ウォークマンの修辞学 (1981年) (エピステーメー叢書)

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  • ウォークマンの意義を、記号論や都市論の立場から分析している本です。

    「ウォーキング・ガジェット」という章では、ウォークマンの広告が取り上げられ、そのイメージやコピーをめぐって記号論的な立場からの考察がおこなわれています。

    つづいて「都市の最中に」と題された章では、ウォークマンを聞きながら都市を闊歩することの快楽についての議論がなされています。著者は、マレー・シェイファーの『世界の調律』におけるサウンド・スケープ論や、アンリ・ルフェーブルの都市論を参照しつつ、それらに対する批判をおこないます。たとえばシェイファーに対しては、「自然(音)の回復」が志向されていることの素朴さが指摘されます。またルフェーブルに対しては、都市的な快楽を言語の体系がそうであるような「不在の現前」とされていることをとりあげて、しかしこのような見方は「都市的なるもの」の形式についての分析にすぎないと著者はいいます。そのうえで、ウォークマンから得られる快楽は、音楽を聴く快楽ではなく、聴きながら歩くことの快楽だとする考えを提出し、単に表象的な「都市的なるもの」をめぐる快楽ではなく、唯物論的な「都市」における快楽に、ウォークマンがもたらした快楽の意義を見いだそうとしています。

    80年代的な都市論の枠組みにもとづいている本で、いま読むとやはり古さを感じてしまいますが、著者の視点そのものはおもしろいと思いました。

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