父が消えた―五つの短篇小説 (1981年)

著者 :
  • 文藝春秋
4.14
  • (2)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 28
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 表題作を含め、独特に浮遊感のあるリアリティに不可思議さを混ぜ込んだような作風は、近年で言えば例えば吉村萬壱などを思い起こす。個人的には好みである。中でも表題作はユーモラスな会話と父や家族の記憶とが絡み合い、余韻が残る。
    この人の場合、描かれる不思議さにわざとらしい無理がないのはやはり人徳なのだろうか。

  • 人によってかなり評価が分かれる作品だと思う。

    独特な文体で擬音が多く、会話のやりとりがぎこちない。そして考えが色々と二転三転して迷走するようにあっちこっちにいったりする。だけど文章としては非常にコミカルで、僕はけっこう好きだった。

    ただもし評価が分かれるとしたら、その文体の独特さよりも主題のわかりにくさだと思う。数々の過去の印象が連鎖的に想起されるけども、それらが主張するものがそれぞれ数珠繋ぎのようでそうでないようでみたいな。でもそれが主観的なリアリティのひとつのような気もするし(『父が消えた』でも人生のアウトラインはわからないと述べてるし)。

    時折はいりこむ論はおもしろい。父親は実物か銅像か、都営と私営の霊園(資本主義の霊園)、フェチの話(ポップなプラスチックと金属)、ラジカルなど……。

    また屋上を貰うだったり、銭湯の出前だったり、でてきてびっくりして思わず当時はそんなことあったのかなんて調べてしまった笑。その家庭と妄想がごっちゃになりそうな感覚も、この作品のいいところなのかもしれない。

  • 第84回 芥川賞 初版

全4件中 1 - 4件を表示

尾辻克彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×