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- / ISBN・EAN: 4523215005388
感想・レビュー・書評
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ローマ中心部の豪邸に一人暮らす孤独な老教授が、ある家族の乱入によって生活をかき乱され、つかの間の彩りと破滅を迎えるお話。
舞台は1970年代と思しきローマ。
ローマの豪邸で「家族の肖像」と呼ばれる絵画コレクションに囲まれながら、一人静かに隠居生活をおくる「教授」。
しかしある日、とある伯爵夫人とその娘のリエッタ、リエッタの恋人のステファノが押しかけてきて、教授の邸宅の2階を強引に借りてしまう。
2階に住んだのは、伯爵夫人の若き愛人コンラッド。
孤独に慣れてしまっていた教授は、あまりに騒々しく図々しい四人に、最初はげんなりしますが、コンラッドが類稀なる芸術の知識を持っていることと、挫折を味わった暗い過去を知り、彼に惹きつけられていきます。
厄介ごとばかり持ち込む奔放な彼らを理解できず、手を焼く教授。
しかし、閉じられていた自分の世界に変化と彩りを添えてくれた彼らに、彼の人生では持つことが出来なかった家族のような親近感をいつしか感じるようになっていきます。
しかし、そのつかの間の幸せはあっけなく崩壊して…。
時代に取り残された壮麗な屋敷の中で、過去の遺物の象徴のような孤独な老教授を軸にして、静寂と喧騒、共鳴と無理解、反発と魅了、富める者と貧しい者、清廉と蠱惑、新旧世代、政治思想、彩りと破滅…ありとあらゆる対立的な要素が複雑に絡み合った物語が、ヴィスコンティらしい、これでもかというほど豪奢な映像によって展開していきます。
物語の劇的かつ悲劇的な終わり方は強烈で、なんとも表現しがたい色々な感情が呼び起こされます。
孤独な老教授役のバード・ランカスターの哀しみに満ちた静けさと、老教授を魅了するコンラッド役のヘルムート・バーガーの妖しい魅力が、実に対照的ながら調和が取れていた見事な作品でもありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
GRUPPO DI FAMIGLIA IN UN INTERNO
1974年 イタリア+フランス 121分
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:バート・ランカスター/シルヴァーナ・マンガーノ/ヘルムート・バーガー
http://www.zaziefilms.com/kazokunoshozo/
1970年代のローマ。一人静かに豪邸で暮らす老教授(バート・ランカスター)の趣味は、家族の団欒を描いた古い絵画を集めること。ある日、絵を持って訪れた画商との商談のどさくさに、一人の女性が一方的に闖入してくる。彼女の名はビアンカ・ブルモンティ伯爵夫人(シルヴァーナ・マンガーノ)。娘のリエッタ(クラウディア・マルサーニ)と、その婚約者ステファノ(ステファノ・パトリッツィ)の新居を探しているという名目で、強引に教授の家の二階を借りようとする。弁護士を籠絡し押しの強いビアンカの強引さに負けて教授は二階を貸すことにするが、実際にそこに住み始めたのはビアンカの愛人コンラッド(ヘルムート・バーガー)で…。
ビスコンティ晩年の代表作。時代はほぼ現代だが、教授の暮らす本や絵画だらけの豪邸はおそらく前時代の貴族の名残りだろう、調度品などとても耽美で素敵。しかしそうして静かに暮らす教授の生活を、突然乱してくる闖入者たち。ビアンカが押しかけて勝手に部屋を貸せと言い出し、娘も我侭放題、あげく住みだした愛人コンラッドが浴室を改装するために壁や床を破壊、台所の天井は崩れ大切な絵画に水漏れが…という滅茶苦茶な展開に、見ているだけでストレスが溜まる(苦笑)
教授は苦い顔をしつつも、ビアンカの勢いに抗えない。粗野だが美しい若者コンラッドは、しかし教授と話していると意外な教養を見せる。教授の好きな絵画やクラシック音楽に理解を示し、伯爵夫人母娘よりもずっと知的であることがわかってくると、教授はこの若者と話すことだけは満更でもなくなってゆく。しかし彼はトラブルメーカーで…。
それにしてもヘルムート・バーガーの美しいこと!!なんとも悪魔的な魅力。教授ならずとも心惹かれるのはわかる。教授は過去に結婚生活に失敗した回想がちらりと描かれるだけで別に同性愛者ではないが、おそらくヴィスコンティ監督自身の分身、ともにバイセクシャルでヴィスコンティの恋人だったといわれるヘルムート・バーガーとの関係性が、そのまま投影されているかのようだ。
静かな暮らしを楽しんでいた教授が、騒々しくデリカシーのない一家に振り回されている様子は本当に気の毒。しかし、家族の団欒画を集めるばかりで実際の団欒を持たず生きてきた彼にとっては、こんな人々に対してでもいつしか多少の情は芽生えていく。しかし左翼仲間との確執、夫人との別れ話のこじれなどから、コンラッドは自暴自棄になり…。
世代間の断絶、新しいものに凌駕されていく古き良きものたち、失われた家族を求める孤独な教授が人生の終盤で知った温もりの片鱗など、さまざまな要素がちりばめられているけれど、とりあえずヴィスコンティの映画は、何をおいても目の保養度だけは抜群なのが素晴らしかった。『ヴェニスに死す』のラストシーンとも重なる終わり方だったが、この教授よりはアッシェンバッハのほうが幸福だったかも。-
yamaitsuさん
公開時は「デジタル完全修復版」と謳われていたけど、、、「デジタル・リマスター 無修正完全版」って?yamaitsuさん
公開時は「デジタル完全修復版」と謳われていたけど、、、「デジタル・リマスター 無修正完全版」って?2021/03/04 -
猫丸さん、こんにちは!
そういえば謎ですね、実はアマゾンプライムで観たので、ブクログの登録は適当にジャケットがわかりやすいものを選んでしま...猫丸さん、こんにちは!
そういえば謎ですね、実はアマゾンプライムで観たので、ブクログの登録は適当にジャケットがわかりやすいものを選んでしまいました(^_^;)
若者三人が全裸でたわむれてるシーンがあったので、もしかしたらあの場面にボカシの入っていないバージョンがあるのかもしれませんね(私が見たのはぼかされてました…)2021/03/04 -
yamaitsuさん
有難うございます。。。
あっ!と思ったけど、残念ながら覚えておりません(ダメですね)yamaitsuさん
有難うございます。。。
あっ!と思ったけど、残念ながら覚えておりません(ダメですね)2021/03/04
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若い頃見た時より、ずっとよく味わえた。
当時、なぜそんなに読み取れなかったかというと、まず映像が暗すぎたこと。このデジタルリマスター版で見たら、若い三人の裸のシーン、こんなにはっきり見えてたんだとびっくり。教授の持つ絵も、家具や調度もよく見えた。
それから、セリフをきちんと理解するだけではなく、流れと背景を読み取る力がついたこと。どうもセリフを理解しなければと躍起になりすぎて、翻弄されていたように思う。
コンラッドの苦悩も今ひとつ分かってなかったのだが、今回よく分かった。彼は貧しい家庭の出身であり、学問にも左翼活動にも挫折し、ルックスと性的アピールで右翼の実力者(表向きはビジネスマン)の妻の囲われ者になるしか生きる術がない。今も学問(芸術)と左翼思想に惹かれながら、庶民から搾取して豪奢な生活をしている人物に寄生している自分を正視できない。故に酒や薬物に溺れたり、賭博にハマったりする。時には露悪的に、セックスアピールを見せつける。そして、人間同士の繋がりを捨て、芸術だけを楽しみに生きる教授に憧れを抱く。
教授は妻とはうまく家庭を築くことができず、専門であった科学が現代社会に不本意な形で利用されたため科学者でいることをやめ、中世の家族を描いた絵画とクラシック音楽だけを楽しみに、厭世的に暮らしている。
そこに家族に見えるグループが乱入し、一瞬疑似家族の団欒のようなものができ、教授の心に久しぶりに生き生きとした感情が沸き起こってくる。人と暮らすのはストレスを伴い、面倒も多いが、絵画の家族からは到底得られない、血の通った交流がある。また、野卑なジゴロに見えたコンラッドの教養や誠意、そして若さと美しさに惹かれていく。
『ベニスに死す』と共通する点も多かった。若く美しい者に触れて、初めて自分の老いと過ちに気づく。しかし、気づいた時にはもうどうしようもなくなっている。
もちろん、それだけではない。教授に象徴される、古い価値観の終焉(古いアパルトマンは若者によって完全に別なものに変えられる)。心安らかな世界なんて、芸術作品の中にしかなく、生きている人間は血を流し、老いて、死ぬこと。若さ故の美しさが如何に傲慢で、老人の心を傷つけるか。理想的な家族なんて、本当はないこと。
多面的に読める、まさに純文学的な映画で、イマドキのハリウッド映画に慣れてる人にはやっぱりとっつきにくいかな、という気はするが、名画だった。
娘役のクラウディア・マルサーニが、リマスター版ではっきり見えたら、(やってることは大胆だけど)とても可愛い顔をしていて、誰かに似てるなあと思いながら見た。あとで、沢口靖子だ!と気づいた。 -
ローマを愛するイタリア文学史美術史教授マリオ・プラーツをモデルし、変わりゆくローマ イタリア情勢を描く。
名著『ローマ百景』や『官能の庭』などで、古き良きローマを愛しながらも、変わり果てるローマを戸惑いながら受け入れるプラーツは、ビスコンティ自身でもあるのであろう。 -
教授と呼ばれる老紳士がひとりで住まうローマの豪邸は、調度といい内装といい貴族的な重厚さと豪華さで統一されています。壁一面に飾られた「家族の肖像」の絵画には彼の執着を感じます。ただ、生身の“家族”は思い思いに動き、やっかいも持ち込みます。伯爵夫人や若者たちを招いた正餐がリアルな“家族の肖像”ですね。コンラッドの死とともに天井から聞こえる足音。教授は死に至る静かな眠りにつきます。モチーフは“老いに伴う孤独や死”です。
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家族と孤独、若者と老人、左翼と右翼・・・、40年を経ても、テーマは変わらない。
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家族が描かれた肖像画、心を閉ざした壮年の紳士。
ヴィスコンティらしい耽美で退廃的で、背徳感あふれる雰囲気。
「ベニスに死す」同様、あまり救われた感のない終末だが、
画面に流れる空気感や、映像の美麗さがいい。
バート・ランカスターの枯れた美しさと、ヘルムート・バーガーの妖艶さ。
イヴァ・ザニッキ「心遙かに」と、妖しくもイヤらしさの削がれた
乱交シーンがとても印象的。 -
さすが、ビスコンティ。ヘルムート・バーガーが美しい。回想シーンのドミニク・サンダも。
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じいちゃんが実感した「家族」は満足できたか?