西鶴一代女 [DVD]

監督 : 溝口健二 
出演 : 田中絹代  山根寿子  三船敏郎  宇野重吉  菅井一郎  進藤英太郎  大泉滉 
  • 東宝
4.11
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本棚登録 : 37
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104034946

感想・レビュー・書評

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  • 溝口健二の映画を観るのはこれで4本目だけど、とんでもない映画でした。
    レビューをあまり書いてないため、今まで観たものの内容をほとんど覚えてないし、評価が高いものを観てないからか、溝口作品にはこれまであまりピンと来ていなかった。(『山椒大夫』にはなぜか★5をつけているから、面白かったんだと思う。)

    NHKの8Kの宣伝番組などで、キャメラマン宮川一夫の特集がいくつかやってたので、溝口健二を観たくなってレンタル。

    でも、『西鶴一代女』は宮川一夫ではないんだけど笑。ないんだけど、「長回しでカメラがずーっと動く」という溝口作品の特徴、これがすごい。これだけ長回しにするのはあと相米監督ぐらいしかパッと思いつかない。
    どうしても黒澤作品との比較になってしまいますが……この2年前の『羅生門』に触発されて作られたらしい。(溝口の方が12歳上)
    で、黒澤時代劇はやっぱりダイナミックって感じ。ドラマ性+ジョンフォードのハリウッドアクションって感じで、『七人の侍』より前の『羅生門』にしろ、羅生門ドーン!みたいな美術セットで、それはそれですごいんだけど。
    黒澤はアオリの構図って感じがするのに対して、溝口は俯瞰で奥行きがすごくある気がします。これがすごくリアリティある。映像特典に美術監督の水谷浩さんの解説がついていたんだけど、これだけ奥行きのあるセットを、長回しのカメラの動きに合わせて作るのはものすごいことだと思う。
    (枚方パークになってる菊人形館〜軍事施設の跡地にセット組んだらしい)

    冒頭のシーン、なに言ってるかわかんなかったけど(新東宝のだからか字幕機能がついてない)、途中からセリフがすごく聴き取りやすくなった。黒澤作品よりも聴き取れると思う。
    そしてこの冒頭のシーン以降が回想だと途中で気づいて、なるほどなと思う。

    内容は『ウィンチェスター銃'73』や、スピルバーグの『戦火の馬』とかのパターンで、銃や馬が地獄めぐりするんじゃなくて「女性」なので、大変にひどいお話です。
    スピルバーグだと同じパターンの『カラーパープル』に近い。あと、私は観てないんだけど『嫌われ松子の一生』とか?

    井原西鶴の原作『好色一代女』は知らないんだけど、映画を観ると原作から変えてる部分が「ここじゃないかな?」ってわりとわかる。まず原作は「好色」ですからね笑。そこ取ってるから、その部分と。
    あと、ミフネが普通にイケメン役で出るんだけど、彼の考え方の部分とかは1950年代当時の時代背景がすごく感じられる。

    「自由を求めて…」「女性の尊厳が…」とか、そういうありきたりなヒューマンドラマ的解釈もできるとは思うけど、そうじゃなくて。ただただ女性が残酷な目、不運な目に遭って、踏みにじられていくという作品かなあと。それと人間の汚さを描写してるところがものすごく良い。
    因みに、田中絹代さんはこのとき42歳ぐらい。

    溝口監督は私生活で女性関係が滅茶苦茶、ドロドロしてた方だそうで。なんというか、女性に対するアンビヴァレンツな感情をものすごく感じます。

    私が観たのは137分版だったけど、オリジナルは148分みたいで、こっちは今観ることができるのかな?謎。

    他の溝口作品もこれからもっと観ていきたいなーと思ってます。
    脚本が依田義賢(ヨーダ)
    撮影が宮川一夫
    音楽が早坂文雄
    って4本ぐらいですかね。観てない残り2本は観ないとなー。

  • 本映画祭に先行したFilm Forumでの三船祭。唯一の汚点というべきか悔恨というべきは約一ヶ月に及ぶ開催期間中に上映された33作品のうち1本だけを見逃したという事実。(しかも鑑賞歴のなかった岡本作品「結婚のすべて」(1958) の35mm上映だったという…)その心の痛みが消えぬまま参戦した本映画祭、開催日程に気づいたのが遅かったというのもあり仕事や休暇を調整して臨むことができなかった。つまりは数本の見逃しは仕方ないということで鑑賞済み作品はすっ飛ばさざるを得ないと当初考えていたのであるが、開催二日目にきちんと早起きができたこともありその「すっ飛ばし候補」だった本作を鑑賞することにした。その結果は…

    三船だ!

    忘れていました彼が本作の序盤で登場することを!なのでこれを再鑑賞したおかげで逃したはずの1本を穴埋めできた感が急速に膨らんだのだ。めでたい!!

    前回本作を鑑賞したのはどこだっただろう。Film Forumが主催したFive Japanese Divasと題した映画祭でなかったとすれば、その後MoMIで開催された溝口祭でか…。もしかしたらその両方だったかもしれない。どれが正しい解にせよ、そもそも三船助演を忘れていたぐらいだったから結構な割合で記憶が飛んでいた。

    溝口監督が田中絹代にぞっこんになりすぎてしまったせいか彼が彼女の映画監督への道を閉ざす側に回ったという話は読み知っていた。それゆえに本映画祭中には彼女が撮る「溝口風」の作品には出会えないであろうことを予想していたのだが、まさか彼女が溝口作品である「夜の女たち」(1948) に喧嘩を売るように「女ばかりの夜」(1961) を撮っていたという事実をあとに知ることになると、先に本作を観返しておいてよかったとも後に感じた。

    また本作が女優としての田中絹代の、監督としての溝口健二の、第一線への返り咲き作品だったという時系列の事実も興味深さを増すのに一役買ってくれている。なにはともあれ本作を再鑑賞したことがこのあとの短い開催期間中にもできるだけ再鑑賞に足を運ぶべきという軌道修正に寄与したことは間違いのない事実であったのだ。

  • 田中絹代より誰が見ても人目を惹く美女といえるような外見の演者のほうが良かったのでは。。。地味すぎて違和感。雨月物語のような役柄のほうがあっている(かといって京マチ子では派手で凄みがありすぎて転落の人生は似合わない)。一瞬三十三間堂と見紛う場所で羅漢像を静かに見つめるところから始まる回想の導入がいい。黒澤作品と全く印象が異なる、鬱陶しく迷惑な役柄の三船敏郎は初見では誰かわからなかったほど。松平家の側室探しや鬘と猫などコミカルな場面が楽しい。自分の見込みの甘さで借金を抱えておきながら娘をかんたんに芸妓にさせるのは酷いと思ったけれど昔だとあんな父親ざらにいたのかな、、、扇屋の悲劇は気の毒。尼寺でのヒロインの態度は明らかにハチャメチャで感情移入しがたいがセーフティネットのない社会について考えさせられ、映画としては面白かった。

  • 田中絹代の素晴らしさがこれ一本でわかった。また、溝口健二特有の長回しも最高!

  • かくも悲しき転落の人生、田中絹代の見事な演技を生んだ溝口健二の采配は、映画史に永遠に輝くだろう。

    ファーストシーン(これだけで映画の内容がすべてわかってしまうということ自体が既に神)、五百羅漢にかつての男と不幸を重ねる老醜「お春」の頭にかぶせていた布が、はらりと落ちる。ああ、これを目にできた私は、なんと幸せなことか!

    【ストーリー】
    井原西鶴の『好色一代女』を原作に、封建制度下の女の悲劇的流転の人生を巨匠・溝口健二監督が描いた。溝口監督にとっては宿願の映画化でもあり、その意欲と技術とが見事に結合し、最高傑作の誉れも高い名作中の名作に仕上がっている。長回しを活かしたショットの数々には一切無駄がなく、説明を排した様式美の描写からは、男たちとの出会いと別れを繰り返しては不幸になっていく女の哀しさと強さが際立って映えていく。溝口映画最大のヒロイン田中絹代の名演は、世界映画史上に残る素晴らしさである。ヴェネツィア国際映画祭では国際賞を受賞。後のフランス、ヌーヴェル・ヴァーグにも多大な影響を与えた。

  • 田中絹代の演技がすごくいい。
    それにストーリー構成とかもすごくいい。
    日本が世界に誇れる傑作だと思う。

  • 同じ監督作品の「祇園の姉妹」を見たときはあまりよくわからなかったんだけど、この作品をみたら、この監督が分かってほしかったのってこういうことか…ってひしひしと感じることができました。田中絹代がいたいたしい、悲しい。最後はつらくて涙がでました。

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