愛書狂 (1980年)

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感想・レビュー・書評

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  • 書物集めに狂った人たちをテーマにしたアンソロジー。
    以下の作品を収める。

    愛書狂 G.フローベール
    稀覯本余話 A.デュマ著
    ビブリオマニア Ch.ノディエ
    愛書家地獄 アスリノー
    愛書家煉獄 A.ラング著
    フランスの愛書家たちーアンドルー・ラング著『書物と書物人』に拠る

    書物集めに関心があるわけではないが、こうした変人たちの話は、なんとなく面白い。

    最初の「愛書狂」は、フローベール14歳のときの作品だという。
    本狂いのマニアックな生態をこの年で描けるというのは、作家のとしての才能の豊かさとともに、そういう資質があったのだろうか。

  • ビブリオマニアを描いた短篇集。挿絵もあって、雰囲気がいい◎

  • 「愛書狂」とはビブリオマニア。蔵書狂や書籍収集癖、書痴などと同義語で、本書はビブリオマニアとして名高いフローベール、デュマ(ペール)、ノディエ、アスリノー、アンドルー・ラングの5人の愛書小説を編訳している。

    シテ島をはさんだセーヌ両河畔には、パリ名物の古本市が今でも並ぶ。
    パリの古本市の歴史は16世紀にはじまるらしいが、古本道楽の黄金時代、19世紀のビブリオマニアの遺した名篇を生田さんが一冊にまとめてくれている。

    『ベリー公のいとも美しき時祷書』に端を発して、中世ヨーロッパの写本に興味を持って調べたが、写本に限らずビブリオマニアまでいくつくには情熱が必要だ。

    本書に収められた唯一の英国人のアンドルー・ラングが書いた「フランスの愛書家たち」の冒頭部分を少し引用してみる。

    ---文学への関心とは別個に、書物をそれ自体独立したものとして観賞する、すなわちその外的形態、用紙、印刷、装幀などを愛で、もっぱらその造形的美しさ、稀少性、保存状態などに書物の価値基準を置く伝統は、他のいかなるヨーロッパ諸国よりもフランスにおいて特に顕著であり、根強くいきわたっている。英国では出版人は実業家だが、フランスでは芸術家たらんとの抱負を抱いている。イギリス人は読みたい本を図書館から借り出す、そしてどのようにけばけばしい装幀本をあてがわれても平気なものだ。フランスでは然にあらず、自分で本を買い、お気に入りの製本師にモロッコ革の表紙で装わせた、雅趣豊かな図案を施し心ゆくまで造本の贅を尽くすのである。仏国では書物は終生の友。英国では一、二週間の客人に過ぎない。---

    私も思いっきり英国主義というか図書館派で、殆どの本は図書館から借りて読んでいる。アンドルー・ラングが書くとおり、書物は一時的な客人であり、知識や歓びをもたらしてくれても本そのものに強い執着を抱くことはない。

    しかし、パリの古本市は風物詩になっているし、セーヌ河岸以外のマルシェでも古本は多く売られていてお客さんで賑わっている。
    昔からのフランス人のビブリオマニアの血はまだ現在も脈々と引き継がれている気がする。

    一作目はフローベールの『Bibliomanie』
    スペインの僧侶ドン・ヴィンセンテの引き起こした愛書をめぐる放火殺人を下敷きに15歳にも満たないフローベールが書いたものだという。
    フローベールは少年時代からフローベール然とした文体で、リアリスムにとんでいる。

    二作目はアレクサンドル・デュマの『Le Pastissier françois』は、とても興味深い一篇だった。
    田舎からパリに出てきたデュマが芝居を見に行った時に、偶然に隣り合わせたのがノディエであった。
    ノディエの指導の元、見事なビブリオマニアになったデュマは、ノディエとセーヌ河岸に通ったり、人気作家として得た収入が蔵書コレクションに化したのも必然である。
    たくさん稼いでたくさん使う。非嫡出子を多く作り、御殿や劇場を建て、金勘定は全くできず、作品を書きまくったデュマはさぞかし、ご満悦で古書を買い漁ったのだろう。

    三作目はデュマをブリビオマニアにしてしまったシャルル・ノディエ。彼はアルスナル図書館館長をつとめ、浪漫主義運動の中心人物になった。
    『Le Bibliomanie』の主人公のモデルは実在するらしく稀代の愛書狂だったらしい。
    パリ最大の個人蔵書を有していたという彼の古本は凄まじいものだったという。
    主人公の本の収集への情熱が熱く強く伝わってくる短篇である。

    他、シャルル・アスリノーとアンドルー・ラングの篇もあわせ、生田さんの訳注も充実しており、この書物自体愛書にふさわしい装いだ。

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