高い城の男 (1984年) (ハヤカワ文庫―SF)

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制作 : 浅倉 久志 
  • 早川書房 (1984年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)

高い城の男 (1984年) (ハヤカワ文庫―SF)の感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦でドイツ、日本が戦勝国になった世界でのアメリカ。
    その世界の構成、田上さんの働き、後半に世界がぐらぐらしてくる感じがいい。

  • ディック最高傑作と言われるだけのことはある
    表紙   6点野中 昇
    展開   8点1962年著作
    文章   8点
    内容 760点
    合計 782点

  •  第二次世界大戦で日独が連合国に勝利した世界。
    敗戦国アメリカで「日独が戦争に敗北しアメリカが勝利した世界」を描く本が出回って話題になっていた。
    描いた人間は身の危険を感じて「高い城」と呼ばれる自宅に篭ってしまったと言う。

     ここまで聞けば「ああ、仮想戦記の逆バージョンね」と思うかもしれないが、作中に出てくる本の世界が微妙に我々の世界の歴史と異なっていてなんだかすっきりしない。
    もうちょっと違う結末を予想していたんだけどな。
    (その「別の可能性」にアクセスするとか)

  • 2009/01/31 読了 ★★★
    2014/09/16 読了

  • 第2次世界大戦は枢軸国側の勝利に終わり、アメリカは西側を日本が、東側をドイツが統治している。サンフランシスコでアメリカ大衆文化の骨董品を扱っているチルダンは日本の通商代表団の田上に依頼された品物の入荷を待ちわびていた。
     生前不遇の作家生活を送ったSF作家フィリップ・K・ディックが、「もし戦争の結果が現実とは逆だったら?」というアイデアで1963年度のヒューゴー賞を受賞した出世作。設定上、日本や日本人も重要な役割で登場するので、内容の賛否は別として日本の読者にとっては必読の作品だろう。
     第2次世界大戦を扱った「歴史改変もの」は一時期日本でも流行ったが、果たしてディックはどのように描いたか。
     戦争に勝利しても日本やドイツの国民性はあまり変わらないようで、ドイツが派手に宇宙開発に乗り出す一方、日本は遅々として進まない南米開発に勤しんでいる。日本人はドイツ人よりは紳士的な統治をしているようだが、何を考えているのかよくわからん、と多少気味悪がられているらしい。

    <こともあろうに、おれたちはこの連中をモンキーと呼んでいたんだ。このチビでがにまたの文明人たち、ガス処刑室も作らなければ、自分の妻を融かして封蠟に変えたりすることもない連中を>(p22)

     ディックの日本人観はステレオタイプだし、固有名詞にもおかしな部分が少なからずあったようだ。だがアメリカ人が日本人にへいこらして機嫌を取っている世界はやはり読んでて妙に落ち着かない。ここらへんをどう受け止めればいいのか日本人にとっては悩ましいが、まあ読んでて一番面白い部分でもある。
     ディックが目を向けるのは国家戦略などではなく、あくまで日常を生きる人々の日々の暮らしである。日本やドイツの上層部は直接的には描写されないし(天皇もヒトラーも登場しない)、国の意思に右往左往させられる人々を中心に描いている。主人公格の人物は複数登場するが、みんな運命に振り回されている。

     そう、もしかしたら運命というもの自体がこの物語の主役なのかも知れない。この世界の人々は物事を決める時に中国の「易経」を当てにしている(テレビに良く出てくる道端の占い師が筮竹をジャラジャラして占うアレですね)。最後の方では登場人物が易経で卦を立てるたびにディック自身が本当にやっていたらしい。それで小説の方向性を決めていたというから後年神秘主義に染まるディックらしい。易経が導く人々の運命。この運命のうねりこそがディックの描きたかったものなのだろう。

     さて、ここからがディックらしい所なのだが、やがて作中のアメリカでは『イナゴ身重く横たわる』というタイトルの小説が出回り始める。この小説は(作中の)現実と逆で連合国側が勝利した世界を描いた歴史改変小説である。人々はこの小説を手にとり、回し読みしながら現実とは何なのかに向き合っていく。
     興味深い事に『イナゴ〜』で描かれる世界は我々が知っている現実世界とは微妙に違う歴史を歩んでいる。そしてこの小説の作者が暮らしているのが「高い城」と呼ばれる邸宅なのである。

    <そんなものはどこにもないユートピアだよ。もし連合国側が勝っていたら、やつのいうように、ニュー・ディールで経済が復興し、社会主義的な福祉の改善ができたと思うか?>(p237)

     ちなみに関係ない話だが、ここ数年伊藤計劃や乙一など日本のエンターテイメント小説を精力的に英訳しているアメリカのレーベル「ハイカソル(Haikasoru)」は、「High Castle」を日本語風に発音したネーミングなのだそうだ。

     戦争の勝ち負けというのは本当に大きな事なのだ。改変された歴史にさらに放り込まれた改変。「現実と虚構は何が違うのか?」を一貫して追求してきたディックはどこへ向かうのか。終盤、ドイツの首脳部が権力闘争でゴタゴタしている間に物語が大きく動き、田上は交渉相手との会見を通じて国家の恐るべき企てを知る。

     SF要素は少な目で、ディック作品の中では普通小説に近い味わい。海外SF評論家の渡辺英樹は<本物と偽物に対する洞察の深さ、人物造形の巧みさにより、本書はディックの諸作の中でも特に完成度の高い作品となっている。複雑な構成は上手くコントロールされ、抑制の効いた筆致は迫真的だ>と評している(『フィリップ・K・ディック・リポート』所収/早川書房編集部編/ハヤカワ文庫SF)。

    <なにが起こるにしても、それは比類のない悪に違いない。では、なぜじたばたあがく?なぜ選択する?もし、どの道を選んでも、結果はおなじだとすれば……>(p369)

     現実と虚構の違い。骨董品の真贋など隠喩に込められたディックの意図はどこまでも読者を惑わせる。
     ところでいまだに良くわからないんだけど、作中に時々出てくる「サイキ」って何?何かの日本語?

  •  第二次世界大戦で枢軸国側が勝った仮想世界。アメリカの街を舞台にした群像劇。作中では、連合国側が勝ったと仮定した小説「イナゴ身重く横たわる」と東洋思想(易経)が重要なアイテムとなっている。
     設定だけ見ると政治的な小説なのかと思ったが、読むとそうでもない。むしろ登場人物の心の動きに重きが置かれている。
     ストーリー展開がうまい。登場人物が多くて最初は少し混乱するが、読んでいると全てが絡み合ってきて、面白いサスペンス映画を見ている気分になる。そして高い城の男に辿り着くラストシーン。易経の思想がよく分からず、はっきりとは言いたいことが理解できなかったが、「イナゴ身重く横たわる」という虚構の中の虚構・現実と虚構の多重構造を介した高い城の男の諦観もしくは達観、それがこの小説の結論なのだろう。
     結局、小説の著者というのは登場人物を配置することしかできず、それから先はある種のスピリチュアルな運命(例えば易経のようなもの)に引きずられてボンヤリとした結末に行き着く。その結末を解釈して見届ける人物、それが高い城の男(小説の著者。もっと言えばディック自身?)なのではないだろうか。

  • 大学のときに2度くらい読んだけど、再読。
    白昼夢感を満喫しつつも、ストーリーをちゃんと追っていくと、色々なレベルの立場の人物のエピソードが重なってひとつのストーリーが構成されていて、うまい。

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