかり者の長女、長男(主人公のギルバート、ジョニー・デップ)、気の強い妹、知的障害を持った弟。
そんな一家の住む町に、旅ガラスのベッキーがやってきて、新しい風が吹く、っていうお話。
ジュリエット・ルイス扮するベッキーの、包容力があって、自然体で、凛とした様子がとっても素敵。
レオナルド・ディカプリオの演技も、本当に知的障害を持ってる人なんじゃないかと思うほどで、派手な映画で見せる演技ばかりが売りじゃないんだなあ、としみじみ見入ってました。
子供が側にいながら性欲を持て余すカーヴィーさんだけは全然好きになれなかったけど、なんか懐かしい気持ちになる風景がたくさん盛り込まれたしっとりした映画です。 -
生まれ育ったアイオア州の小さな田舎町から出たことのないギルバートは、知的障害を持った弟アーニー、夫の自殺から7年間全く外出をしていない過食症の母親と二人の姉妹と暮らしていた。ある日街に故障した旅のトレーラーが停泊することになり、少女ベッキーと出会う。
疲弊していたギルバートの心に少しずつ変化が表れ、悲しみを乗り越えながら成長していく。
ディカプリオの演技力に驚きました。 -
ひたすら地味なのに、その地味さこそが強みになっている。
ジョニー・デップはたいてい派手なメイクが特徴なので、こうして見ると実は普通の人なのだなあとある種の感慨を覚える。もちろん美男子なのだけれど、親近感があるのだ。
ディカプリオのアーニーはすごくよかった。何よりジュリエット・ルイスの聡明さと美しさに酔いしれる。理想だなあ。ショートがすごく映えて、この透明感は狙って出せるものじゃなくて天性。
不幸の連鎖が続いて、出会いと別れも連鎖する。自分を犠牲にしているギルバートが、無理に言い聞かせるのではなく心の芯から弟を守りたいと思う尊い気持ちが伝わってきた。たまりにたまった各々が互いを”想い合う”気持ちが浄化されていくのがあのラストのように思う。家を焼くという終わり方はとても希望のあるものだった。
(20130805)