狐と踊れ (1981年) (ハヤカワ文庫―JA)

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著者 : 神林長平
  • 早川書房 (1981年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)

狐と踊れ (1981年) (ハヤカワ文庫―JA)の感想・レビュー・書評

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  • 5Uという薬を飲み続けなければ胃が消失してしまう近未来を描いた表題作ほか、著者の初期作品を収めた短編集。

    すごい! 面白かった。
    私はSFを毛嫌いしているわけではないのだが、どうもSFを読んでいると、わざわざ難しいことをしているだけでは?と突っ込みたくなるときがある。
    ミステリでも同じようなことが言えるだろうに、それはあまり気にならないのだから不思議なものだ。ミステリを読む場合は、どこかで割り切って読んでいるのかもしれない。しかし、SFだとそれがときどき上手くいかなくて、背中がむずむずしてしまう。まるで、芯を出しすぎたシャープペンシルで文字を書いているかのような、もどかしさを感じるのである。

    しかしこれはそういうもどかしさを感じることなく、最後まで読み終えることができた。
    奇抜な発想が面白い表題作や、後に人気シリーズとなるらしい「敵は海賊」もよいが、「忙殺」が最もSFらしくて、それでいて「SFらしい」という言葉がきちんと褒め言葉になっている作品だったと思う。
    途中までSF的な要素はなく、むしろカルト宗教か?という雰囲気なのだが、物語後半になってくると一気に世界が反転し、加速し、まさに「忙殺」されて、極彩色の眩暈に巻き込まれたみたいな感覚が味わえた。くらくらした。本を読んでこういう気分は久しぶり。こういうことができるなんて、SFってやっぱりすごいジャンルなんだな、と素直に驚いた作品だった。あっぱれ!

    どれも設定は奇抜なのだが、文章が上手いせいか「芯を出しすぎたシャーペン現象」になることなく、するすると読めた。
    なんというか、きちんとSFの世界で人が生きている感じがしたのである。「生かされている」のではなく。ちょっとしたことだけど、例えば表題作。この作中でずっと出てくる、胃が消失しないために服用しなければならない薬、この名前が「5U」。とてもわかりやすい。漢字で書くと「ナントカ用ナントカ薬」と5字ぐらいになりそうな、とても実用的に口には出さなさそうな名前ではない。ほんとに細かいところだけど、「敵は海賊」でもそういう「実用的」なところがさらっと描かれていて、とても親しみが湧いた。
    SFを読むのは嫌ではないけれど、作者の都合でSFに放り込まれて生きざるを得ない人々を読むのは、まっぴらごめんだと、私は思う。そういう意味で、この作者の書くものはとても神経が行き届いていると思ったのだった。

  • 薬をのまなければ胃袋が去っていってしまうというのが面白かった。
    内臓が転がり出るなんて。
    内臓を追いかけている人を想像すると笑える。

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